「もうちょっと表情寛いだ感じで!」
「マヨのボトルはユル~くぱっくんしてくれる?」
土方は撮影スタッフの言われるがままに上体を倒し、後ろに手をつく。ぱくりと、マヨネーズの飲み口を唇に柔らかく挟む。
こうしているといつものように吸引してまろやかな滑りを味わいたい衝動に駆られるが、撮影用だからまだ中身を食べては駄目だ、と釘を刺されている。
地面は勿論自分の周りの壁も、撮影を考慮しているのか白い布が張り巡らされていた。
幾度も焚かれるフラッシュと相俟って、そこは土方にとって異質な空間としか表しようがなく、寛いでと指示されたが既に顔が引きつりそうだ。
それを察したのか、カメラマンの男が一旦休憩を入れようと提案した。
朝一番の撮影で時間に余裕があるらしく、スタッフも特に異を唱える事なく、撮影が10分間切り上げになる。
「あ、土方くん。それね、休憩中に食べていいよ。疲れたでしょ」
「はい、ありがとうございます」
人が良さそうに笑うスタッフの背を見送って、土方は手にしたマヨボトルを迷わず口に運んだ。ちゅううっと吸い上げる。まろやかな舌触り。普段のマヨより柔らかく、喉の奥にドロリと絡みついた。普段口にするマヨネーズとは違うメーカーだろうが、これも悪い味わいではない。特に気にならなかった。
しかし10分後、マヨを殆ど摂取した土方は、自らの身体に異変を感じていた。
(なんか、身体熱ィ…)
照明もフラッシュも散々眩しかったが、先刻より汗ばんでいるように思う。まるで体内に小さな大陽を飲み込んだみたいに、やたらぽかぽかするのだ。
「緊張取れてきた?」
「はい…すみません。あの私、」
「そんなカッチリ敬語使わなくても大丈夫。もっと楽にしていいからねー」
鼻唄でも歌いそうな勢いでスタッフの一人に帯を解かれ、土方はギョッと瞠目する。
「え!? あ、と、何で…?」
「カメラマンも僕らも休憩したらリフレッシュしてやる気出てきちゃった。色々なパターンで撮りたいからさ、良いよね」
「? …はい」
そのまま着物を脱がされるのに抵抗がない訳ではなかった。しかし、先程から身体が熱いのもあり、薄着になれるならその方がありがたい。
「おっ、いい身体してるねー土方くん」
「ありがとうございます」
「折角だから裸も撮っちゃおうかな」
パシャ、とフラッシュが焚かれるが、土方は頬を上気させ、耳朶までを薄く桃色に染めている。
思考もふやけて散漫になりそうで、図らずも「寛いでいる」風体になっていた。
「うーん、服がない分ちょっと平坦かな、上半身」
「…え……?」
「あ、俺やります!」
何をするのか解らないままの土方の横にマヨボトルを渡したスタッフがやってくる。視線を投げ掛けるが彼は何も答えず、土方の脇腹をゾロリとかさついた手のひらで撫で上げた。
「ん、んっ…!」
ピクン、と反応した背筋に彼は「いいよ、そのまま」と嬉しそうに耳元で吹き込んだ。カメラマンに目配せすると、瞬く間に複数名の男性スタッフが白い異質に踏み込んで来た。
彼らの手のひらが、指が、爪の先程の躊躇もなく土方の身体を撫で上げる。
腹筋をなぞられて、脇の下の窪みも、そんなところなにもないのに擽るような動きをやめてくれない。
臍も同じようにコシュコシュくじられて、土方は身を捩った。
「あ、っんん、やめてくださ……ぃ!」
「土方くん、ギャランドゥーつるつるじゃん」
「脇もさぁ、うっすらしか生えてねぇのよコレが」
「っテメーら人の話聞いてるのか!」
「あのね、土方くん」
「!」
その時、このおかしな状況に動じる事なく職務全うしているカメラマンが口を開いた。写真を撮っているがさっきよりレンズとの距離が大分近い事に気づいた。
「抵抗されても困るんだよな。これは立派な公務だ。午後から坂田さん来るし、大人しくしてないとダメだよ。君で色々なパターンを撮れば、構図の雰囲気も掴めるし、後の人達の時間短縮になるんだよ。まあ、君で試させて貰えないなら、坂田さんに頼むのも良いが…君は副長だろう? 中途半端な仕事をして納得出来るのか?」
「……それは」
(俺が出来ねぇなら、万事屋に頼む……?)
そんなのは嫌だ。心の奥でフツフツと思いが込み上げてくる。
土方は坂田さん──万事屋の坂田銀時を、好敵手だと感じている。口には出さぬが、あの銀色の武士道に、その魂に、密かに憧憬のような気持ちを抱いているのだ。
ここで頼みこんだりしたくない。そう思ったのは土方自身が、銀時と対等でありたいと望んでいたからだ。それに、こんな取るに足らない事で万事屋の手を煩わせたくなかった。
「スンマセン。やっぱり私がやりますので続けて下さい…」
「そうか…真選組の頭脳に相応しい、殊勝な心がけだ。じゃ、とりあえずこの人達に土方くんの乳首を撮影用乳首にして貰おうね?」
「あっああッ…!」
淡い盛り上がりが、キュウ…と太めの指先につねられる。絶妙な力加減で痛くないが、身体はすっかり汗ばんでおり、ジンジンとした疼きがそこから広がるようだった。
続けて下さい、と請われた事で遠慮がなくなったらしく、挟み転がされて熟れた二粒は両側にいた男の器用な舌に絡めとられた。
「ひっ、あはぁ…ぅぅ、んやぁ…」
ズルズルと下品な音を立てて乳輪ごとすすり上げられる。粒立った乳首を尖らせた舌につつかれ、トロトロに光るまで舐め回される。
左右異なる刺激に、快楽を見出だしてしまうのはいとも簡単だった。
土方は聞くに堪えない水音を聞かされながら、耳の穴にまで侵入してくる濡れた感触に身を震わせた。
「土方くん、どう? 乳首は勃った?」
「んんッあ、わかりませ…ひぃぃ!」
「うんうん、電マが気持ちいいね」
「あああっ…!」
「もうすっかりビンビンだな。ほら、逃げるなよ…マッサージだよ?ブイィィィン、ってさ、スケベになった身体を気持ちヨ~くしてやるんだから」
「ひ、やぁ、だめですっ、だめぇ……んぁあああ!」
左右に電マを当てられて、土方は嫌嫌とかぶりを振る。
男曰く『スケベになった』身体と敏感になった乳首に、震動マッサージは甘美すぎる刺激だった。
「アレー? 土方さん、乳首マッサージでチンコ勃ってますか?」
「そんな…ぁッ」
「…ああ、本当だね。いけないなぁ土方くん…コレは全年齢に向けた商品なんだから、今すぐ鎮めてくれないと。……下着の上からでも染みが出来ているのが丸判りだ」
「ふぁぁっ! ひぅぅ……!」
人差し指で撫で擦るようにして蜜の溢れる先端をクリュクリュ弄られる。土方は抵抗も忘れて甘ったるい吐息を漏らした。マヨボトルの残りを突然口に流し込まれて、嚥下すると一層身体が熱くなった。
「はぁぁ……ん」
「大丈夫? ほら、もっと楽にして…乳首弄られて下の方がお漏らししちゃってるからね。ああ、もうこんなニュルニュルじゃないか」
「いやだッ、見ないでくださ……!」
「違う。感じまくりのびしょびしょ敏感ちんこをペロペロちゅーちゅーして下さいだろ?」
「ふ、うぅんっ…」
じっくり見られて恥ずかしい。しかし根本から裏筋を尖らせた舌で、レルー…と舐め上げられて、くぐもった喘ぎが堪えきれずに漏れた。
「腰が揺れてるぜ。たまんないんだろ」
「キレイに撮ってやってんだから、もっと鳴いてくれませんかね、土方さん」
「ああ、気乗りしないならもっと舐めてやらなくちゃ」
「ひっ、ぐぅ…!」
過敏になった亀頭を名も知らない男の舌が這い回る。震える腰も、足の抵抗も押さえつけられ、愛撫を止めてくれる者など誰一人居ない。
「あああ~っ!」
先走り汁を舐めとり、エラと幹で溝になった部分がいやらしく抉られる。
だらしなく弛んだ声と一緒にヌルヌルとカウパーが溢れ出すのが、土方自身でも分かった。
「ココにもマッサージが必要か」
「そうだなあ。…まずはタマじゃないか?」
カメラマンが同調を示し、先刻まで胸のあわいを犯していた震動が下肢に近づく。土方はやめてください、と言い募ったが、何を言っているのか聞こえないなと一蹴されて。濃い蜜のたっぷりつまった袋に白い電動ヘッドが噛みついた。
「──ひイっ! ああああァ……っ!」
玉をグリグリされて、強制的に押し出されるような射精感が込み上げる。
すぐにびゅううっと噴き出した白濁が男達の手を汚した。
「…あーあ、レンズが汚れただろ。だらしないな。これじゃあ坂田さんに、」
「ひっ、あァ! よろずや、には、しないで下さいッ……!」
「じゃあ土方くんがザーメン射精我慢するか?」
「しますっ……がまんしますッ」
じゃあお尻のナカでいっぱい訓練しようか。優しい声音で宣言され、視界が黒布で遮られた。まずいと思うのと同時に、誰かのヌメリを帯びた指が無遠慮に浸入してくる。
迷う事なく腹側の方をぐりぐり押し上げる指の蠢きに、不審を抱いたのは一瞬の事だ。次の瞬間には電流のような甘い痺れが全身を駆けずり回った。
「ひぃああああっ!!」
「どうしましたか、土方さん。お尻のナカで何かされました?」
「ひぐッ、違、ます、アアア!! やめて、そこやめてくださ…!」
「コリコリ触られたら我慢出来ないんですか。やっぱり坂田さんに、」
「できっ、出来ます……ッ!」
「じゃあ、もっとこのシコリを苛めましょうね。ココは丁度いいんですよ」
理性を飛ばすのに。
その声は自らの矯声に上塗りされて、土方の耳には届かなかった。
潤みを帯びた肉壁に侵入した太い指が、泣きドコロを容赦なく前後に摩擦する。快楽の毒をジュクジュク撒き散らしながら、理性を陥落させていく。
「──アアッ、アアッ、アアアッ!! んフぅ、んィィ…っ、ヒ、ヒ……ッ」
「はいはい、前立腺たまらないんだよな。ゴシゴシ擦られて気持ちいいなぁ、気持ちい気持ちい」
触っていない男までが、心得たように耳元で性感を吹き込む。
ただ熱かった。
全身が動かず強張る中で、腰と勃起したペニスだけが引きつけを起こしたように、ヒクヒク引き攣った。
薬の効果なのか細かな汗が汗腺から幾度も吹き出し、玉を結んで伝い流れていく。
「ほらどうした、イくのは我慢だろう? ほら、ほら」
「ひィッ、んっんぐっ……ふぅぅん…!」
「タマがたぷんたぷんだな。さっき出したのに、まだ搾られてぇのか?」
後ろの秘孔をピストンする指が止まらない。くちゅくちゅ水音を立てて欲のまま滅茶苦茶に擦られた。
赤く色づいた袋をジュウッと強く吸われ、土方は掠れた艶声を抑えようと、鼻にかかった声を漏らす。
しかし、別の男に蜜を吐き零す赤く艶やかな先っぽをカリカリ爪で引っ掻かれて。全身を悦楽が這いずり回るような3点責めに、土方はあっけなく善がり声を上げてしまった。
「ふああァ?! ひぃッ、アンッああああ~~っ!!」
「土方くん、遠慮はいらないよ。もっとはしたなくヨがってごらん」
「んふぅぅ! ひぐっ、あぅぅ……!」
精液の出口は執拗な指使いにぐりぐりと擦られて、瞼の裏で喜悦がはじけた。涎が口の端をツウッと伝い落ちた。くぱくぱと孔の開ききった小さな密穴が収縮し、だらだら白蜜を垂らし、最早自分の意識では制御出来ない。
土方の勃ち上がったそれは筋を浮かせて、痛いくらいに張りつめていく。
「イきたいか? …俺達にケツマンコ差し出すってんなら考えてやるよ」
「締まってて気持ちイイだろうなァ…」
唐突に脚を担がれ、双肉の割れ目を探られた。粘膜をひくつかせるそこが剥き出しになり、焼けつく程の熱視線に犯されるのが解った。思わず瞳を強く閉じる。常識では到底測れない恥辱に腰が震える。
「オラ、もっと足開けよ。…そうだそうだ、ピンクい中が涎垂らしてんのがよォく見えるぜ」
ローションが発情した粘膜に絡みついた。生々しい感触に、ひぐひぐと息交じりに身悶える。
「は、離せクソやろぉ……っ!」
「ハッ、こんなトロ顔晒しといてよく言うな」
「もっとトロトロにしてやるか。乳首と脇の下、電マしてやれ」
「へへへへ、悪く思わないで下せぇよ副長さん。これも撮影の為だ」
ヴィイイ、と容赦ない振動が悪戯するように脇を擽るように動く。土方が吐息を零し身を捩るとそれが合図のように、熟れた勃起乳首にヘッドが押し当てられた。
「んひぃぃっ!」
堪えきれず引き攣るような喘ぎを漏らす。男達の下卑た感嘆に鼓膜を揺さぶられた。
しかし、媚薬で高められた身体は、電動のそれを押し当てられ擦られ、尖った乳首の先端も淡い乳輪も可愛いがられるしかなくなってしまう。突然前触れもなくローションをドロドロ胸筋に溢され、玩具の滑りがよくなる。ニュルニュルになったそこを、今度は太い指に摘まれた。
玩具よりも繊細な動きに左右の乳首が熱くて痛くて痒くて疼いて。ピンピンに膨れているのも構わず転がされ、摘まれ、淫らに咽ぶ刺激にとろけてしまいそうだ。
「乳首が気持ちイイか?」
「知らな、も、嫌だぁ、万事屋っ、万事屋ぁ……!」
「ヘッ、万事屋なんか来ねぇよ。なあ?」
「そうですよ副長さん。万事屋さんはお呼びしてませんから」
「……そ、んな」
万事屋。万事屋が、来ない。
「何を驚いてるんですか? 当然でしょう。朝から夜まで、副長さんが完璧に頑張ってくれるんなら、我々もそれ相応に……ねぇ?」
ああ、そういう事か。
俺がやればいい。万事屋を汚すくらいなら、俺が。どうせもうされてるんだし、変わりゃしない。
じゃあ何でこんなに悲しくなるんだろう。
目隠しをされていて良かった。目の周りがぐちゃぐちゃに濡れても気づかれないから。
「どうしたんだよ、急に大人しくなりやがって……アンタが一番感じるのは、ケツん中の……おら、ここ突かれると雌になっちまうんだろ!」
「ぁッ?! んっあぁぁんっ! ゃ、しょこやめぇ……んぅぅ~!」
「嫌じゃねぇだろ。雌イキさせてほしいんだろうが! 気持ちイイんだろ?」
「ひアぁアン! したくね、したくねぇ!……したくね、のに、イイ、イイっ……もっとぉ」
滑りを良くした指が2本、ずりずりと出入りした。弱い泣きドコロをローションを纏った人差し指と中指に弄り回されて、土方は眦に浮かべた涙をポロポロと落とした。理性と陥落の狭間で足を閉じられずに晒される秘部が、歓楽に纏わりつく。土方の本心に反して腰はクイクイと動き、雌のスイッチを太い指に触れてほしがった。恐らくは異常な空間と媚薬がそうさせているのだ。けれど、
「ああ、ああぁあッ!」
望み通りにスイッチを左右に激しく揺さぶられると理性などとろとろに溶かされてしまう。指でゴリゴリと縊り出すのは狡い……そんな風にされると涙が出てくる。
「おい頭ァ、前立腺コリコリしてたら、チンチンもネットネトだぜコイツ。女みてぇにナカで感じてやがる」
「乳首もビンビンに勃ってら……へへへ、淫乱ちんぽがお似合いだなァ?」
「副長殿のおちんぽの先っぽを綺麗に舐めてあげなさい」
「おーおー、ジュルジュルにしちまって…しょうがねぇなァ、ナメナメしてやるよ」
「ひいっ、らめ、ろ…うんぁぁぁ……!」
「裏スジもクッキリ浮いてるぜ。ばっちり撮影してるからな、安心しろや」
「土方さんの力添えで、坂田さんも助かるだろうよ。…全員どきな。土方ァ、この光ってるカメラに…………いいか? ほら、教えたまんま言うんだ」
「ああァ……っ、俺のカチカチの裏スジおチンポみて下さ…やらしい、ちんこ……、しゃせぇ、させて…ひあァん!」
「ハッ、堪んねェ…!」
カメラマンは正面に陣取り土方の痴態をフレームに収め続けていたが、その言葉を最後に撮影を放棄した。横から吸い付かれ、舌がぞろぞろ這い回る。今まで観察に徹していた男の舌は欲情しきっていて熱い。カリの段差をレロレロと素早く舐め回されてクラクラした。酩酊と共に鈍く痺れるようだ。呂律も儘ならない。
「あっ…はああ~んっ、出ゆ! でひゃうよぉぉ……!」
「遠慮はいらないから、さっさとザーメン飲ましてごらん? ……ほら、出せよ」
「あああ~っ、でひゃ、うっ…やだぁッ」
耳の穴にも舌が浸入した。
生温かくぬるついた感触が不快なのに、ジュルジュル啜る音が羞恥を煽る。外気に触れると冷んやり濡れた感触もした。やめろと言いたいのに、
「タマ揉み攻撃~」
「ああァっ、やめ……っ」
また別の誰かの手が伸ばされる。視界が遮られているのにいやらしい刺激は多すぎて、キャパシティーオーバーだ。精液タンクである袋をくにゅくにゅしごかれると堪らない。射精感が込み上げる。
「何を我慢してやがる。イきたくないのか?」
「へへへ、今度はおしゃぶりして貰おうか。ほら、ミゾまで綺麗にしろ」
ボロンと肉竿が突き出されるのがわかった。頬に無遠慮に押し付けられ、土方は顔を背ける。生臭い性臭を放つ方向を、目隠しの内側で鋭く睨みつけた。
「っ、誰が……! ぐぁ゛ぅっ!」
途端、やわやわと揉まれていた袋をギュウッと掌に締め付けられた。総毛立つような恐怖に襲われ、敵わないのだという思いが頭を擡げる。敵わないのだ、もう。
下卑た視線に犯されながら、玩具で身悶えた。女のように胸の突起に感じ入り、涎を垂らした。何より、知らぬ間にナカに息づいていた雌の証を乱暴に揺さぶられ、こね回されまくった。ひんひんと泣かされながら武士の矜持をかなぐり捨てて射精をした。放出を、はしたなく乞うた。
もしも万事屋が此処に居たのなら、口にするのも憚られる汁に塗れた自分を見て軽蔑するだろう。それは以前のように軽口を叩き合う事など出来ない事と同義だった。
結局、自分は満足に働けず、万事屋に迷惑をかけただけなのだ。そう思うと、生理的なものではない雫が溢れた。目隠しの布がじんわりと吸い取っていく。奴等に気づかれずに済むのは良かったけれど、銀色の彼を思うと胸の奥がどうしようもなくじくじくする。
「可愛いタマタマ潰されたくねぇだろ? 口開けろや、……!」
「……? っ、」
その時、ドサッと白色布張りの床が鈍い音を響かせたかと思うと、拘束された脚が急に軽くなった。情けない悲鳴が聞こえたかと思うと、グギリと何かの捩れる音がして。男が断末魔を上げる。怯えたような騒めきが起こり、バタバタと逃げ出す足音が複数。弾かれたように目隠しを毟り取ると、強い照明が目を刺して。荒い息遣いが絶えず聞こえていた筈が、水を打ったように静まり返っている。出血し倒れている男を、事も無げに窓から捨てる、白い背中とフワフワの天パ──銀色の男がそこに居た。片手に携えた木刀をベルトに収め、緋色の光彩が土方を捉えた。
「……土方」
「……!?」
歩み寄り声をかけられた刹那、痛いほどの力で抱き寄せられた。