トイレに行かせて

「…ん」

まだ陽が昇ったばかりの明朝。冷えきった部屋の空気に、土方はぶるりと身震いをした。
銀時の家で一夜を明かした翌日のことである。

「…飲みすぎたな」

昨日は身体を繋げるでもなく銀時と晩酌に興じており、そのまま泥のように眠ってしまっていた。自分が眠っていたのは銀時の万年床で、隣には見慣れた銀髪が在った。どうやら狭いスペースを二人で分け合っている状態だったらしい。

「土方ぁ…?」
「悪ィ、起こしたか」
「いや構わねぇけど…寒ィなこの部屋」
「そうだな…ってオイ、離せ」
「どーこ行くんだよ」
「厠だよッ」

あれだけ飲んだ昨夜のツケが今になって回ってきており、土方の尿意は最早限界に達していた。早朝に目が醒めてしまったのもその所為だろう。
今はとにかくこの尿意を解放してやりたい。土方の気持ちを知ってか知らずか、銀時は目をしばたたかせた。

「…シッコ?」
「……ああそうだ、だから離せ」
「ここですりゃあいいんじゃね?」
「……は?」

銀時の発した台詞にぎょっとして耳を疑う。
ここでしろ、と云ったのか、この男は。
恋人とはいえ、他人の見ている前で用を足せ、と。

「冗談じゃねぇ、誰がするか!」

確かに閨では自分が男のソレを受け入れている。しかしそんな、人としての尊厳が危うくなるようなこと真っ平御免だ。
────そう思っていたのに。

「ひ…っ、や、めろぉ……」
「すげー、ここパンパンじゃねーの」

どうしてこんなことになってしまったのだろう。
抵抗もままならないままに性の部分を剥き出しにされ、銀時の舌でねぶられる。執拗に舌を這わせているのは、土方の睾丸であった。
羞恥に声を上げる土方の双珠が、銀時のぬるついた舌に隅から隅まで舐め回される。

「ああっ、ああっ! あああっもう、やめ…!」
「我慢すんなよ。ほら、力抜け。シーってしろ、シーって」

銀時が喋る度に息がそこに当たり、もどかしい疼きを呼び起こした。

「だっ…れが、するかぁ!」
「強情だな。そんなトコもたまんねェけど」
「ひっ、あっ、あっ」

チロチロと膨れた胡桃を舌先で擽られ、腰が跳ねる。逃げようとするのを執拗に追いかけられ、腰を抑えられてしまえば土方に成す術はなく、艶やかな吐息を鳴かせること以外赦されない。

「土方、オシッコ出さねぇの?」
「ああッ、出さッ、出さない…っ! トイレに行かせろ、って……!」
「それは駄目」

必死の訴えは仁辺もなく却下され、銀時は素直にならないお仕置きとばかりに土方のぷりぷりと熟した欲望袋を音を立てて吸いまくった。次いでカウパー溢るる先端を甘噛みすると、ハァハァと息を荒らげた土方が身をすくませる。
本気で噛まれるとでも思ったのだろうか。
そんなことしねぇよ、と安心させるように今度は鈴口で舌先をちゅくちゅく蠢かしてやる。浅くほじくりながら、手のひらは尿意を促すように秘玉を撫で転がした。
柔らかい愛撫に、はぁんっ、とはしたない声を上げた土方の腰の奥から、いよいよ覚えのある感覚が間欠泉のように吹き上がってくる。
土方の勃起したペニスは境地に達そうとしていて、恥ずかしいゴールはもう目の前に差し迫っていた。何度も自制に押し返されながら、それでも確実に。
そして来たるべき瞬間──

「あ…や、やだ」

初めはチョロチョロと。少しずつ溢れだしてきた土方の、先走りジュースとは違う味。
もっと出せというように、銀時は強く下腹を押した。

「あっ、あぅ…! ぎ…とき、やだ、やめろっやだぁ…ぎんときッ…ふッ…あああァァ……ッ!!」

泣きそうな悦の声を上げながら、土方はついにプシャアア、と勢いよく放尿を始めた。
冷えた万事屋の部屋の中で土方の体液は唯一温かく熱を持っている。
銀時は待ってましたとばかりに朝一番のソレをごきゅごきゅと飲み下した。喉を熱い温もりが通りすぎていく。
特有の臭いとしょっぱい味を最後の一滴まで残さずに味わってから、ようやく口を放してやった。
そこで漸く、上から嗚咽が降ってきていることに気づく。

「ひ…ぐっ、銀時のばかやろ……へん、たい、っふざけんなぁ…!」

限界に達してしまった羞恥に、土方は目に涙を溜め真っ赤な顔をして銀時を睨んだ。

「うん、ごめんね土方くん」

きっと彼は気づいていないのだろう。解放の瞬間、ひどく恍惚した表情を見せたことなど。

零れた尿が引き締まった白い太股を濡らし伝っている。
ヒクリと土方が息を吸う音が聞こえて、そんな小さなことにすら歓喜した。
身体を震わせている土方のペニスが、緩く勃ち上がっているのを視界に捕らえた銀時は、素直に謝る胸の内でむくむくと嗜虐心が頭をもたげるのを感じていた。