余談の日々へ続く

「………あ? もっかい言えや」
『いまからお前んとこ行く。抱いてくれ』
 碧棺左馬刻は携帯端末に表示された時刻を二度見、いや何度も繰り返し確認した。AM04:16。電話の相手は一方的に告げると通話を切断した。画面の光が眩しくて不快だ。ブルーライトの害、ではないだろう。寝てるところを起こされて、これが可愛い可愛いチームメイト兼恋人の兎でなかったら朝焼けの美しいヨコハマ湾が汚れていたところだ。
 銃兎に何かあったのか?
 真っ先に脳裏を過ぎたのは、そんな懸念だった。何か悪い違法マイクにでもアテられたのではないかと。
 しかし心配は杞憂に終わった。起こされたばかりの左馬刻が身支度を終える頃には銃兎が本当にやって来たのである。
「左馬刻、わるい、急に電話して」
「お前マジで意味分かんねぇからな。この俺様が」
「うん。ありがとう。すきだ」
 玄関先でぎゅっとされてしまえば、もう左馬刻にはこれ以上の文句が思いつかなくなってしまった。俺様も好きだぜ、くらいしか返せる言葉が思いつかなかったから馬鹿らしくて、無言のまま銃兎を抱きしめ返す。なんやかんやで会えていなかったから、久しぶりの銃兎だ。コイツ仕事明けのお疲れウサちゃんだな、と察したのは、いつも吸ってる煙草の匂いが平生よりも随分と濃く染み付いていたから。
 とりあえず銃兎をバスルームに入れる。準備しなくていいからなと言っておいたが、果たしてどこまで通じているのか分からない。うんありがとうすきだ、の辺りから────つまり左馬刻の家に来た時から銃兎は既にふにゃふにゃになっていて、ぼんやりしていたから。
 マンションから見えるみなとみらいの空は朝焼けの様相だ。上層階のここからだと、空がより近い。紺碧に染められていた空は東の方から、うっすらと色が変わってきた。朝焼けの色だ。グラデーションのかかった空に、少しだけ浮いている綿のような薄雲。その雲にも、朝焼けの朱色が映りこんでいる。明るみが潮のように満ちゆく爽やかな朝だろうが銃兎を抱くのは一向に構わないし、むしろ嬉しい。だがそれは、今どうしても求めていることではないのだ。つーかそれどころじゃねぇ。
 果たしてバスルームから出てきた銃兎を見て、左馬刻は盛大に顔を顰めた。
「……おいコラ銃兎。てめぇ服は?」
「いらない」
「いるわ!」
 左馬刻とえっちするから服はいらないだろ、と何の疑問も持たずに口にする銃兎。
 用意した着替えは上下あったはずなのに下着しか履いてこなかったから、左馬刻は着せるつもりで脱衣場に置いてやったスウェットを早急に持ってきた。ついでにスーツも拾ってクロゼットに掛けておいてやった。ぐしゃぐしゃのまま放置して皺になると困るだろう。シャツは後で洗濯してアイロンをかけてやれば済む。
 ゆったりした肌触りの良いスウェットを着せてやれば案の定「なんで服着せるんだ」と不満の声が上がったから「俺様は脱がせるとこからやりてぇんだわ」とテキトーにそれっぽいことを言っておく。ソファに座らせてドライヤーで髪も乾かしてやって、至れり尽くせりとはこのことだろう。銃兎からお揃いのシャンプーとボディーソープの香りがして嬉しい。温もりの残る髪にサラサラと指を通しながら、気になっていたことを尋ねる。
「じゅーと、腹は? 減ってねぇのか?」
「……そういえば減ったかもしれない。最後にメシ食ったの夕方だった」
「塩むすびかチーズハムサンド」
「チーズハムサンド。……でも、それは後でいい。左馬刻だって俺としたかったから起きて支度してくれたんだろ」
「いや、それもまぁ、なくもねぇけどよ」
「じゃあする。だって俺にはお前にしてやれることが全然ないし、セックスで左馬刻のこと気持ちよくしてお礼しねぇと」
「あ……? ンだよそれ」
「? ここしばらくずっと、あんまり会えなかったし……でも左馬刻はブタ箱にぶち込まれずに大人しく待ってくれただろ。マメに連絡もくれて」
「そりゃそうだろ」
「だから俺も、左馬刻に満足してもらわねぇと。俺も会いたかったし、左馬刻はスッキリできるだろ」
「……お前疲れてんだろうが。久々に会って、じゃあヤらせろよってどんな彼氏だ。彼氏じゃねーだろそんなん」
「左馬刻が俺の彼氏ってだけで奇跡だしすげぇもん。俺はそれでも良いから、」
「あーあーもうやめろや。珍しくワガママ言ってくれてんのかと思ったらそういうことかよ……分かったから座って待ってろ」
「左馬刻……?」
「コーヒーは後でな。俺がウサちゃん抱くのも後で。とりあえず食ってからにしようぜ」
「……分かった」
 素直にソファで待っている銃兎の前にサンドイッチを置いて、食べるのを見守る。レタスとハムとチーズにマヨネーズ。簡易的なものだが小腹を満たすには充分だろう。うまかった、ありがとうと銃兎が言ったから頬にキスして、ベッド行くぞ、と囁いた。
 寝室で眼鏡を丁寧に外して、ヘッドボードに置く。
 しかし押し倒されるでもなく二人仲良くベッドに寝転がって人心地ついてしまったので、銃兎は不思議そうな顔をした。けれど、左馬刻が抱きしめてやると大人しく腕の中に収まることにしたらしい。
「銃兎、忙しかったんだろ」
「まぁ、そうだな……体力的にキツいスケジュールだったし、精神的にも……署内ではずっと気を張ってて……ちょっとしたことにすげー過敏になっちまったりした。だけどお前から連絡くると、お前のこと思い出して、癒されたから、良かった」
「……おう」
「ふふ、なんで照れてんだよ」
「うっせぇな、いいだろほっとけや……」
「左馬刻かわいいよな。その上すげぇカッコいいし優しくて、顔も美術品みてぇに良くて、俺には」
「勿体ねぇとか釣り合わねぇとか言ったら罰金100万な」
「……ヤクザだから、マジに聞こえるな」
「マジだわ。言っとくがテメェのこと手離す気なんざねぇからな、俺は」
「……セックスは?」
「今ソレかよ。んだよそんなにヤりてぇの?」
「うん。左馬刻のこと気持ちよくする」
「……そーだなぁ。何してもらうか……」
「…………」
「舐め合いっこでもするか? じゅーとがさっきみたいに服脱いで裸になって、チンコ舐めんの。今度はパンツも無しな」
「………っ」
「ちゃんと言うこと聞くんだぜ? 俺様の顔に尻向けて跨ってよぉ……左馬刻ここ舐めてって」
「そ、そんなの、すげぇ恥ずかしい……! おれが、左馬刻のを舐めるだけでいいだろ……」
「銃兎が上に乗ってくんねーとやだ。舐め合いっこすんだから、銃兎はお尻突き出してくんねーとダメだろ?」
「……うう、だって、そんなの今、できない……今したら、きっと、支えてらんねぇ」
「ウサちゃんお疲れだもんな。シャワー浴びて腹も満たして、ベッドん中はあったけぇし」
「……だめだ、左馬刻……俺、せっくすするのに……早く、服脱がして……さまとき……」
「………じゅーと、手も足もあったかくなってきたな。脱いだら風邪ひいちまうだろ」
「ん……」
「ほら、目ぇ閉じろ」
「……さま、とき……」
「寝るまで撫でてやっから」
「…………」
 すぅ、すぅ、と規則正しい寝息に変わったのはすぐだった。しばらく髪を撫でてやってから、少し痩せて心許なくなったように思える背中から腰までのラインを優しく撫でて、左馬刻も目を閉じた。コーヒーは、銃兎が目を覚ましたら淹れてやろう。安心して寝入っている銃兎は、警察署で張り巡らせていただろう緊張も警戒もすっかり解れていて、限界知らずの愛しさが込み上げる。
────コイツがこんなに可愛いのは俺の前だけ。俺しか知らねぇ銃兎。会いたいって言ってたけどよ、結局は俺のために朝4時に無理して来やがったんだ。徹夜明けだろ、バカなやつ。
 お前がいればそれでいい、とかそんな簡単な答えに銃兎が気づくのはもう少し先かもしれないが、今は溢れんばかりの好きで満たして、たっぷり愛してやればいい。
……それはそれとして全裸の銃兎が上に乗ってくれるのは最高にエロくて唆られるだろうから、起きたらやってもらおうと思う。
 
 

 
 
「銃兎ぉ、ちゃんと乗っからねぇとダメだろ。誰が俺の舐めるだけにしろって?」
「だって……」
「着てるモン全部脱げたんだから跨ってみろよ。裸んぼのウサちゃんになった意味ねーだろ」
「うぁっ、」
 逃げ腰を引き寄せて強引に上に跨らせた。ベッドヘッドに背をもたれるようにして座っている左馬刻の上に跨るせいで、銃兎は身体を支えなくてはならない。さっきはエッチすると駄々捏ねしていたが、すっきり目が覚めたら今は恥ずかしさがあるらしい。顔を赤くして俯くウサギの尾骨の尖りを舐めて、ちゅっと音を立てるキスをして、毎回律儀に緊張する神経質な性格を宥めてやる。
「ん……銃兎、いい子だな……」
 寝る前シャワーを浴びた時に解していたのか、後孔は普段イチから始める時よりも柔らかくなっている。ピンクの肉縁を指でなぞってやれば、びくりと身体が震えた。
「ぁ……っ、」
 潤滑剤の助けを得て、ぬるりと指を捻じ込んでやる。内部は熱くうねっていた。粘膜を傷つけないよう優しく掻き混ぜると、小ぶりの尻が跳ねてイイところを掠めたのが分かる。くぷくぷと浅いところで中指を動かして、銃兎のナカがひくひく締まるところを指の腹で押して可愛がる。しっとり汗ばんできた太腿が震えて、さまとき、と訴える声には甘さが溶け出している。
「だめ……そこダメ……! さぁときの、気持ちよくできない……」
「ンなこと気にしなくていーんだよ」
「あ、ぁあ、だって、さまとき……」
「じゅーとの好きなとこ俺が撫でてやっから……イくとこ見せろ」
「……っ!」
 ぴゅっと少し薄めの精液が飛んで、左馬刻の下腹部まで伝う。喉仏を晒して仰け反った背中の窪みが綺麗だ。
「はぁ、……っ、んん、はぁ……」
「ナカひくひくしてんな。とろとろ白いの出てんぞ」
「やぁ、んっ! ぁあっ、」
「ほら、いい子だからグズんねーの」
 痙攣するように震えるナカの刺激を少し強めて前立腺を押し潰してやると、薄くなった精液がとろとろ零れる。羞恥よりも快感が勝ったのか、もう抗わずされるがままに腰が前後に揺れていて愛らしい。熱く蕩けた粘膜は健気にもきゅっきゅっと締まり続けていて、それは甘えられているようでもあった。
「じゅーとのナカ締め付けすげぇ……」
「……っぁ……んん、もっと……」
 すり、と腰を押し付ける動きが無意識なのだろうがいやらしい。左馬刻の勃ち上がっている剛直にキスをして、垂れているカウパー汁をちろちろと舐めている。興奮で硬くなったソレがぴたんと頬を弾く感触にすら愛しいと言わんばかり。可愛いウサちゃんだなと思う。苛めるように腫れた前立腺を二本の指で押し潰したら、甲高い嬌声を上げてびゅくっと少量の精液が飛んだ。びくびく痙攣する白い下腹部。精液が零れる先端の穴を、先ほど銃兎の舌がしていたようにくちゅくちゅ掻き混ぜる。
「ぁっ、あっ、さま、どっちも……! ……もぅだめ、しお、でちゃうから……!」
「どーせ今日はもう離さねぇんだ。出していいぜ」
 内腿を優しく摩ってやればそれにすら感じて声を上げて身を捩る。潮は透明だが、香りとしては小水に似ていると思う。銃兎には言わないが。イったばかりの亀頭をずりずりと掌で刺激する。腰を押さえつけて尿道口をほじるように指先を擦りつけた。
「ゃ、っめ……! もれる、もれる、からぁ……!」
 切羽詰まった声と同時。ぷしゅっ、と潮が吹き出る。腰が何度も震えて、透明で生温いものが左馬刻の腹にも零れる。恥ずかしい気持ちが残っているようで、銃兎の瞳は生理的な涙の膜が張った。今にも零れ落ちそうだ。
「やだ……、うう、左馬刻のこと汚した……」
「ん? 汚くねぇよ。銃兎がすげぇかわいいから止めらンねーの……泣くなよ、ん、頑張ったな」
 ついに溢れた涙。ぷるぷる震えてしゃくり上げる可愛いウサギを抱きしめてあやすのはいつものことだ。もう跨らせるのは充分だろう。後ろから被さるように抱きしめた。見えないのを良いことにこっそりと銃兎の匂いを嗅ぐ。清潔な匂いはボディーソープだろうけれど、銃兎の体温と混じり合って好ましく甘い匂いがするのだ。
「さまとき、……その、萎えてないか……?」
「……バーカ」
「んっ、」
 萎えるどころか完勃ちしているチンポをわざと太ももに当てるようにしてやる。思わず視線をやると垂れた先走りでぬらぬら光っているのがよく見えたのか、銃兎は照れたような、困ったような笑みを漏らす。触っていないのにしっかり角度を持って反り返っているソレを双丘の谷間に擦りつけると、鼻にかかった声を漏らした。両手で尻を開かせてひくつくソコに亀頭の先だけ埋めて、まだ1ミリも入らない状態でぬぽぬぽと浅く抜き差しを繰り返す。それだけできゅうっと襞が締まって感じ入った嬌声が上がった。
「ぁ……っふ、ぁぁ……」
「……ゆっくりするからな」
「ん……っ、いれて、さまとき……」
 請われるまま一気に貫いてやるのもいいけれど、ゆっくり優しく抱いてやりたい気分だからこの体勢でちょうどいいだろう。ちゅっちゅと唇を合わせて舌先を絡める。甘イキを繰り返し続けているのか尻たぶがびくびく痙攣していた。ぴったりくっつくと多幸感があった。深く息を吐いてナカに入る衝撃に耐えようとしているから、急かすことはせず耳殻に唇を当てて待った。銃兎が身を委ねてくれる、その信頼が愛しい。
「さぁとき……、好きだ……」
「俺も。……あぁー……銃兎ぉ、めちゃくちゃかわい……」
 ゆっくり、腰を進める。ナカに挿入ってこられた銃兎は、蕩けた声を漏らして身体をしならせた。きゅんと締まった内側は熱くてふわふわで気持ち良い。汗ばんだ素肌同士を合わせる多幸感に身体が痺れるようだ。
「はぁ……っ、ぜんぶ入ったぜ……苦しくねぇか?」
「ん、うん、くるしくない……きもちい……」
「じゅーと、」
「お前の、顔が見たい」
 後ろからじゃ寂しいと甘えたウサギのリクエストに応えて、背中をベッドに付けて向き合える体勢にしてやる。とろとろに蕩けた恋人の瞳の中に自分が映っている。濡れた唇同士をくっつけて、たくさん口付けを交わした。これはリクエストではないが左馬刻自身がそうしたかったので。頭を撫でてキスをしている最中も、銃兎のナカは迎え入れてくれていて、左馬刻の形を確かめるみたいに絡みついてくるから堪らない。腰を揺らしてやれば抱き合った身体が跳ねる。
「ぁあっ、さまとき、ゆっくぃ……!」
「ん、ゆっくりな……こっちでもキスしようぜ」
 優しく舌を絡め合って深いキスをしたまま、ぐっと先程より深くなるように繋がる。ちゅ、ちゅと繰り返し吸い付いてくるのはキスも銃兎のナカも一緒だ。甘ったるいキスと、緩慢なセックスと、お互いの存在に溺れている充足感に頭の芯が痺れるようだ。ぬぷぬぷと粘ついた音が響いている。ひくつく肉壁を引っ掛けるようにカリでゆっくり掻き混ぜれば、声にならない嬌声と共に強くナカが締まった。きゅっ、きゅう……と締め付けてくる粘膜に逆らうように腰を回して奥を優しく捏ね回すと、しがみついてくる腕に力が籠る。もう何度も甘イキを繰り返しているようだ。
 乱れた前髪は汗で張り付いて、いつもの鋭さを失った翡翠の瞳にはピンクの色彩がとろとろ溶けて、涙に濡れている。激しく突きまくってイかせるのも燃えるが、じっくり愛してやるのもいい。早朝4時から会いにきてくれた銃兎を、不意に思い出した。
『俺にはお前にしてやれることが全然ないし』
『左馬刻に満足してもらわねぇと。俺も会いたかったし、左馬刻はスッキリできるだろ』
『左馬刻が俺の彼氏ってだけで奇跡だしすげぇもん』
 銃兎は眩しそうに言っていたが、全く分かっていない。銃兎は、銃兎が思っているよりもずっと深く、底なんてないくらい愛されていることを、いい加減そろそろ自覚してもらいたいところである。

「……さまとき……ぁ、…すきだ…」
「……っ」
 吐息交じりの甘い声。左馬刻しか見えないとばかりに愛おしそうに見つめられたらたまらない気持ちになって、激しく穿ちたい衝動を抑えて優しい抽挿を繰り返す。ゆっくりしたストロークを繰り返されて、むずむずと感覚が昂るのだろう。堪えるように震える姿が可愛い。
「っぁ、あ……! きもちい……もっと、ッ……」
 とろとろの甘い声が耳元で喘ぐ。上擦って掠れている喘ぎ声は腰にクる。
「……じゅーと、さっき上手くご奉仕できなかったんだから、今がんばれるよな?」
「うん……」
 欲に濡れた瞳を嬉しそうに蕩けさせて、いやらしく腰を揺する仕草もたまらない。甘イキの波を繰り返すナカの動きに促されるように抽挿すれば、もっとしてとばかりに内襞が絡みついてくる。一番奥に向かうように優しく捏ね回すと甘い声が零れる。ゆっくりとした動きに快感を拾い続ける身体を抱き寄せる。身体の奥深くまで入り込んだまま緩く捏ねるように腰を回されると堪らないのか、戦慄くように何度も身体が跳ねた。甘く苛むばかりの快楽に身悶えてシーツに縋る手を捕まえて指を絡ませた。一番奥を捏ねるように腰を回しながら、とろとろとカウパー汁を零している屹立も可愛がってやる。
「ぁぁ……っ、ふぁ……! きもちいいの、だめ……!」
「甘イキ止まんねーの?」
「んっ、ずっときもちいからぁ……」
 とろ火で煮詰められるように熱が溜まっていくのだろう。普段は涼しげな表情をしている翡翠の瞳はどろりと蕩けて可愛らしい色に変化している。薄い胸が大きく上下して絶頂感に震えているのが分かる。宥めるように汗ばんだ髪を撫でた。
「ウサちゃんのちんちん触ってもらえなくて寂しそうだな」
「ぁ……!? ひぃ、んん、っ……」
 薄い腹につきそうなほど反り返った竿もひくひく震えるのが愛らしい。輪にした指で優しく擦り上げると切ない声を漏らすからつい何度も擦り上げてしまう。先っぽの穴を指先でくりくり弄ってやると気持ちよさそうな甘い声が響いた。先走りのぬめりを借りてゆっくり上下に動かしてやると、それだけで限界のようだ。
「さぁとき、ゃだあ……! もう……!」
「ウサちゃんきもちぃきもちぃ、そのままイっちまおうぜ」
「んっ、ぁっ!……さま、も、いく、イクぅ……!」
 涙を零す瞳で何度も頷いて、素直に声を上げる恋人が可愛い。興奮で荒くなりそうな息を努めて静かに吐き出してゆっくり腰を揺する。蠢く内側を押し広げながらゆっくりと引いて浅いところを刺激してやると内襞が嬉しそうにきゅんきゅん締め付けてくるから堪らない。亀頭の一番太いところをナカに潜り込ませてから少し戻って腹側を押し上げるように腰を揺らすと甘い悲鳴が上がった。
「ひゃ、ぁう! んっぁァ……っ、ぁー……!」
 びゅくびゅくと震えて射精する屹立が可愛い。のけぞった喉仏を舐めて、首筋を何度も吸ってやるとそれだけでも感じるのだろう。痕を残すなと小言を言うくせに、本当は嬉しいのを知っているから、後で酷く変色しない程度に愛してやることにしている。根元から搾り取るように手コキで擦ってやれば、精液の残滓がとろとろ溢れてくる。亀頭の先っぽを人差し指と中指で撫で回す。裏側を指で支えるように捕まえて逃げられないようにして、尿道口をこりこり、ぬるぬる、繰り返し擦る。
「さまと……き、ぃ、そこ、くちゅくちゅすんな……!」
「銃兎がイってぐちゃぐちゃになんのかわいーから好き」
「だめ、だめっ、ぐりぐりしたら…またでちゃうっ……!」
 どろどろ溢れる精液を塗り付けるように嬲り、その間も下から優しく突き上げてやれば極まった後の快楽にナカがぐねぐねとうねって締め付けてくるから堪らない。ぷしゅっと一度潮を噴いて仰け反る身体。
「銃兎かわいい。お漏らしもっと見せてくれよ」
 すりすりと優しく擦ってやりながら褒めると、何度もぷしゅっと透明な液体を噴き上げさせた。
「いい子」
 ナカはずっとぎゅうぎゅう締まっているし、腹もびくびく痙攣している。健気で可愛らしい。きゅうきゅうナカが締まって気持ちいい。甘い締め付けに射精感を堪えてゆっくりストロークを繰り返す。
「ひぅ、さまときぃ……ばか、きもちいの止まんねぇ……」
 耳を真っ赤にして、もどかしそうに腰を揺らしてぷしゅぷしゅ溢れてしまう潮の残滓に震える。びくびく痙攣しながら押し寄せる快楽を持て余すウサギは、左馬刻だけに助けを求めている。求愛してくれているのと同じだと思った。
「かわいい。スゲェ好き、銃兎」
「俺、も……さまときだけ……」
 可愛いことばっかり言うから興奮して仕方ない。思いっきり揺さぶって抱き潰したい衝動に駆られるが、連勤明けの銃兎にあまり乱暴はしたくない。柔らかい粘膜を執拗に捏ね回して愛でる。
「ゃぁあっ! ……んぁぁあ~っ……!」
 甘く蕩けた悲鳴が上がるのに加虐心が煽られる。もっともっと、愛しい恋人が可愛いことを口にするのを聞きたい。
「さまときっ……ぁん、そこぉ……ッ」
 蕩けた表情と甘えた声で呼ばれる自分の名前は特別な響きだ。じゅぷじゅぷといやらしい水音を立てながら繰り返される抽挿に堪えられなくなったのか、切羽詰まった声が上がる。奥深くまで熱を埋め込んで腰を押し付けたまま身体を揺すってやると甘くイったようだ。
「ッ~……、やぁっ……あ、ぁ……!」
「すげぇナカびくびくしてる。いっぱい気持ちよくなろうな」
 よしよしと頭を撫でてやって何度も口付ける。耳も真っ赤でかわいそうなくらい感じているのがよく分かる。もう限界なのだろうが、震える腕を伸ばされて縋られては振りほどくわけにはいかないし、可愛くてたまらないからついつい甘えさせてしまう。ぎゅっとしがみついてくる仕草に胸の奥がむず痒くなるようだ。優しく腰を揺するたびに可愛い声を上げるものだから止められないし止めたくない。ぁん、と上がる甘えた声が心地良い。
 可愛くて仕方ないからたくさんキスしてやると幸せそうにバイカラーの瞳を細めるから堪らない。俺様の恋人は世界一可愛い。誰にも見せたくない。ずっと独り占めしたいくらい愛おしいと感じる心を今の余裕のない状態でうまく伝えることができないから歯痒いけれど、言葉がなくても好きは伝わっているようで安心した。深く口付けて、発情して火照った舌同士を絡み合わせる。甘えるように舌を差し出してくるのが可愛い。擦れ合わせる粘膜も締め付けてくるナカも、全部愛しいし気持ち良い。もっともっと可愛がってとろとろにしてやりたいので、わざと意地悪を装って胸の先端を摘まみ上げた。
「やっ、そこッ……ひっぱっちゃ、やだぁ……!」
 つんと尖った胸の先が美味しそうだ。指で軽く摘まみ上げるだけでぷっくりして、ほんのり赤く色付くまで敏感になっている。少し引っ張るようにしてやると甘く声を上げてナカもきゅんっと締まった。
「あ? 好きなくせに嘘つくんじゃねぇよ」
「ふぁ、ひんッ! ……ぁ、ぁっ、ぁん……」
 耳朶に舌を這わせて甘く齧ると背中をしならせて感じ入っている。ゆっくりと奥を捏ね回す動きに合わせて嬌声が零れるのを舐めながら聞くのは楽しいし興奮する。快感に身体をくねらせている姿も可愛くてたまらない。ぷっくり膨れた胸の先端をピンピン弾くと反応が良くなるのも可愛らしい。
「ひぁ、ぁ……ぁぁっ……」
 いやいやとかぶりを振って逃げようとするけれど許すはずがない。きゅーっと乳首を引っ張ったり優しく転がしたりして可愛がると、気持ち良さそうな声が上がるたびにナカも締め付けてくるから堪らなく気持ち良い。
硬くなった胸の先端をくりくり捏ねたり、側面を撫でたり。敏感な乳頭をくにくに弄るたびに身体が跳ねて可愛い。こりっこりになった先端をぴんっと指で弾かれるのも好きなのだ。
「ひぃ、ッ」
 強めに虐めたあとに指の腹で優しく擦ってやるとナカがきゅんきゅん締め付けてくる。耳を舐めながら何度も奥を突いてやると熱い粘膜が甘えるみたいに絡みついて、愛撫を悦んでいる。
「乳首こねくり回されて俺のちんぽしゃぶってきもちよくなってるウサちゃん可愛すぎんだろ」
「ゃだ、さまときっ……はずかしぃ……!」
 恥ずかしいことされるのが好きなんだろ?と意地悪を言うときゅんっとうねって絡みついてくるナカは快楽堕ちして素直になっている。奥をこつこつノックするみたいに小刻みに突いてやると唇を震わせて高い声で鳴くのが可愛い。もっといっぱい可愛がってやろうと乳首を捏ね回してやると甘い声で鳴きながらまたイったらしい。甘イキを繰り返して締まるナカが気持ち良くて仕方ない。
「も、ぁ……あ! だめっ、だめぇ……!」
「乳首、自分で弄ってみろよ」
「………~~っ」
 恥ずかしいことを命令されるとナカがきゅんっと締まる。自分で乳首を摘まむのは抵抗があるらしいが、繋がったままの粘膜がヒクヒクうねっているので嫌なわけではないだろう。ウサちゃんは俺に甘いから、俺様の言うことをちゃんと聞くはずだ────快楽堕ちしている今なら出来るかもしれないと思って耳元で「できんだろ」と囁いてやると、真っ赤な顔で小さく頷いた。恥ずかしそうにしながらも震える指でそっと自分の乳首に触れていく様を見ているだけで興奮するしかわいい。
「銃兎、すげぇエロい……」
「……お前にしか、見せないから」
「そうじゃなかったら相手殺してるわ」
 普段あれだけ澄ましている銃兎が、本当はこんなにえっちなのを隠している。左馬刻にだけ見せてくれている。そう思うと堪らない。ピンク色に勃起した乳首を摘んで、捏ね回している指先は、左馬刻に見せつけているみたいだった。胸を突き出して指先でくりくり転がして身悶えている。
「さまとき、きもちい……っ」
「ん、気持ちよくなろうな」
 腰を動かすときゅうっと絡みつく粘膜が気持ちいい。奥を捏ね回すように腰を回してやると、堪らない性感に浸されて吐息が乱れる。
「はぁっ、ぁぅ……んぅ……」
「ゆっくり撫でてやるのも好きだろ」
 優しく声をかけながら、こちらも肉壁をゆっくりしたピストンで可愛がってやる。自分で胸を弄る指は左馬刻の言葉に反応して、指の腹で乳首をすりすり撫でる。
「ぁ、ぁん……すきぃ……」
「乳首よしよしされるの大好きなウサちゃんだもんな」
「ん、んっ……きもちぃ……ふぁぁ」
 乳首をすりすり撫でるだけでは物足りず、くにくに押し込むようにしている。煽るように、じゅるじゅる音を立てて柔らかな耳朶をしゃぶってやった。
「もっと摘まんでやれよ」
「ぁぁ、ぁ、んっ……」
 命令されるのも興奮するのか、親指と人差し指できゅっと乳首を摘まむ。指の腹で優しく転がして、切なげに眉を寄せる。
「ぅ、うぅ~……左馬刻、っ」
 ぴんっと先端を指で弾いて、さっき左馬刻にされたようにわざと乳首を苛めている。やらしく腰が揺れて粘膜がきゅんきゅん絡みついてくる。銃兎の物言いたげな、訴えてくるような目つきにゾクゾクした。
「ん? なんだよ」
 望んでいることなんて手に取るみたいに分かったけれど、白々しく耳元で囁く。甘い吐息を零して、身を捩った。
「言わねーとしてやらねぇぞ」
「……もう、我慢できない……」
「ン?」
「さまときので、一番きもちいいの、してほしい……っ」
 甘くとろけた声と表情で素直におねだりを口にする銃兎。お望み通り、しっかりと抱き締めてぐちゅぐちゅ突き上げてやる。泣き混じりの嬌声。快楽を逃せない銃兎が可愛くて堪らない。だらしなく開いた口から零れる唾液を舐め取ってやる。
 くちゅくちゅ掻き混ぜるように腰を動かしてやるとびくんびくんと身体を跳ねさせて感じているのが愛しい。激しい絶頂に暴れる細い腰を押さえつけて何度も抽挿を繰り返す。「ひぁっ、あぁあ! でる……!」と蕩けた声を上げるが、もうしばらくはこの快楽の波から下ろしてやれないだろう。突き上げるたびにぷしゅっと潮を噴いて甘くイく身体を抱き締めて揺さぶる。奥深くまで貫いたままぐりぐり腰を回してやると腰を揺らして悦んでくれるのが可愛い。ぐずぐずにとろけたナカ。銃兎の身体は左馬刻に貫かれて、気持ちよくなっているのだ。
 もっともっと可愛がりたい。たくさん気持ちよくしてやりたくなる。左馬刻は銃兎の細い腰を掴むと、抽挿を繰り返した。肌同士がぶつかり合う乾いた音。結合部から漏れるのは濡れた音。
「ん……っ、んぅ、ぁぁ……!」
 深めにぐぽぐぽされると堪らないのか声を詰まらせて感じているのが可愛い。内側で暴れている熱に押し上げられて、薄い腹が膨らむ様子がいやらしい。
「ぁー……、はは、あっちィ……」
 低く掠れた声で呟けば、きゅうきゅうと締めつけられる。堪らない。声も表情も最高だ。抱き締めながら銃兎の奥の狭いところまで無理矢理押し入って揺さぶってやれば、唇をわななかせて喜んでいるのが可愛い。甘ったるい嬌声を上げながらぷしゅっと潮を噴いている姿を見下ろしているだけで興奮するし腰にもクるものがある。俺様の恋人は最高だ。
 快楽に夢中になっている恋人を余すことなく眺めながら、左馬刻は何度も揺さぶりをかけるように奥を突いた。快楽の海に堕ちた恋人はぐずって、左馬刻の名前を呼んで甘イキを繰り返しているようだ。絶頂して激しく蠕動する熱い粘膜。前立腺をごりごりと抉って奥に進めば、もっとしてとばかりにうねるいやらしい銃兎のナカは、すっかり大好きな恋人仕様といったところ。
「ぁッ、ぁッ! ……ゃっ、んん……」
「よかったなぁ♡ ウサちゃんコレしてほしかったんだろ」
「してほしっ、さまとき……ぁ、うさちゃ、またイっちゃ……」
「いーぜ、俺様のちんぽで沢山気持ちよくなってイこうな」
「さま、ぁあ~ッ……! アッ……ん、おっきぃので、おくっ……!」
 左馬刻ので一番奥をこつんと突かれるのが好きなのだ。気持ち良すぎて怖いと言いながらも何度も自分から押し付けてきているから可愛いし愛しい。しっかり捕まえて、もう逃がしてはやれない。銃兎の腹に力が籠って締め上げられる感覚に、腰がぞくっと震えた。射精感が高まってくる。このまま一緒に気持ち良くなりたい。
「ぁっ、あっ、あっ! ひっ、おく、きもひぃ……」
「足開いてろ」
 気持ちいいところを全部押し上げるような恰好でどちゅんどちゅんと突いてやればそれだけで甘く達しているらしい。それでも腰の動きは止めてやらない。亀頭を奥の狭いところにぐっと押し込んで小刻みに揺らすと更に蕩けた声を出して悶えている。ぎゅうぎゅうしゃぶりついてくる粘膜がいやらしくて最高だ。
「あ! ゃぁあ……、ぁあっ」
 射精感を堪えたまま何度も腰を動かして揺さぶってやると甘い声を上げながらイキっぱなしになっている。
「ははっ、チンチンでイかなくて良いのかよ……? まんこ可愛いがられて、チンチンお漏らしすげぇぞ。ぷるぷる震えて潮噴いてんの」
「ゃ、あぁあ……ッ! きもひ、ぁっ!」
 いやいやと首を振る割に腰を振ってもっと気持ちよくなろうとしているのが可愛い。全身を真っ赤にしてとろとろになっている恋人の姿は最高だしエロすぎて困るくらいだ。耳まで赤くしていて涙や唾液で顔もぐちゃぐちゃだがそんな表情に愛おしさが募って仕方がないのだから困る。
「ちんこじゃないとこでイってんのか? 気持ちィの?」
「うんっ、うん、ぁ! …ァっ……んんぅ~ッ!」
 耳朶に噛みついて甘い言葉を注ぎ込みながらぱちゅぱちゅ音を立てて奥を突いてやると甘イキを繰り返しているのか蕩けた声を漏らして悶えている。深くつながったまま腰を押し付けたり揺らしたりするだけでいやらしい声が上がるから堪らない。気持ちいところに当たるように自ら腰を振りながら、とろけた表情で見詰められて「きもちいぃ……すきっ……」と甘えた声で言われて。左馬刻のを健気に咥え込んで、きゅんっと締め上げられるから最高だ。
「は……可愛い、好きだぜ」
「すき、すき、さまときっ……きもちぃ、奥、……ぁあっ、さまとき…」
 そんなに名前呼ばなくても聞こえてる。何度も好きと言われて堪らなくなった。本当にどうしようもないくらいに愛おしい恋人だ。メチャクチャに甘やかしてやりたいし俺様なしじゃ生きていけないように躾けてやりたいとも思っている────そんな身勝手な独占欲を知ってか知らずか素直に甘えて求めてくるのだから堪らない。ぐぽっと深いところまで潜り込む感覚に身震いする。受け容れてくれている。繋がった部分が酷い水音を立てた。どろどろの粘膜同士の触れ合いは脳髄まで溶けそうなくらい気持ち良い。
 じゅぶ、ぐぽっ、ぬぷっ、ずぽっ♡
 淫らな音を立てて何度も突き上げてやると嬉しそうに締め付けてくる。これだけ善がって悶えても俺のちんぽの形を覚えて離さない貪欲なまんこにたっぷりと種付けしてやりたい。全部搾り取られてやるくらいの勢いで何度も奥を突いてやったがそろそろ限界だって感覚がある。ぐちゅぐちゅ粘膜を掻き混ぜていると、段々我慢できなくなってくるのか、必死に腰を押しつけてくるのが愛しい。
「さまときっ、はぁ、だしていいから……♡」
 甘イキを繰り返しているのか、ずっとイッてる状態だ。なりふり構わず甘えるようにしがみついてくるのが可愛い。とろ火で煮詰めるような快楽に蕩けている顔も綺麗だと思う。出していいよ、さまとき、さまとき、と何度もねだられて熱が高まっていく。
「~……ぁっ、……ヒッ、ぁ……」
 断続的な絶頂感にびくびく震えながらも腰を揺するのを止めない左馬刻だけのウサちゃん。可愛くて堪らない。背中にしがみついてくる手が、拙いながらに縋って爪を立ててくれる。
「あッ、さまときぃ……! ……ぅぅ、んぅ、ぁあッ…!」
 震える腰を掴んで何度も何度も奥を抉ると蕩けた声を零しながら気持ちよさそうに背をしならせている。
「ハッ……出していいよ、じゃねーよなァ……?」
「さまとき、すきっ……! ほしいよぉ、っ……もぉだめ……ぁッ……いっ……!」
 がくがくと震えて背を仰け反らせる身体をきつく抱き締めて奥深くまで穿つ。
 どぷっ、びゅっ!どくんどくんっ……びゅくッ……!
 熱くうねる隘路の一番奥で射精するのは気持ち良い。ウサちゃんも一緒に悦くなれたみたいだった。背中を大きく仰け反らせ、つま先をぴんっと伸ばして腰を震わせている。熱く絡みつく粘膜に最後の一滴まで擦りつけるように腰を揺すったがそれだけで上擦ったはばかりない吐息が漏れ、焦点の合わない瞳でぼんやりと宙を見やっている。

 くったりした恋人を抱き寄せて触れるだけのキスを額や頬に複数回。唇同士が触れたときに一番嬉しそうにしてキスを返してくれるのが嬉しい。
「さぁとき……ん、…さ、とき」
「ん? ンだよじゅーと」
「すごかった……、さまときが、すごく……すき……」
 ふやけた甘い声で囁いてくれているけれど今は気持ちいいが溢れてとろとろで、頭の中がぼんやり白く烟っているんだろう。
 クソが、こんな可愛いウサちゃんは俺だけのモンだしこれから一生ずっと誰にも見せねぇ。左馬刻は無言のまま強く誓った。汗で張り付いた前髪を払ってやれば瞼がゆっくり閉じられていく。銃兎からも求められたとはいえ無理をさせた自覚はあった。疲れただろうから休ませてやりたいし、起きたら沢山甘やかしてやろう。後始末については、銃兎のことがすごく好きな彼氏様が今から済ませてやるので心配無用だ。
「銃兎、俺様だって負けねぇくらい惚れてるわナメんな。俺様の方がお前のこと好きだっつの……」
 銃兎は眠ってしまったし、今言ったって仕方ない。
 起きているときに告げたところで銃兎は「そんなわけないだろ、大体俺の方が先にお前を好きだったんだから」と真面目な顔で付き合う前の話を持ち出して対抗してくるか、ただヨコハマの王から甘々な口説き文句をもらえて光栄ですと喜ぶか、そのどちらかだろう。全く不本意だ。
……でもまぁ長い付き合いにするつもり満々だし俺様の本気はじっくり解らせてやりゃいいよな、というのは銃兎が知らない余談である。