Too Tight To Break

 恋人同士になったのをきっかけに、変わったことはなんだろう。案外、特に変わっていないように思う。寝室に寝転がって一つのベッドを分け合って使うのは左馬刻と付き合う前も正直よくあったから変わってない。でも今は『付き合っている恋人同士』という正当な理由ができたから、どうして左馬刻が一緒に寝るとき必ず俺を抱きしめてくるのかについて自問して困らなくなったのは嬉しい。付き合う前から左馬刻に抱きつかれて眠るのは嫌じゃなかった。ヨコハマを統べる王様に気に入ってもらえてるんだと誰かに自慢したいくらいの気分だ。私だけが知っていれば良いのでしませんけどね。
 朝起きてすぐに左馬刻の顔を見られるのも嬉しい。寝顔まで綺麗すぎる。神様はどんだけ端正こめて左馬刻のツラを作ったんだろうな、とよく思う。黙ってれば大層な美形で、もはや美術品みたいだ。
 おはよう、いってらっしゃい、いってきます、ただいま、おかえり、おやすみ。泊まりの日は殊更何度もキスされることにだって、最近はようやく慣れてきた。左馬刻がこんなに甘々な彼氏だなんて聞いてなかったし知らなかったが、当の本人は全く、恥ずかしいどころか気にすらしてないらしい。銃兎がいるんだからするだろ、と寧ろ俺がおかしいのかと疑いたくなるくらい平然としている。左馬刻に甘やかされるのが嫌なのかといえば、嫌ではない。むしろ好きだし、もっと好きになってしまう。だがしかし、納得いってないところがあるんだ。

 
 ────俺には左馬刻に告白された記憶がない。
 付き合っている身でおかしいよな。これが他人だったら俺も何言ってるんだと笑っただろう。しかし自分事となると全く笑えない。深刻な問題だ。もちろん左馬刻を好きだったことは前からとっくに自覚しているんだが、それは一方的な、俺の片想いだった。
 告白しようなんて思いもしない、ただのチームメイトとして、いつか離れる日がきたとしても、その日が訪れるまで持ちつ持たれつ、支えていければいいと割り切っている俺の片想いだった、はずだ。それがある日の朝から急に、左馬刻のスキンシップが増えた。左馬刻が言うには、俺達は付き合ってるらしい。
 ファーストキスだって、実はいつされたのかよく分かっていない。左馬刻が言うには『俺様から告白して、銃兎が頷いて、その日のうちにキスした』らしい。
 だがそんな夢みたいな記憶、俺には全くないんだよな。左馬刻から告白されるなんて考えてもみなかった展開だし、恋愛事なら百戦錬磨、いや百戦錬馬だろう左馬刻が俺を好きになって選んでくれたなんて今でも不思議だ。付き合っている現在、左馬刻とは何度もキスしているし、それ以上の行為だって望んでいる。左馬刻と両想いになれる日が来るとは思っていなかったから、付き合っていると知らされた時は、正直すごく嬉しかった。幸せだし、左馬刻に抱かれることも望んでいる。けれど、やっぱり俺はやり直しをしたい。左馬刻だけ覚えてるなんてズルいと思うんだ。

 
「告白とファーストキスのやり直しをしてほしい」
「……、は……?」
 リビングでコーヒーを口にして一息ついている左馬刻に堂々と要求した。左馬刻は意味が分からねぇと言いたげに眉間に少し皺を寄せて、胡乱げな目をした。が、ここで引くわけにはいかない。だって大事なことだから。左馬刻からの告白なんて貴重なもの、覚えてないなんて許せない。ファーストキスだって特別だ。
 ……まあ、全部忘れてしまっている俺が悪い。悪いですけど、仕方ないでしょう。それとこれとは話が別です。面倒くさそうにあしらわれたとしても一歩も引かないつもりだ。俺の心意気を汲んでくれたのか、左馬刻はコーヒーを飲み干してカップをテーブルに置く。どうやら俺の話を聞いてくれるらしい。
「……つってもよぉ、何回もキスしちまったし。今更ファーストキスのやり直しは無理だろ」
「……う」
 正論だ。ヤクザのくせに正論を言いやがる。でも俺は覚えてないし、左馬刻との初めてのキスをやり直したいんだ。
「告白のやり直しは、まぁ出来なくもねぇか……でもよ、告白をやり直すってことは銃兎と恋人じゃなくなるってことだろ。ンなの耐えらんねーわ」
「そ、それは……」
「ウサちゃんがどうしてもって言うなら離れるけどよ……俺様が寂しくてヤダって言ってんのに別れんのかよ」
「………っ、ずるいだろそれは…」
「ハッ……ウサちゃん可愛いなぁ。コーヒーお代わりするか?」
「……しない」
「じゃイチャイチャしようぜ」
「……くそ……」
 負けた。ソファの上で左馬刻に抱き寄せられて、頬にキスされる。今だってそりゃ幸せだし、されるがままになるくらいに絆されている。左馬刻に寂しい思いだってさせたくない。だけど納得はいかない。でも左馬刻と別れたくはない。二律背反だ。面倒くさいって左馬刻にもきっと思われてる。忘れてた俺が悪いんだ、やっぱり。俺が忘れちまったことを話しても、左馬刻は怒らなかったじゃねぇか。忘れちまったならしょうがねぇだろって、笑って許してくれたんだ。左馬刻だって忘れられてショックを受けたはずなのに、それでも俺に向けてくれたのは恋人としての優しさだった。それだけでも充分に感謝するべきだろう。左馬刻を困らせたくはないし、しつこく言って嫌われたら元も子もないよな。

「……銃兎? んなションボリすんなよ」
「左馬刻……やっぱり良いんだ。無理言っちまってごめんな。大体、俺が忘れちまってるのが一番悪いんだし……左馬刻は何も悪くないのに、当たって悪かった」
「……まぁ別れんのはマジで絶対ぇヤダし無理だけどよ。もう一回お前に告白するってことならいいぜ。してやんよ、ウサちゃんがしてほしいなら」
「い、いいのか……!?」
「おう。銃兎の喜ぶ顔見んの悪くねーしな」
 なんだかんだでそう言ってくれる左馬刻は、やっぱり優しい。覚えてねぇのが悪いだろ、とは言わないんだ。
 ……まあ、覚えてなかった俺が悪いんだろうなと思うけど。でも、やっぱり左馬刻からの告白は忘れたくないし、今度こそ覚えておきたい。
「というか左馬刻……お前、ほんとに俺に告白したのか? 分かりにくくて俺が気づいてなかった可能性もあるんじゃないか……?」
「テメェじゃあるまいし俺様は回りくどい言い方なんざしねぇんだよ」
「どういう意味だ」
「さぁなぁ? でも俺様が告白したら、銃兎は俺も好き、嬉しいって言ってくれたんだぜ。……忘れちまったんだろうけどよ」
「うっ……」
 そうなのか。やっぱり覚えてない俺が悪い。だったら、俺が忘れたからって理由で告白をやり直させるなんてワガママじゃないだろうか。ワガママだろう。でもやっぱり聞きたかった。左馬刻の声で聞いたら思い出すかもしれないし、告白された日の俺が羨ましいって、自分のことなのに、実は付き合ってる今でも妬いてしまうくらいだから。

「……銃兎」

 左馬刻が俺の手を取る。持ち上げられて、指先に唇が落とされた。真っ赤な柘榴みたいに艶々した熱っぽい瞳が、俺だけを見つめていた。瞬き一つ許されないような空気が生まれて、見つめ合う。なんだこれ、握られた手が熱い。
「……俺はテメェが好きだ、銃兎。テメェの人生俺に丸ごと寄越せ。俺様がテメェの願いも幸せも全部叶えてやるからよ、一緒に地獄まで堕ちようぜ」
 ひゅっと喉が鳴った。心臓がばくばくと激しい音を立てる。頬が熱い。心臓が痛い。恥ずかしい。なんだこの破壊力。言葉が出てこず口をはくはくさせる俺に、左馬刻は口端を歪めて笑う。
「じゅーとぉ。返事は?」
「……………さ、さまとき」
「あ?」
「俺、本当に告白されたのか……? お前がこんな真剣に言ってくれたのに覚えてないなんて、普通に酷すぎるだろ……左馬刻の恋人として選ばれていいのか、自信がなくなってきた…」
「はぁ? ……忘れちまったモンはしょうがねぇって言ってんだろうが。ウサちゃんが忘れたって俺様は忘れねぇし、ちゃんと教えてやる。だから自信ねぇとか言うんじゃねーよ」
「左馬刻……」
「そんで、返事は?」
「……俺も、好きだ」
 
 
 ◁◁◁◁
 
 
 ワインが注がれたグラスを手に上機嫌な銃兎。あークソ、可愛いな。でもちょっと飲み過ぎじゃねーのか。まあ、ウチで二人きりだから別にいいけどよ。
 別にいいけど、こんなフニャフニャになってるウサちゃんを前にして手を出さない俺って偉いと思わねーか。今の自分がどんだけ美味そうなのか全く自覚してねぇんだろう。といっても警戒しろとは思わない。職業柄か、性格も含まれてるんだろう。どこか一線引いて他人と距離を取る神経質な銃兎に近づいて、触れて、肩を組んで、そうやって俺相手なら警戒しねぇようにずっと仕込んできた。今では同じベッドに寝転がって過ごすことだって出来る。後ろから銃兎を抱きしめたって抵抗されない。しょうがねぇなってクスクス笑われるだけだ。仲間同士で甘えてるだけって思われてるんだろうし、年下扱いされてることも悔しいが分かってる。そのせいで絆されてくれてんのも知ってる。でもそれだけじゃ足りない。もっとその先まで許されたい。
 もう言わなくても分かるだろうが、俺は銃兎が好きだった。チームメンバーとしての好きだけじゃねぇ。欲情とか、嫉妬とか、独り占めしてぇとか、そういうドロドロした黒い感情も全部一緒くたになっている。銃兎を側に置きたい。そういう意味での好きだったから、抱きしめてキスして、裸にして、触って、撫でて、舐めて、可愛がりたかった。左馬刻そこはイヤ、見ないでって恥ずかしがってぐずる銃兎を宥めて脚を開かせて、濡らしてほぐして、突き入れる。誰も知らない奥を俺だけが汚したい。銃兎を裸にして抱くところを想像してヌいた回数は一度や二度じゃねぇ。数えきれねぇくらいヌいた。オカズにしてるなんて本人には絶対言わねぇし言えるわけねぇけどよ。でもこんなに無防備にされちまうとなぁ、こちとら清廉潔白な人間じゃねーし、悪い考えが過ぎっても仕方ねぇと思うんだ。

「さぁとき……」
「おう、ここにいんだろ」
「ん……、さぁとき……もっとほしい」
「……ダメだ。明日、二日酔いで気持ち悪くなんぞ」
 言いながらグラスを取り上げればご機嫌だった顔が、むっと不満そうに歪んだ。ああ、そうやって拗ねてんのも可愛い。普段よく回る呂律がちっとも回ってねぇんだからもう終わりにするけどよ。
 さぁとき、なんて、なんだそれ。可愛すぎんだろお前。そんな甘えるみたいに無防備な声で呼びやがって。もうマジで好きだ。メチャクチャにしちまいたくなる。抱き潰してぇ。俺の気持ちを知りもしねぇで甘えてくる銃兎に可愛い通り越して逆にイラつく。煽りやがって、マジでタチ悪いだろ。アルコールで熱くなった銃兎の手を握る。華奢な銀縁フレームの眼鏡は賢いウサちゃんに似合うが、今は不釣り合いだ。潤んだネオンピンク色の虹彩。可愛いなぁ。やっぱり俺が独り占めにしてぇ。
「さぁとき……?」
「……銃兎」
 ちゅ、と指先にキスをする。こんなこと今までしたことないから、銃兎も不思議そうにしている。
「なんで……?」
「なぁ銃兎。好きなんだ」
 ずるいだろうが俺は勝負をかけることにした。こんなに酔ってるし明日になったら忘れてんな、銃兎は。でもよ、言ったことには違いねぇし。
「え……」
「銃兎が好きだ。俺のモンにしてぇ。銃兎がいなくなったら嫌だ」
「すき……? じゅーとが……」
「銃兎が好き。ずっと俺の横にいてくれよ」
 ずっと離してやらねぇから、とはまだ言わないでおく。
「…俺が……俺は、さぁときを守るって、決めてるから。それまで…?」
「……そうだなァ。そん時は一緒に死のうぜ」
「嫌だ……! さぁときは、おれが守るから……さぁときは、しなないんだ。俺が、もし…しんでも、さぁときが俺の代わりに、おれの願い叶えて、しあわせにくらすんだ」
「んなこと考えてくれてたのか、じゅーと」
「ん……しあわせになってほしい…」
 銃兎がいねぇと俺は幸せになんてなれねぇよ、守られるだけなんて真っ平だ、お前は俺様が守るし地獄までずっと一緒だからな────渦巻いて煮えてる本音は隠して、銃兎が俺のこと考えてくれて嬉しいぜって笑ってやる。可愛げのある年下の顔をする。銃兎が俺様のツラに弱いのは分かってるんだ。
「ありがとな、銃兎」
「うん。おれ、さぁときの為なら、なんでもしてやる」
「だったら銃兎が俺の恋人になってくれよ」
「へ……? そ、それは……でも……」
「サマトキサマに幸せになってもらいてぇんだろ? 俺はそんな先まで待てねぇよ……今がいい。じゅーとが、今すぐ俺様のこと幸せにしてくれねぇ?」
「……おれが……」
「じゅーとが。出来ねぇか……? ああ、銃兎は俺様のこと好きじゃねぇか……そうだよな、俺ら仲間だしよ……男を好きになるなんて変だよな」
「そ、そんなことない……! だって、さぁときはスゲェきれいだし、カッコいいし、かわいくて……いい匂いするし、他のヤツとは違うだろ……」
「へぇ……じゃ、俺様のこと好きになってくれねぇ?」
 きょとんとした顔で俺の問いかけを聞いていた銃兎は、やがて、おかしそうにクスクス笑う。

「くくくっ、ふふ、……さぁとき、んふふ、へんなこと言うんだな……」
「あ? おい笑うんじゃねーよ、俺様は真剣だ!」
「だって俺、ずっと前から好きなんだ。さぁときのこと」
「……は」
「お願いなんて、いらないよ。さぁときのこと好きだから。だけど、さぁときは……おれじゃない方がいい」
「……ンだと……?」
「さぁときを、おれじゃ、うまくしあわせにできないから」
「……何でそう思うんだよ」
「とうさんも、かあさんも、せんぱいも、俺が大事に思うひとは、みんないなくなったから。しんで、もう会えない。いなくなるのは、悲しいだろ……さぁときのこと、もっと特別になったら、ダメなんだ……」
「特別になりてぇ。ならせろよ。銃兎が好きだし、お前と一緒じゃないと幸せになんかなれねぇ」
「イヤだ、好きにならないで、さぁときまで、俺といて、いなくなったら嫌だ……!」
「銃兎! 俺を見ろ。俺様を他の奴と一緒にすんな!」
「さま、とき?」
「俺様は銃兎と居ても絶対にいなくならねぇ。今だってちゃんと生きてんだろ?」
「………」
「俺がずっとお前といてやる。他の奴みてぇにお前を置いていかねぇし、寂しい思いなんてさせねぇよ。俺だけは銃兎を裏切らねぇって約束してやる」
「……ほんと、か?」
「おう。だから、俺様を信じろ」
 銃兎の潤みきった目から涙が伝って落ちるのを指で拭ってまっすぐ告げる。途端に、ぱああっと顔を輝かせた。人を見下して小馬鹿にするような、奴隷相手やラップバトルの時に見せる笑い方じゃない。すごく嬉しくて幸せ、みてぇな満面の笑みがキラキラで眩しい。メチャクチャ可愛い。誰にもやらねぇしどこにも行かせねぇ。ずっと俺が愛す。俺が幸せにしてやるからな。
「うれしい………さぁとき。おれも、さぁときが大好きだ……!」
 涙ぐんだままの銃兎が、飛びこむみたいに、ぎゅっと勢いよく抱きついてくる。加減ナシの強さがそのまま銃兎からの好きに直結してるんだと思うと堪らなくなって、俺も銃兎の背中にしっかり腕を回した。ゼロ距離でぴったりくっつく。銃兎がクスン、グスン、グスッと鼻を鳴らすくぐもった音がするから、宥めるようにそのままでいてやる。体温が混じり合って馴染むのに任せた。
「さま、……っさまとき、……、おれ……、ッ」
「ああ、銃兎……俺も。すげぇ嬉しいぜ」
「……さまとき、も?」
「当然だろ。俺ら今から付き合おうな」
「ん、つきあう……!」
「ウサちゃんの恋人は俺だけ。分かるよな? 俺も銃兎だけにするし、銃兎を独りにさせねぇから」
「……ありがとう、さぁとき。…おれのために、ごめんな……」
 嬉しそうだったウサちゃんの表情が翳る。大好きな左馬刻様の幸せな未来が、入間銃兎を選んだから失くなったんだと、そう言いたげに。
「……バーカ。俺は銃兎の為なら何でもしてやるよ」
 殊更に甘ったるく囁いた言葉に偽りはない。どこまでも本気だ。
「さぁとき……」
「ウサちゃん可愛いからキスしてぇ。してい?」
「ん、いいよ……ふ、んん、ぅ」
「じゅーと、口。力抜いて開けるんだよ……ベロも寄越せ」
「ぁ、……? ~~ッ! んぁ、ふぅ、…ンっぅう」
 銃兎、お前そんな素直に口開けてくれんの。ベロ出してくんのもエロすぎる。たまんねぇ。これ全部俺が舐めて啜って味わっていいんだよな。ウサちゃんはこれからずーっと俺様の恋人になるんだから。
 

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 銃兎が望んだのは告白とキスのやり直しだけだった。「左馬刻と付き合うのをやめたい」とか言われなかったからホッとした。俺だって出来るならやりたくねぇしな。身体で分からせるとか、ウサギが逃げ出さねぇための躾とか。繋ぐための首輪と鎖を買ったりしたら流石に理鶯にも良い顔されねぇだろうしよ。
 大事にしたくてまだ抱いてもねぇんだ。初めてのセックスで慣れてねぇウサちゃんに怖くて痛い思いさせるなんて可哀想だし、優しい彼氏のままでいさせてくれて良かった。やっぱ銃兎ってすげぇわ。俺のこと何でも分かってくれてんじゃねぇのかって、よく思う。
 俺も好き、と正解を言ってくれた愛しいウサちゃんを逃さないように、壊さないように、腕の中へ抱きしめて閉じ込める。……完璧だ。これで、告白のやり直しもできたな。晴れて本当に恋人同士になれたわけだ。もう銃兎は俺のモン。死ぬまで、いや死んで地獄に行ってもずっと手放さねぇから銃兎も俺から離れようなんて気は起こすなよ。俺を幸せにできるのはお前だけなんだからよ。
 優しく唇を重ねて、触れるだけのキスをした。頭の切れるウサちゃんは『ファーストキスのやり直し』なんだと理解したらしい。嬉しそうに目を細めて抱きついてくるから、最初の夜を思い出した。泣いてた銃兎も、甘えてキスの続きをねだる今の銃兎も、どっちも最高に可愛い。
 ────初めてのキスから我慢できずに舌同士ぬるぬる絡めまくったし、溢れて零れそうになったウサちゃんの唾液は勿体ねぇから全部啜って味わったけど、教えない方がいいよな。これは騙してるわけじゃねぇ、情報の取捨選択だろ。