この先は現実世界で

『──これは今までの常識を覆す、最先端のバーチャル科学技術の粋なのです』

俺はとある娯楽施設で、リクライニング式のソファーに座っている。娯楽施設と言や聞こえはいいかもしれねぇが、
『当店ではVR技術を利用し、お客さま好みの相手とバーチャル空間で愛の営みを行うことが可能です。バーチャルと言ってもその感覚は本物と同然。最先端技術で開発された装置により、脳に直接働きかけます。つまり、貴方がこれから目にするであろう体験は、貴方の体験そのものなのです……』
愛の営み。イコールセックス。つまりここは娯楽施設というか、ぶっちゃけ風俗店だ。天人の技術で江戸は飛躍的に文明の発達を遂げた。テレビやパソコン、携帯電話なんてカラクリが現れた時にもびっくりしたが、今じゃこんな施設まで誕生するくらいになった。俺はおよそ風俗店とは思えない近代的な建物の中で、音声ガイドの説明に耳を傾けていた。

きっかけは毎度とんでもない物を持ち込んで来る黒いモジャモジャだった。声がバカでかくてうるせぇ上に嵐みてェなソイツが来るといつもロクでもねェ目に遭わされる。だからさっさと追い出そうとしたのに、デカい声で笑うばっかりで人の話なんか聞いちゃくれない。毎回毎回、疲れるったらねェ……って、

「バーチャル空間でセックスゥゥゥ!?」
「そうじゃ。脳内に直接働きかけて疑似セックスしようってもんじゃき」
「お、おいおい……そんなもん、大丈夫なのかよ」
「安全面は保証済みじゃ! ただ日本での導入は初めてじゃき、きんときにモニターを頼めんかと思うてのぉ」
「はァァ?!そんな危ねぇモン誰が試すかよ!自分でやれ! つーか何度も言ってるけど俺の名前はぎんt」
「そォか、そォか!やってくれるがか!いや~持つべき物は友達じゃのぉ!」
「人の話聞けや!」

……そうして俺は、半ば押し付けられるみたいにしてその『VRセックス』とやらを体験することになってしまった。まァこうなることは何となく想像ついてたけどよ。
それに、興味が全くないかと聞かれるとそうじゃない。うん。そりゃ銀さんだって男だからね? 下の事情に関して敏感になのは仕方ないことだろう。安全面が保証されてるって言うんなら試してみたいと思うのは自然の摂理だ。しかも今回はモニターってことで無料なわけだし。無料でスッキリできるなら試してやらなくもねェよ。
戦争が終わってから江戸に出てきて、縁あってババァの用心棒をしながら万事屋なんて商売をやっちゃいるが、依頼なんて滅多に来ない。いつも開店休業状態で金なんてあるわけもなく、ひもじいひもじいと涙を飲む子供二人と飼い犬の手前、下の処理に行く金なんてあるわけもなかった。
周りに女はいるっちゃいるが、全くそういう対象としては見てない。独り身の俺には決まった相手もいねェし随分とご無沙汰だ。それでも金玉は重くなる。男なんだから仕方ねェよな、うん。
何やかんや言いながらも、俺は棚ボタ的な幸運に胸を高鳴らせながら、いそいそと店へ足を運んだのだった。
 
 
▷▶▷▶▷▶

 
「それでは、装置の方を取り付けさせていただきますねー」

俺の頭に何やらコードがたくさんついた装置が嵌められる。いかにもな見た目のヘルメットだ。係のお姉さんはテキパキと準備を進めて行く。清潔感をイメージしているのか病院のナース服みてぇなコスプレをしていた。

(やっぱナースは良いよなァ。どうせならこのお姉さんが相手してくれりゃいいのによォ……)

くりっとした丸い目に愛想のいい笑顔、腕にすっぽりと収まりそうな身体。そして何よりも胸がデカい。巨乳は高得点だ。エアーでするセックスより生の感覚を想像してムラムラしてるんだけど、こんな調子でホントに気持ちよくなれるのか、正直信じ難い。

「それでは、今からスイッチの方を入れさせていただきますね。何もない真っ白な空間に入ると思いますが、シチュエーションやプレイなど自由自在ですので、場所や衣装、道具などは好みのものを思い浮かべてください。理想の相手は貴方の潜在意識に呼びかけますので、最高のセックスをお楽しみいただけますよ」

ブウンと起動の音がして椅子がゆっくりと倒される。そして、そのまま落ちるように意識が遠のいた。

「……!」

はっと気付くと俺がいたのは、真っ白な何もない空間だった。上も下も右も左もわからない。ふわふわと宙に浮いているような感覚だった。

「シチュエーションもプレイも自由自在、ねェ……」

ということは、場所も想像通りなんだろうか。ひとまず俺は目を閉じて、馴染みある万事屋の応接室を思い浮かべてみた。目を開けるとそこはまさしく万事屋で、傷がついた机も、ところどころ布の剥げたソファもそっくりそのままそこにあった。触ってみると、感覚もまるで本物の椅子と同じだ。
俺はもう一度目を閉じる。旧型のブラウン管テレビを最新型の大型液晶テレビに変えて想像してから目を開くと、そこには部屋に不似合いな新しいテレビが置かれていた。

「すげェ! 何でもありかよ!」

嬉々としてソファに寝転がり、リモコンでテレビの電源を入れる。自分よりも大分大きく人の顔が映し出されてテンションが上がった。そうだ、どうせなら結野アナの天気予報にしよう。甘味も欲しいところだな。目を閉じて開くと、テーブルの上にはチョコパフェといちご牛乳が現れる。大型テレビ画面で結野アナを堪能しながら甘味に舌鼓を打ち、くつろいでいたところで──ハッと我に返った。

「ってオイ、そうじゃねェだろ……」

夢の空間すぎて目的を忘れるところだった。一度目を閉じてまた開くと、そこは元の万事屋に戻った。
ここは好き勝手に生活を送るところじゃなくて、セックスする部屋だった。よりどりみどりの甘味も悪くねェけど、今の目的はセックスすること。
今度は好みの相手を作りだそうと、俺はもう一度しっかり目を閉じた。考えろ。イメージするんだ。
まず、身近にいる女(女といっていいのか疑問に思う時すらあるけど)を相手にするのは色々と気まずい。AV女優のお姉さんみたいに、素性とか詳しく知らないくらいが丁度良いと思う。どうせならそこに俺の好みを加えたいとこだよな。
──少し気が強いくらいの相手がいい。一筋縄にいかない相手を素直にさせるのは何とも言えねぇ興奮がある。可愛いというよりは美人タイプ。胸は……どっちでもいいや。見るぶんには巨乳が良いけどセックスするとなりゃあんまりデカすぎてもアレだし、それよりも感度重視で。髪型はショートの気分だ。尻とか腰がきゅっと締まってるのが燃える。
あれこれと妄想を巡らせる。シチュエーションは、万事屋に依頼しに来た相手を無理やり引きずりこんであれこれ仕込んで、最後は気持ちよくなって俺に服従するっていう強姦モノ。いや違うよ?銀さんがいつでもそんなこと考えてる訳じゃないからね?今日はアレがアレでたまたまだから。
すっと目を開く。……これで、もう少しすれば万事屋の戸を叩いて誰かが訪ねてくるだろう。俺は逸る気持ちを抑えながら、その瞬間を今か今かと待ち構えた。
とんとん。引き戸の扉が控えめに叩かれる。

──来た!マジで来た!ホントに来た!!
そわそわと落ち着きなくソファに座っていた俺は、一目散に玄関へと走った。そして、その扉を一気に開ける。

「チェンジィィィィ!!!!」

扉を開けた途端、俺は叫んでいた。バーチャル空間だったが腹の底から声を出した。つーか何これ!どうしてこうなんの!!機械の故障か!?

「……万事屋?」

そこにいたのはどこをどうして間違えたのか、瞳孔が開いたいけ好かねェ男だった。
男。まず性別がおかしい。これが一番の問題だよね。なんで男?
俺、そういう趣味ねェけど。しかも素性とかとっくに分かってるんだよ。友達と言えるほど仲良くはないが、腐れ縁のような関係で関わりのある、チンピラ警察の鬼の副長さんだ。
そして自分が思い浮かべた理想の相手の条件を思い出す。
少し気が強い。確かにそうかもしれねーよ? でもコイツは少しどころじゃなく気が強すぎるだろ。なんてったって出会い頭に真剣で斬りつけてくるような奴だ。
可愛いというよりは美人タイプ。確かに、不本意ながら顔が整っているのは認めざるを得ない。ムカつくけど。可愛いとは言えないから、美人タイプなんだろう。
髪型はショート。間違ってはいない。間違ってはいない、けども。
……尻とか腰とか、考えたことなかったけど、言われてみりゃそんな気もするよね。違うからね。あくまで事実ってだけで、俺がコイツを変な目で見てるわけじゃないからね。

「なんでお前なんだよ。これバグってない? スレンダー美女か何かと間違えてんじゃねーの?」
「あァ? ……さっきから何わけわかんねェこと言ってんだ。依頼があって来た。邪魔するぞ」

勝手に入ってくる土方を見て、俺は一度目を閉じる。そして、再度強く『チェンジで!』と念じてから目を開けた。すると目の前で美女……じゃなくて土方が怪訝な顔をして俺を見ていた。

「なんで変わんねェんだよ!」
「……どうしたんだお前?」

そこで俺は係のお姉さんの言葉を思い出した。
──理想の相手は俺の潜在意識に呼びかける。
ってことは、無意識の潜在意識でコイツとセックスしたいとか思っちゃってんの、俺ェ!?
あり得ない。俺はコイツと腐れ縁になって、色んなことに巻き込まれたり巻き込んだりしてきた。会ったばかりの頃よりは悪く思っちゃいねェ。それは認める。
だけど恋愛感情っていうの?土方をそういう意味で好きだなんて、一度たりとも思ったことがない。それ以前に俺は女が好きだ。胸があって柔らかい女が好きだ。間違いない。野郎のちんこが好きだとかあり得ない。
俺が葛藤しているうちに、土方は勝手知ったる足取りで居間兼応接室へと消えていく。俺は慌てて後を付いて行った。

「なんだ、ガキ共はいねェのか?」

持ってきた手荷物をテーブルの上にどさっと乗せる土方。それは馴染みの団子屋の名前が入った袋で、大きさから察するにかなり多くの量が入っているようだ。我が家の家族構成とかエンゲル係数を考えてくれたらしい。そう、コイツのことをよく知らねェやつは鬼だなんて呼ばれてる喧嘩っ早いチンピラみてェに思うかもしれねェけど、土方くんっていうのは不器用だけど優しくて、フォロー上手で気の回るやつだ。ちょっと頑張りすぎだろって思うくらいに。

「あ、ああ……なんか、遊びに行ってくるって出て行ったみてェだな」

ここは現実じゃないんだから取り繕う必要なんかないのに、俺はそんな出任せを言った。土方は一応、勝手に座っていいものかと迷う様子を見せて、伺うようにちらりと俺に目線を向けた。
僅かに振り返り、若干上目遣いで俺を見る視線はどこか頼りない。
隊服ではなく私服の着流しを羽織った土方は、薄着のせいで、身体のラインが如実に現れている。はだけた胸元。締まった腰と、意外に小さい尻。ムラっとした。

(ムラっとした。ってなんだ俺ェェェ!ここはムラっとしちゃ駄目だろ。絶対に駄目なところだろ!)

ダメだ、急に自分自身が信じられなくなってきた。頭を抱えて悶絶する俺に、土方が驚いた後なんだか可哀想なモノを見る目で見てきた。可哀想でもなんでもいい。俺は今、猛烈にこの状況を何とかしたい。ムクムク元気になりそうな俺の息子は、土方が来るまでそのつもりでいたから勝手に期待してるだけだと信じたい。

「ま、まァ座れよ」
「あぁ……」

ぎこちない態度を取りながらも土方がソファに収まったのを見て、俺も腰かける。

(って、何で隣に座っちゃってんの俺ェェェェ?!)

でかくはない万事屋のソファは、男二人が座るとかなり近くに相手を感じる。それでも隙間を開けて座っているので触れ合うようなことはないが、俺はどうにもそわそわと落ち着かない気持ちになった。VR空間だからデカくすることもできるけど、むしろこの方が得じゃね?狭いソファ万歳。……え、万歳ってなに?なんかおかしくね?
ちらりと様子を伺うと土方は余裕の顔して座ってる。懐から煙草を取り出して、灰皿がないことに気付いて舌打ちするとまた懐へと仕舞い込んだ。
いつもと同じ感じなのに、どこか違う。何が違うのかと考えて、俺は気づいた。

──いつもだったら。
いつもなら顔を見た途端に喧嘩が始まるというのに、今日はそれがない。そもそも、依頼があるからと言って土方がそう易々と万事屋に訪ねてくるはずがない。今だって、隣に座ってこんなに距離が近いのに、文句の一つも言って来ない。いつも通りに腰には刀が収まっているのに、それを抜こうとする気配は微塵もなかった。

『理想の相手は潜在意識に呼びかけて……』

──もしかして、俺は土方とこんな風にいがみ合いせず過ごしたいと思っているのか。
たとえばこうして気兼ねなくお互いの家を訪ねて、仲良くしたいとでも思っちゃってるんだろうか。まさか、やっぱり俺は土方のことが、好き、なんて……

(ないないないない!それはねェだろ。土方くんだよ?ないない。ないって!…ない、よな?)

改めて隣の土方を観察する。少し伏せられた睫毛は案外長い。唇は閉じられていて、ぽってりとした厚みがあった。柔らかそうだ。触ったら、どんな感触がするんだろう。
どこからどう見ても同じ男でしかないというのに、欲情するぐらい色気を感じた。
もしも土方を屈服させたらどうなるだろう。きっと最後まで眼光の鋭さは衰えないだろう。色事なんて興味ありませんて澄ましてる顔からカッチリ着てる隊服引っぺがして裸にして、羞恥に染めさせたら。快楽に溺れさせたら。
想像すると何とも言えないぞくぞくっとしたものが俺の背中を駆けあがった。
そういや、この空間から出る方法は聞いてない。もしセックスするまで出られねェんだったら、もうやっちまうしかないんじゃね?
どうせ相手も変えられない。しかもここはバーチャル空間なわけだし、やっちゃったところで俺の生活に何か支障が出るわけでもない。萎えて駄目だったら駄目だったでそれでいいし、気持ちよくなれたなら儲けもんだ。
俺は元々あれこれと悩むタイプではない。出たとこ勝負でここまで生きてきた。今回だって何とかなるに違いない。
そんな軽い気持ちで、俺は目の前の土方とセックスすることに決めた。

「……それで? 副長さんは何の依頼でいらしたんですかァ?」

じり、と距離を詰めて、わざと顔を近づける。いきなりの接近に驚いた土方が僅かに体を後へ引いた。

「あ、いや…最近この辺りで潜伏している攘夷派の噂を……近くねェか?」
「近くない、近くない。……それで?その攘夷派がなんだって?」

引いた分だけ距離を詰めて構わずに話を続ける。体が前のめりになった拍子に土方の膝に右手を乗せると、びくりと体が強張った。
ウブな反応してくれるじゃねーの。
俺は隠しもせずに下唇をぺろりと舐めると、にこにこした顔を張り付けて膝に置いた手にぐっと力を込める。

「む、無駄に顔が広いテメェのことだから何か知らねェかと思って……それで」

土方がさり気なく俺の手を払い退けようとする。しかし、軽く押された程度で俺の手が払えるはずもなく、調子に乗って手をすすーっと上に滑らせた。

「ッ、……やめ」

後ずさった体はもうソファの端まで来ており、それ以上は後ろに下がることはできなかった。

「攘夷派の動き、ね……もし知ってたとして、それをお前に教えたら報酬もらえんの?」
「あ、ああ。有益な情報だったらそれ相応の……うおッ!?」

聞くが早いか土方の腰に左手を回して強く手前に引く。予期せぬ動きに簡単にバランスを崩した土方の体は、ソファの上に押し倒された。顔の横に手を突いて見下ろすと、目を丸くした土方がぽかんとした顔で見上げている。

「ウチは報酬前払いなんだよ」

ニヤニヤとした笑いを浮かべて、どれだけ意地の悪い顔をしているか鏡を見なくたって分かる。丸く見開かれてた土方の目が徐々に吊りあがり、剣呑な表情へと変わった。

「……テメェ、何考えてやがる」
「何って、そりゃナニだけど。……お前も男なら分かんだろ? なあ、ほら」

股を割ってぐっと膝を押しこむと、股間をぐりぐり刺激する。はっと息を飲み込んだ土方が俺の下半身の状態を確認し、また俺へと視線を戻してぱくぱくと魚みたいに口を開閉させた。頭がついていかなくて言葉も出ないんだろう。何か抵抗を始める前にその身体を押さえこむ。

「おい万事屋! 離せっ!」
「そう言われて離すわけねェだろうが」
「こんのっ、クソ、馬鹿力……ッ!」

膝を割り入れたまま左手で肩を抑え込み、右手で腿を撫であげる。同じくらいの体格だが、要領さえ掴めば押さえこむことなんて簡単だ。俺を相手にロクな抵抗もできず、土方の顔が悔しさに歪む。

(……想像以上じゃねェの?)

土方が俺に組み敷かれて為す術もなくただ悔しい顔をしている。その状況が俺の欲望に一気に火をつけた。
着流しの裾を強引に割り開いて、太ももを露わにする。男のくせにスベスベの肌を撫であげてやれば、ふつふつと鳥肌が立っていくのがわかった。
どこからどう見ても男で、魅惑の肉感っていうよりは無駄のない筋肉質って感じだ。それなのに土方を見てると堪らなくなる。漏れてくる吐息にすら夢中になる。
膝から太ももにかけて、脚の側面を何度か撫でたあとはすすっと手を内側に滑らせる。下着との境目を指先でゆっくりなぞると、そのたびに筋肉がヒクン、ヒクンと引きつるように震えた。

「んあっ……て、テメェ、なんで……ッそういう趣味だったのかよっ、男の……ぅう、やめ」
「そういう趣味……じゃなかったはずなんだけどよォ。びっくりだわ、これ。全然いけそう」

俺がわざと軽い調子で笑えば、強気に睨みつけてくる瞳孔開いた目が堪らない。不利な状況に追い込まれているというのに、負けて屈服させられて、女の子みてぇに犯されまくるなんて考えてないんだろうな。
それを一つ一つぶち壊していくのを想像すると楽しくてたまらない。
下着の上からそっと股間の膨らみを撫でる。つーっと指を滑らせると、そこはまだ柔らかかった。土方の柔っこい形を確かめるように何度もそこを撫でていくと、徐々に堅くなり始める。

「!? や、ッ、くそ天パ! 離せ…! 触んな! やめろ!!」

ちんこを刺激されたことで危機感を強く感じたんだろう。ただもがいてくるだけの抵抗ではなく、俺から本気で逃げようとしてくる。
圧し掛かられている上半身ではどうにもならないと判断して、俺の急所を狙って脚が降り上げられた。
その脚が振り下ろされるより一瞬早く、加減して優しく触ってやってた股間の手にぎゅっと力を込める。

「ヒィッ!? ぁあ゛っ、~~ッ」

愛撫とは言えないくらい強い力でそこを握られて痛さに顔を歪めた土方は、へなへなと脚を下におろした。目がウルウルして、もしかして涙目になってる?

「……ろずや、はなして……」
「あのなァ、自分の立場わかってる? 土方くんがこれからもオトコノコでいれるかどうかは、今、銀さんの右手にかかってんのよ?ここ、ぎゅうぎゅう握って痛くされてェか?」
「やっ……ぅ、く……やめ……」
「そうだろ? 俺だって土方くんみてェな色男のチンチン潰したくなんかねェからさ……無駄な抵抗はしねェ方が良いぜ。な?」

右手の力を抜いて、痛みですっかり委縮しちまったそこを優しく撫でてやると、またすぐに堅さを取り戻し始めた。

「ふ、あ、……ひっ、ぅ、んん…!」
「かわいいよ。そうやって素直に声出して感じてれば、気持ちよくしてやっからよ。……あれ? 土方くん、乳首勃ってるの?」

着流しの合わせから覗いてる乳首。濃いめのピンク色した乳首が勃ってる。まるで誘ってるみたいに。

「や、……んなとこ見るなっ」
「隠すんじゃねェよ」

土方の抵抗を無視して中に手を入れる。なんだこれ、すべすべしてるよ。土方くん可愛い。指に当たる乳首はまだ柔らかいけど、ぷくんと勃ってる。鬼の副長を俺の好きにしてるんだと思えば堪らなく興奮した。

「だめ……っ、万事屋だめだ、そんなとこ」
「嘘ついたらダメだろ? 感じてるくせに……土方くんの乳首」
「ぁあっ、ッ、は……んっ」

指の腹で何往復もさせるように乳首を撫でると、びく、びく、と身体を震わせて敏感に感じている。身を捩っても逃がしてなんかやらない。着物は肩までずり落ちて、なんともエロい眺めだ。しこってきた乳首をクリクリ捏ね回して指で挟む。きゅっと摘まんで引っ張れば、悲鳴にも似た声が上がった。乳首が茱萸みたいに熟れて美味そうに見えたから、ほとんど考えもせずに吸いついていた。片方の乳首は指先で転がして可愛がる。

「ああぁ……っ、」
「力抜けちゃうんだ? ……乳首コリコリになってんぞ」
「ゃ、……吸わな、で…、だめ……! ヒッ、ぁあ」

芯を持ってぷっくり尖ってきた土方の乳首を吸い上げる。舌先でチロチロ舐め回すと甘い声が上がった。俺はあることに気づき、思わず笑みを漏らした。

「……シミつきパンツ。ここ湿ってるぜ」
「ひぅ……ンッ、やぁ……ふ、ぅぅ…!」
「ほらどうしたよ……どんどん濡れちまうな?」

下着の上からチンコの先っぽを指でくすぐるように辿れば、みるみるうちに熱く湿っていくのが分かる。土方の顔は屈辱に歪んでいて、俺はその悔しそうな顔をじっと見ながら、窮屈そうに下着を押し上げるそこを夢中になって擦りまくった。先っぽだけじゃなくて、勃起してきたチンコの形に沿うように、何度も手を往復させる。

「!? はぁッ、ぁっ、ああ…も、もう……やめ、ろ!」

急所を握られていることが怖いのか。しばらく大人しくしていた土方だが、突然やんわりと肩を押してきた。その手にはまだ痛くされる恐怖があるのか大した力は入っていない。はっはっと短く息を吐きながら腰を震わせている。

「……土方くんイきそうなの? 教えてくれねーと」
「~~~ッ」

意地悪く尋ねるとカッと顔を赤くした。屈辱と羞恥が折り重なっていて、こんなにされてもまだ衰えない眼光にぞくぞくした。

「イっちまえよ。かわいいチンコが泣いてるぜ」
「っざけんな、」

俺の肩を押し返す力が今までより強くなる。きっと限界が近いんだ。容赦なくチンコを扱いてやると、低い声で悪態吐くどころか、随分上擦ったカワイイ声が上がる。クビレのところをから亀頭までぐちゅぐちゅ音を立てて責めたててやる。アアアッ……!と抑えようとしても堪えきれない土方の喘ぎ声が俺のすぐ近くで。壮絶にエロい。「よろずや、よろずや」「だめ」って舌足らずな声で何度も必死に訴えてから、土方の内腿にぐっと力が入った。
二、三度ぶるぶるっと腰を震わせた後、ぐったりと力が抜ける。手の中にある下着は熱くじんわり湿って、濡れていた。

「は……おいおい何これ。パンツの中に漏らしちゃったの?」

濡れて色の変わった下着ごと股間を揉む。柔らかくなったそこはぐちゃぐちゃ粘りけのある水音を立てた。湿った気持ち悪さと卑猥な音で土方がカッと頬を赤くする。悔しさと恥ずかしさで染まった表情は今にも泣きだしそうだった。

「ッ、……ひぐ、ぅ…もうやだ……っ!」
「……大丈夫だよ。泣くなって、土方」

堪えられずに涙が零れた目の端へ、ちゅっと音を立てて口づける。なんだかそうしたい気分だった。ちゅっちゅと音を立てて何度も優しくキスするなんて、まるで可愛い恋人を宥めているみたいで、俺が俺じゃないみたいだ。
土方もそんな俺の行動に驚いたのか、泣いたのを忘れて目を丸くしている。その顔はいつものいけ好かない偉そうな表情と違っていてなんだか幼く見えた。うん、やっぱり可愛いなコノヤロー。もっとキスしたい。……アレ? 可愛いって、なんだ。
俺と同じような体格の男だろ。口も目つきも態度も悪いチンピラ警官だろ。好みのわけがないのに。チェンジしたかったはずなのに。何考えてんの、俺。
……そうだ、こんなのはおかしい。俺は甘党だけど、こんな風に甘ったるいことをしたかったんじゃないはずだ。マシンの不具合だろう、きっと。VR空間で不具合とか勘弁してくれよ。こうなったら土方の屈辱に歪む顔をもっと見てやんないと。甘やかして可愛いがるなんて、俺と土方はそんな関係じゃない筈だ。

「うう……も、やだ、さわんな…!」
「……なあ、お漏らししてパンツ汚しました、って言えよ。言わねェと乳首いじめるよ。つねって引っ張ったらさ、女の子みてぇに大きくなっちゃうかもしれねェな」
「ひぅう……!」

そうとなれば話は早い。優しくなんかする方が間違ってるんだから、虐めてやるしかねぇよな。親指で上下に擦ってやるとすっかり敏感乳首になったのかトプトプ蜜が溢れて、土方の下着のシミが濃くなった。

「乳首擦られてカウパーぬるぬる溢しまくってよォ。鬼の副長なのに、女みてぇなぷっくり乳首になっちゃうよ?いいの?」
「うぅ……あ、ぁぁ。やだ、ちくび、だめ」
「土方くんがお漏らししたの認めたら許してやるよ」
「ッ、ぱんつ……! ……俺のぱんつ、精液お漏らしして、汚れたから……ッ」
「そうだなァ、お漏らしでぐっちょぐちょ。濡れて気持ち悪いだろ? 親切な銀さんが脱がしてやるよ」
「!? や、いらねェ……っ! やだ! やめろ!」

バタつく足を持ち上げて下着を足から抜いていく。じっとり湿ったボクサーパンツは肌に纏わりついて脱がしづらい。

「はっ、エロ汁が糸引いてら。やらしいの」

脱がした下着をテキトーに床に捨てると、両手で土方の足首を掴んでぐいっと大きく開かせる。体重を乗せたもんだからどんなに暴れたところで股間のチンコがプルプル揺れるだけ。そのうち無駄だと判断したのか土方が大人しくなった。諦めてくれたのはいいけど、両手で顔を覆い隠してしまって顔が見えないのが残念だ。
仕方ないから、開かせた股の間にぶら下がってる土方の大事なところをまじまじと観察する。うーん、俺のよりは小せェかな。これが理想のVR世界だからなのか、下生えの黒い毛も薄いしチンコも黒ずんだりしてない。むしろ先っぽなんか、剥けてるけど丸くてツルッとしててピンク色で、経験少なそう。可愛いくすら思う。俺は今まで、男のモノなんか見ても全然楽しくないと思ってた。いや、アレだよ。今だって別に楽しいわけじゃない……楽しくなんてない、と思いたい。
でも、イかせたばかりのここを弄って土方が見せる反応を思うと背筋がぞくぞくするくらい興奮してきた。今はフニャンとしてるけど、さっきよりもっと強い快感を与えてやったらどうなるのか、好奇心が湧いて仕方なかった。

「ばか! テメ、何してっ!?」

土方が慌てた声を出したのは、俺が股間に顔を埋めたからだ。匂いをクンクン嗅いでみて、先をぺろっと舐めてみる。……なんだこれ。甘い。流石は理想の世界だな。元から大してなかった抵抗感がゼロに近くなる。今度は根元からしっかり舐め上げると、土方が両手で頭を押して引きはがそうとしてきた。意地になってそこを咥えこむ。

「う、ぁ、んん……ふ」

上半身を起こして抵抗していた土方が、またぱたりとソファに倒れこんだ。そのまま唾液を絡めて飴でも舐めるみたいに口の中で遊んでやると、土方の腿の筋肉がぴくぴくと痙攣した。

「きもひいい?」
「しゃべんな、ぁ!」

押し返そうとしていた手は、俺の髪を柔らかく掴むだけ。縋られてるようで興奮する。じゅるじゅる音を立てて吸ってやると、啜り泣くようなエロっちい声が上がった。相変わらず土方くんの先走り汁は蜜みたいに甘くて、こればっかりは泣かれてもやめてやれそうにない。
女に舐めてもらったことはあるけど、もちろん俺は男のチンコを舐めたことなんかない。でも土方の反応を見ながら気持ちいい場所を刺激してやると、敏感な土方くんのチンコは再び勃ちあがった。
はぁはぁ短く息を吐く音が聞こえる。男ってのはなんて快感に弱い生き物なんだ。これは俺の脳内が作り出した土方だから実際はどうだか知らないが、この世界の土方はかなり刺激に弱いようだった。右手だけを足首から外してすりすりと腿をさする。男なのに滑らかな肌が手のひらによく馴染んだ。
そのまま手を付け根まで持っていく。探り当てた窄まりを親指で軽く押してみると、

「ひっ」

突然の刺激に驚いた土方が、喉の奥から潰れたような声をあげた。更に押す。土方の足の指がぎゅうっと丸まった。

「何、してやがっ」
「ここ。ほら、緩めろって。土方くんの穴に突っ込んでセックスすんだろうが」
「〜〜〜〜っ、ぅ! 痛てぇ……やめ…」

硬く閉ざされたそこを割るように爪先でほじる。慣らされても濡らされてもいない穴は簡単には侵入を許してくれなかった。

「チッ……何か濡らすもん…」

土方のモノから口を離して体を起こす。部屋の中を見回して、ここは俺の理想の中だったと思い出した。一度目を閉じて想像してから目を開けると、俺の手の中にローションのボトルがあった。土方がまるで怯えるような、「もうやめて」って顔するのが余計に煽られる。

「何これすっげェ便利」

股の間に体を入れ込んだまま、左手も足から離してボトルの封を切る。土方はくったりと手足を投げ出したままだ。ここで逃げ出さないのも俺に都合よくできてるらしい。
手の中に落としたローションを軽く揉んで温める。粘度を確かめて指に纏わりつかせてから、人差し指を土方の尻穴に押しつけた。

「はーい、力抜こうね~土方くぅん」

こじ開けるように少し強めに指をねじ込む。抵抗を受けながらも、ぬめりを帯びた指はなんとか先端を潜り込ませた。

「ひ! や、やめ、抜け!」

驚いた土方が下っ腹に力を込める。きゅっと指が締め付けられて、それ以上後にも先にも進めなくなった。

「そんなに力入れたら抜けないって。ほら、深呼吸して。ひ、ひ、ふー」
「それはラマーズほ、ぅ、あ!」

しゃべったことで力が抜けた隙に、一気に根元まで捻じ込む。抜いてやるなんて一言も言ってない。土方のナカは熱く湿っていた。指を包み込むような肉壁だ。チンコ嵌める感触はどんなだろう。想像してごくりと喉が鳴る。
まず、尺を取るようにうにうにと指を動かした。壁を押して刺激して、少し解れたところで抜き差しに動きを変える。浅くゆっくりした動きを徐々に深くしていくと、土方から情けない声があがった。
……あのプライドの高い土方が、俺にいいようにされている。俺はこれがしたかったのか。なるほど、悪くねェな。むしろアリ。
一度指を抜くと、ローションを足してから中指を添えて、二本一気に捻じ込んだ。増した圧迫感にひゅっと土方の喉が鳴る。
確か、ちんこの裏側には前立腺があったはずだ。中にある性感を刺激されるマッサージがたまらないと、飲み屋で偶然隣に座った兄ちゃんが言ってた気がする。正直俺はごめんだと思ったが、今はそれを聞いといてよかったと思う。
ちんこの裏って、このへんかな。探りながらその場所を指の腹で押すと、土方の腰がびくんと跳ねてきゅーっと指が締め付けられた。

「ひっ…ァ…、あっ!!」
「あれ……? 土方くん、今お尻がきゅーってしたよね。気持ちいの?」
「ひ、がう……!きもちよく、ない…っ、へたくそ、ばか、てんぱ!」
「ふーん、そっか……そうだよな。土方くんはお尻のナカで気持ちよくなんかならないもんね」
「そ、そーだよっ! 尻のナカなんて、っひィィ! ぁ、ぁ、ぁ! だめ、ぁ、きもち……く、ない……きもちよくないから、よろずやぁ」
「ん〜? 俺ヘタクソだから分かんねェな〜。こうやって指の腹で撫でるだけじゃヌリィし感じるモンも感じられねェだろ? ……指3本突っ込んでローションと一緒にぐちゅぐちゅ擦ってやるよ」
「〜〜〜〜ッ、っ、ッ! ぁヒ、ンッ、ぐッ……アぁああ!!」
「そっかそっか。ほんのちょっとくらいは気持ちいい?」
「ぁ、あ、ダメぇ、っんぁあ……やら、そこ、おしたら、ァ、ぁあっ、ひ、あぅ! くうぅん…!」

ローションが泡立つくらいしつこく擦るとお尻の中のヒクつきが激しくなった。繰り返しそこをぐいぐいと押しこむと、土方の半開きになった口から涎が零れ落ちる。ぐりぐり押さないで、とか訴えかけてるんだろうけど何言ってるのか分からないフリで苛めてやった。とろとろ濡れて滑りの良いナカを触られるのはどんな気持ちなんだろう。

「ほら土方くん、腰が逃げてるよ。ヨダレ垂らしてないで、気持ちイイとこ見せて」
「よろず、や……おれの、ここ、触ってほしくない……! ゆるして、ゆるして」
「ここ? オチンチンじゃなくてお尻のナカ? オチンチンびしょびしょにしてるじゃねーの」
「やだっちんちんもやなの! ああぅ……お尻のナカぁ……! だめ、だめ…ッヒィィ!ぁ、ぁああっ!ぐりぐり、やぁ……はっ、あ”ぁ…んぅ」

なんだそのエロい声。俺の股間をダイレクトに刺激してくる。野郎の喘ぎ声で興奮する日が来るなんて思わなかった。たまんねェなオイ。
好き勝手にそこを弄って、ぐずぐずになったところでテロテロに光ってる指を引き抜く。土方の顔は真っ赤になっていて、涙とか涎とかでぐちゃぐちゃになっていた。やべェ楽しい。もっとぐちゃぐちゃにしてやりたい。

「なァ、ゴムいる? いらねーか。妊娠するわけじゃねェんだし」

どうせバーチャルなんだし、もし土方が女だったところで問題ないだろう。生のが気持ちいいに決まってる。
ボトムをくつろげて、取り出した息子を軽く扱く。十分な硬さになったところでひくつく穴へと宛がった。

「ぅあっ、よ、よろずや……ぁ、あ」
「ちんぽ挿いりまーす」

そのままぐっと前に体重をかけると抵抗を受けながらも先端がめり込む。土方の体を折りたたむようにして上から腰を落としていくと、めりめりと自分の物が飲み込まれていくのがわかった。

「ひぐ……ぅ、ぁ、あ」

苦しそうに顔を歪めるのを無視して、尻に毛が触れるまでぴったりと埋め込む。

「はーい、土方くん処女喪失。おめでと♡」

ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべると、苦しいながらもキッと睨み返してきた。気が強いのはいいけど、それが人を、特にドSを煽るってことが解らないんだろうか。
前後に腰を揺すってみる。馴染んでくると締め付けが気持ちよくて、自然と腰の動きが激しくなった。これってカラダの相性最高ってやつじゃねェ?俺の想像なわけだけど。

「ふっ、く……はっ、気持ちい」
「あ、ァ…、あっ」

土方の腰を抱え込んで激しく腰を突き入れる。その衝撃で短い嬌声が漏れるのがすげェクる。声を抑えたくても、こっちが遠慮なくがつがつ腰を動かすからどうにもならないようだ。手をぎゅっと握りしめたりソファに爪を立てたりして必死に衝撃から堪えている。口を引き結んでも鼻から漏れる声は止んではくれない。

「気持ちいい?」
「んなわけ、ある、か!下手くそ!」

まだ言うか。どう見ても翻弄されてるのに口は元気みたいだ。どうせなら「気持ちいい」とか、「もっと」とか、「早くイかせて」とか言わせてみたい。

「へー。そういうこと言っちゃうんだ」

土方の股間でゆらゆら揺れてるブツに手を伸ばす。ぎゅっと握ると、腰の動きに合わせて性急に扱いてやった。

「ふぁ、ぁっ、」

半勃ちだったそこはすぐに勃起して立ち上がる。一回イったのと俺の唾液と先走りの液体で滑りがよくなっていて、先端を指の腹でぐりぐり擦ると更にじわりと液体が溢れた。

「チンコこんなにしといて、よく、言うぜ」

どこからどう見ても感じまくってるくせに意地になって認めようとしない。こうなったら絶対言わせてやる。「早くイかせて」って泣いて縋らせてやる。
完全に勃ちあがったのを確認してから手を止める。きっと限界が近かったんだろう。手を止めた俺を土方が不満そうに一瞬だけ見て、すぐにぷいっと顔を背けた。このやろう、可愛くねェ。
右手はそのままにして、左手で玉の付け根あたり、俺のチンコが挿入ってるアナルとの間あたりを親指でぎゅっと強く押す。俺が何をしたいのか理解できないんだろう。土方は怪訝な顔で俺を見ていた。今に見てろよ。泣かせてやるから。
左の親指はそのままに、余った手のひらで腿をしっかりと掴む。少し滑るが気にせずに、止まっていた腰の動きを再開させた。右手も動かして、絶頂へと一直線に突き進む。

「ん、はァっ!よろず、やっ、んぅ!…あああ、っく、ぁ、ぁ、ぁ……?」

激しい刺激に土方の身体がイきそうになったのか、くっと力をが入った。しかし、握られてるチンコからミルクが発射されることはない。土方は自分がイったと思ったのだろう。続く快感と自分に何が起こったのかわからない感覚に混乱しているようだ。

「土方くん知らねェ? ここ押さえるとイけなくなんの」

そう言いながら左の親指に更に力を込める。もうとっくに限界を迎えているはずなのに、土方の息子はぷるぷると震えるだけだ。

「く、くそ……あにしやがるっ! 離せ……!」
「そうじゃねェだろ? イかせてくださいって言ってみろよ」
「誰がンなこと……!」
「かーわいくねェの!」

──生意気なことばっか言ってると隊士の前で犯すぞ?
言ってから屯所の広間を想像すると、さっきしたように一瞬で万事屋の見慣れた居間が屯所の副長室に変わった。ここは依頼なんかで入ったこともある。土方は目を見張って、ナカが緊張からかギュウギュウ締まった。あ、これ気持ちいいかも。

「…!? やだ!やだぁ! とんしょ、ここ、俺の…!」
「そうだなァ。誰か覗きに来ちゃったらどうする?」

言った途端に人の気配が俄かに生まれだして、思わず笑った。よく出来てんなァ。そんで俺も歪んでやがるな。
土方も人の気配を察知しているのか、さっきより抵抗の力が強くなった。俺の身体を押し退けようともがいてくれる。逃げようとしても無駄だけどね。攻める手は少しも緩めてやらず更に腰の動きを激しくする。右手も土方のチンコをぐちゅぐちゅしごきまくった。
いくら虚勢を張ったところで身体の反応は正直だ。はぁはぁと短く息を吐きながら、土方の目が段々と虚ろになってくる。中の柔らかくて熱い肉がうねり、時折ぴくぴくと俺のチンコに絡みついては痙攣するようだった。理性が溶けてるのが、分かる。

「ぁ、ぁ、よろ、や…よろじゅや、腰ふらないで…」
「イケメンでモテモテでみんなの憧れの土方副長が犯されてヨがってるとこ、いっぱい見てもらおうな」
「っ、…ぅう、やだぁ……見ないで…!」
「……そんなに嫌なの?」
「ぃ、やだっ……アイツらに、こんな……!」
「泣かないの。銀さんのお願い聞いてくれたらこの部屋には誰も呼ばないであげるから」
「お、おねがい……?」

言うつもりのなかった譲歩案が出てきたが、その違和感なんかどうでも良くなるくらいに、なんというか。そうだよ、可愛いとか思っちゃってる俺がいる。虐めてるくせに、優しくしたい、とか。

「とおしろ、俺の上に跨ってくんない? ……そうそう、良い子。そのまま腰、落として…俺のチンコ、あったかい土方くんのナカに挿れて」
「あっ……いや…! ぎんとき、…ぎんときのちんぽ、俺の……っちまう、から」
「ん? なーに……?」
「お、俺の……奥まではいっちまいそうで……こわい…」
「こわいの……? 優しくしてやるから大丈夫だよ。十四郎がゆっくり腰振れば、ちゃんと気持ちいよ」
「……っ」
「それともエッチな土方くんは我慢できなくて、激しくしちゃうかな? お尻のナカ、銀さんのでいっぱい犯してみる?」
「ひぁ……銀時っ」

俺もそろそろ限界が近い。加えてナカが動きを変えるもんだから、より一層煽られる。欲望のままに突き上げて、擦って、高めていく。呼吸を乱した土方が、やらしい音を立てながら言われるままチンコを咥え込んで、セックスしてる。早く「イかせて」って言っちまえばいいのに。そしたら楽になれるのに。先端に爪を立てると、溢れた蜜が玉になって零れ落ちた。

「ぁ、だめ、だめ! も、もうっ、ぎんときぃ」
「ほら、言えって。一緒にイこ」

宙を見つめてうわ言のように喘ぎを漏らす。こっちを見ないことが何だか悔しくて、土方の上体をぐいっと倒すと半開きの口にむしゃぶりついた。舌を差し込んで土方の舌を絡め取る。歯列をなぞって下唇に噛みついた。そうして口を離すと、後を追うように土方の舌が差し伸ばされる。
そうだ。こっちに落ちてこい。
土方を抱きしめて首筋に顔を埋める。すん、と汗と土方の甘い匂いを吸いこんで、耳元に口を寄せた。

「……聞かせて、十四郎」

囁いた言葉を、復唱させる。土方のアナルがきゅんと反応するのが分かった。

「はっ、んぅ…あっ♡ ぁ♡……ぎんときっ!とおしろの…ぁぁん、ちんちん、いかせてぇ……!」
「ハッ……じゃ、中で出していい?」

そしたらイかせてあげる。甘い誘いをかければ土方はこくこくと何度も頷いて、とろとろの甘い声でねだった。

「出していい♡ ぎんときのチンコ、おれにナカ出ししていいから♡ イきてぇよぉ♡」
「ここ屯所だよ?いいの?」
「いい♡いいから♡ 気持ちいの、ガマンできねェ……銀時♡ほしいっ♡ ちんこイかせてっ、気持ちいの……奥までいっぱい突いて……!」

やっと言った。思ってた姿よりずっとエロいじゃねーの。震える身体をぎゅっと抱きしめて、吸い付いてくるナカの奥の奥までチンコを突き入れた。

「っ、んだこれ、すげぇ」
「ぁああ…ぎんとき♡それきもちいの♡もっとキて、俺の奥、もっとぉ……」
「くそ、……煽りやがって、よぉ!」

吸いつくような感覚。俺のチンコで土方のやらしいところが悦んでるみたいだった。欲しがるように締め付けてくる肉壁に夢中になった。腰を振って燻った熱を叩きつける。

「ああ…ひっ…んァあぁっ♡♡ ぁっ♡ ぁ……♡ んん、はぁ……♡」

ゆるく腰を揺すって最後まで精液を注ぎ込むと、身体の力を抜いて圧し掛かった。腹のあたりがべっとりと濡れている。土方も熱を放ったらしい。
そのまましばらく、ぴったりと寄り添って息を整える。二人分の荒い呼吸がとても近くに聞こえた。
……こんなに頑張ったのは久しぶりかもしれない。まさかここまで夢中になるとは。すげェよ。めちゃくちゃヨかった。プライドの高いコイツが下品にダラダラお漏らしして、しつこく弄られて理性が狂うのなんか、最高だった。
今は、皮膚を隔てた向こうから伝わる鼓動が心地良い。少し早めだ。俺のが鳴って、土方のが鳴って、掛け合うように繰り返す。気持ちいい。
何だか胸の辺りがキュンとなって、もう一度抱きしめる腕に力を込める。土方も気づいたのか、すり、と肩に額を擦らせてくれる。土方の手が俺の髪をくすぐるように撫でた。
 

▶︎▷▶︎▷▶︎▷
 
 
「はーい、お疲れ様です」

甘々な空間を遮ってきた声にはっとする。なんだよ良いとこだったのに。ぼんやり惚けていたが、何とか記憶を辿る。……そうだ。俺は今まで土方とセックスしてて、いちゃいちゃ抱き合ってた、よな。咄嗟に自分の服を確認するが、服は全く乱れもなく着ていた。裸じゃなかった。ああそうか、アレは現実じゃなくてVRだったんだっけ……?
半ば放心している俺を残してテキパキと器具が外される。事務的な説明をされて、さっさと追い出された。この辺りは商売ってわけか。もう少し余韻に浸らせてくれたっていいのによぉ。
強制的に冷めさせられた気持ちを持て余しながら、入ってきたのと逆の順序を通って建物から出る。ウイーンと自動ドアが開いて目に差しこんでくる太陽の光は、なんだかとても眩しかった。

……土方と、ヤってしまった。
いくらVRの中とは言え、夢中になってエロいことをしたのは確かだ。キスもしてしまった。胸がキュンとしたのも、あの時はよく分かってなかったけど、アイツのことを愛しいとか思ったんだろう。なんだよ”愛しい”って。初めてだよこんなの。甘えるように擦り寄られた時も可愛いと思ってしまった。最初は間違いなく、別に好きとかそんなんじゃなかった筈だ。だけどヨかった。めちゃくちゃ気持ちよかった。
手を握ったり閉じたりしてみる。やっぱり土方に触れた感覚が残っている。もう二度と触れられないのが残念だ。いや残念って。マジで俺どうしちゃったの。

「「はぁ………」」

溜め息が、誰かと重なった?
驚いて隣に顔を向けると、まったく同じ体勢で驚いている土方がいた。え、ちょっと待って。なんで土方?え?まだVRなの?
目が合ったと思ったら、気まずそうに逸らされる。そんなわけねェよな、つーか俺だって気まずい。そりゃそうだろ。だってさっきまでこいつと……いや、アレはこいつじゃねェんだよな。じゃあ何で気まずそうなの?あ、こんな店の前だからか。ってことはやっぱりこれは本物の土方か。

「な、にしてんだこんなとこで」
「ッ……副長さんこそ何してんの。警察官が昼間から風俗とか行っていいの?」
「ちが……ッ! 捜査だ! ここで違法な商売してねェかどうか調べにきたんだよ!」
「なのに何で溜め息?……もしかして、VRでセックス体験しちゃった?」
「う、うう、うるせェ……!」

一瞬沈黙して、再び二人分の溜息が落ちる。すごい気まずい。さっきまでこの顔が俺の下で悶えていたんだ。あー、触りてェ。もっと言えば撫で回したい。

「て、……テメェこそ、よくこんなとこ来る金あったな」
「モニター頼まれたんだよ。……にしてもすごくね? これ」
「……ああ…」

土方が煙草を取り出して咥える。その普段している仕草すら、一発ヌいてきたせいなのか、やけに色っぽく感じた。目を伏せて火をつける横顔に、ごくりと喉が鳴る。気だるい余韻がまだ残っていて、いつもみたいに喧嘩する気にもなれなかった。それは俺だけじゃなく、土方も同じようだ。
柄にもなく横に並んで少しだけ一緒に歩いて、片側に感じる熱にすごく意識させられてしまう。やばい。心臓がドキドキ言ってるのが自分でも分かる。聞こえてないよね?大丈夫だよね?

「よ、よろずや、……あの、お、俺ァこっちだから」
「ん? おー、そっか……仕事頑張れよ」

最初の角で土方が別れを告げた。まるで仲の良い知り合いみたいに。どうしちゃったんだ。それに仕事頑張れよとか答える俺もどうしちゃったんだ。
見送った土方の後ろ姿は心なしか、ふらふらしてて覚束ないようだった。腰を気にしてるみてェだ。どんだけ激しいセックスしたんだよ。すげェ気になる。
【理想の相手は貴方の潜在意識に呼びかけますので、最高のセックスをお楽しみいただけますよ】──そうだ。考えてみりゃ、土方もここでセックスしたんだ。
土方の”理想の相手”はどんな奴だったんだろう。現実世界じゃないとはいえ、土方とセックスしたらしい理想の相手がめちゃくちゃ羨ましくなる。
そもそも土方の理想の相手どころか、土方の好みのタイプすら詳しく知らねェもんな俺。
……いや別に知らなくていいんだけど……だけど、もう少しくらいはお互いのことを知ってもいいかもしれない。これまで意地張って喧嘩ばっかりしてたけど、別に俺は土方のことが嫌いとかそういうんじゃないんだろう、と思う。多分。
それなら、ちゃんと土方と話してみるのもいいんじゃないだろうか。

「飲み行こうぜ、とか……誘ってみっかなァ……今日ヒマ?……いや、今日ってのはさすがに急すぎるよな。副長って忙しいんだろうし………いつが非番なんだろアイツ」

土方とは反対方向へ向かい、俺も歩き出す。酒でも飲んで、イイ感じに酔っぱらって、肩の力を抜いて。喧嘩して終わりにしてたなんて今までが勿体ねぇよ。話してみたら案外気とか合うかもしれねェし。それで、アイツと意気投合して、仲良くなんかなったりして。
そうしたら、もしかしたら──想像するだけで柄にもなくときめいた。理想の相手と、最高のセックスとか。もし、もう一度があるなら今度こそ余韻に浸りたい。甘やかしたい。虐めて泣かせるのはほどほどにして、優しくできたら良い。
VR技術を駆使した理想世界なんかじゃなくて、現実世界の万事屋へと帰っていく道すがらで、土方のことを考える。この世界はVRじゃないから俺の思い通りにはなってくれねェかもしれないが、心はどこか幸福感で満たされていた。