好きバレするマイクロフォン! - 2/2

 銃兎の痴態のせいですっかり臨戦態勢になっていた自身を取り出し、数度しごいてから先端を入り口に当てがい、狙いを定める。
「……ちゃんと膝抱えとけよ」
 M字開脚の姿勢で両足を抱えた銃兎がゴクリと唾を飲み込んだ。これから何をされるのか完全に理解しているお利口なウサギは、もう抵抗しない。恥ずかしさを押し殺すように唇を噛んでいる。
「二人で気持ちよくなろうなァ、銃兎」
「ん、……ぁ、ッ」
 亀頭を擦り付けてやれば、まるでキスをしているみたいにちゅくちゅくと音が鳴った。
ローションと先走りで濡れそぼったそこに体重をかけ、ゆっくりと挿入していく。カリが入るところまで。そこで一旦動きを止めると、銃兎が焦れたようにこちらを見つめてきた。物欲しげに揺れるネオンピンクの瞳の色を見て思わず舌舐めずりする。この顔もなかなかそそるが、もっと乱れさせたくなる表情がある。
「……うう、左馬刻」
「なんだよ?」
「奥まで挿れねぇの……?」
「これで充分かもなぁ。ウサちゃんのナカあったかくて気持ちいいぜ」
「……やだっ、そんな……! なぁ、いつもみたいにしてくれ……」
 今にも泣き出しそうな声で俺の腕を掴んでくる。指先が白く変色するほど強い力。銃兎の必死さが伝わってくる。殊更に甘やかす声で聞いた。
「……どうしてほしいんだ?」
「分かんねぇよっ……」
「銃兎も男なら分かるんじゃねぇの? ヌルヌルで締めつけてくる気持ちいいまんこの中に挿れて……男だったら、この後どうすんだよ、銃兎」
 答えを促すように数回、軽く突き上げる。ひゃん、という悲鳴のような声をあげて身を捩ったあと、銃兎の表情が羞恥に染まる。観念したように口を開いた。
「たくさん腰振って、俺の一番深いところに、ザーメンぶち込めよ……」
【ぜんぶ欲しい、お前の全部が】
【さまとき、きて】
「さまとき、早くほしい」
 もう限界だった。一気に奥へと押し込むと、銃兎の身体が大きく仰け反り悲鳴のような甲高い声が上がった。
ぐちゅん、という水音が部屋に響く。
「煽りやがって……はっ、知らねぇからなッ」
そのままグッと突き込むようにして貫いてやる。
「ひっ、ぁ゙……ああぁぁぁ……っ!!」
「すっげぇ締め付け。食いちぎられそ……」
 待ち望んでいた快感を与えられた身体が悦びに打ち震えているようだ。挿入されてマンコ擦られた衝撃で達してしまったらしい。銃兎はビクビク痙攣しながら射精していた。腹の上が精液塗れになってる。エロすぎだろコイツ。そのまま小刻みに揺すれば背が反るほど感じ入っていた。眼鏡がズレてるが、容赦なく腰を振って、中を穿ってやる。
【入ってる……♡ さまときのおちんぽ入ってきたぁ……!】
【激しい、動き、すごすぎて我慢できない】
【ゆっくり動いて、イったばかりなの、お願いだから】
【さまとき、気持ち良すぎる……】
【むり、もうイク、またイッちゃう】
【きもちい、さまとき、さまときっ!!】
 銃兎の中は温かくてぬちゅぬちゅしてて、柔らかい。包み込まれる感覚が堪らない。気が付いたら俺も限界を迎えていた。銃兎の奥で果てた。柔らかくて吸いついてくるナカが、ぎゅうっと締まる。まるで搾り取るみたいにうねるのが気持ち良くて、最後の一滴まで注ぎ込んだ。
 
 
 
 銃兎の身体が跳ねた瞬間、ピュクッと腹の上に吐き出される。イったのはもう何度目だろう。最後の方は出す体液もなくて、ただピクピクと震えていただけだったはずだ。それでもまだ勃起したままでいるチンコの先端を手のひらで擦ってやると、「ひぃっ」とはしたなく声を上げた銃兎のペニスから透明な液体がプシャプシャと漏れてシーツを汚した。宣言通り、ビシャビシャに潮吹きながらメスイキさせてやっている。
 後ろだけで達することができるようになった銃兎の雄の性器はもはや用無しになっていて、今はひたすら、雄を受け入れる雌としての役割しか果たせていない。それなのに、こうして突かれるたびに嬉しそうに透明な汁を吹き出したり、とろとろ零したりなんかしている。女みたいに中イキを繰り返して、その度に締まる内壁が搾り取るように絡みついてきて堪らない快感を与えてくれる。
「あーあ……またイッてんのか? ケツでイクのクセになっちまうぞ。ザコちんぽ」
「んんっ……はぁっ、あっあっ、アアッ」
「おい聞いてんのか」
「んああッ!?」
「じゅーとぉ、勝手に飛んでんじゃねェよ」
「ごめんなさ……! あぅっ、あ、あ、だめぇ……っ!」
「ダメじゃねえだろうが。またイっちまうぞ? ちっとは我慢しねぇと、腹に力入れてよ」
「ぁあ、ぁ、ぁ、むりぃ……♡ ヒッ、ぅう!♡」
「はっ……はっ……」
逃げようとする身体を押さえつけて更に責め立てる。汗ばんだ胸元を撫で上げれば乳首もピンと主張している。銃兎の匂いが強く香ってきて、頭がクラリとする。
ふと見やると銃兎の白い腹が俺の動きに合わせてボコッ、と動くのが分かる。あんなにも薄いと思っていた銃兎の中に、俺のものが収まっていると思うと興奮すると同時に、俺のものだと実感して幸福感に包まれる。幸せなのは銃兎も同じかもしれねぇな。
【気持ちいい♡ がまん、できねぇ♡ またイっちゃう】
【さまとき! いく、いぐ……っ!!】
 背中が反り返り白い喉元を晒しながら、銃兎はビクビクと痙攣を繰り返した。しかし射精はしていない。空っぽになったはずのペニスは、透明な体液を垂れ流し続けるだけだ。あれだけ激しく絶頂を極めているくせに、一滴たりとも精液が出ない。まるで女みたいにドライオーガズムに浸って、息も絶え絶えになっているくせに、貪欲な後孔だけはさらなる刺激を求めて収縮を繰り返していた。こんなに俺を求めてるんだから応えないわけにはいかないよな。先端が抜けるギリギリまで引いて、また最奥を突き上げる。それを何度も繰り返すうちに、銃兎の声がだんだん甘さを増していくのが分かった。
「ひっ、う、あっ、あん♡ あんっ♡ あぁっ……♡♡」
「ケツ掘られるの大好きだもんなァ、じゅうとぉ」
「ちが……好きじゃないぃっ……♡ んっ、ふ……っ」
「嘘つくんじゃねぇよ。こんなに締めつけといてよく言うわ」
 俺様の言葉通り、きゅうっと窄まった銃兎の雌穴は、俺のチンコをヒクヒクきゅんきゅん締めつけている。本来なら異物を押し出そうとでもするのかもしれないが、余計に快楽が深くなるだけ。最初はあれだけ強情だったというのに今ではすっかり従順になり、自分から脚を開いて結合してるところを曝け出し、恥ずかしげもなく喘いでいる。眉を下げて瞳を潤ませながら舌を出してキスを求めてくる姿は、普段の様子からは想像がつかない。それに、何よりこの感覚。【気持ち良い】【もっと欲しい】【左馬刻、好き……】煽られて、興奮してるくせに脳みその底が逆に冴える感じ。銃兎の頭の中が快楽でドロドロに溶けてるのが手に取るように分かる。理知的でクールだった眼鏡の男はどこへ行ったんだろうな。目の前にいるのはトロトロになって、目をピンク色にして善がる可愛いウサギ。
「んむ……ちゅ、はぁっ、ん……」
 唇を合わせ舌を絡めると、すぐに向こうから積極的に絡ませてくるようになる。唾液を流し込めば素直に飲みこんで、俺の味を確かめるように執拗に舐め回してくる。本当に可愛い。普段は偉そうで口うるさくて年上面もしてくるくせして、こういうときはやたらと可愛くなる。ここまでトばしてやったら、完全に堕ちるまですぐそこだろう。とびきり甘い罠を張って、待ち構える。
「なぁ、じゅーとはえっちでかわいいな……」
「ぁ……♡」
「すげぇかわいい。綺麗だし、いい匂いだし、ずっと抱きてぇよ。すげぇ好き」
「……さまとき……♡ おれ、も、きもちいい♡♡」
「俺のちんぽ大好きになってくれてんの?」
「ぅん…すき、好きだ……♡ もっとして♡♡」
「ちゃんと言えよ。じゃなきゃ抜いちまうぞ?」
「ぁァんっ……す……すき……。さまときのおちんちんでお尻の奥、いっぱいいじめられるのだいしゅきれす……♡」
「よしよし、ちゃんと言えていい子だな。他のところも触ってほしいんじゃねぇのか?」
「あ……っ」
「ココとか」
「ゃぅ……っ」
「乳首も大好きだよなァ」
 指先でピンッと弾けば、それだけでまた身体が跳ね上がる。そのままぐりぐりと弄り続ければ、面白いくらいに反応を示す。もう女なんか抱けないんじゃないかと思うほど敏感になっている。
「あっ、あっ、それだめぇ……!」
「なんでだよ、これするといつもナカがギュウギュゥ締め付けてくんぜ。好きだろ」
「ああ…あぁっ、ゃあ、ちくびコリコリしちゃらめぇ……!!」
「こんなにビンビンにしておいて駄目なわけねぇだろうが」
 親指と人差し指できゅっと摘まみ上げ、クリクリこね回す。爪を立てて引っ掻いたかと思えば、今度は優しく撫でるように触れてやる。その度に銃兎は甲高い声を上げて悦んだ。
「あ、あ……♡ んんっ♡ ぅああ……♡」
「なあ、どっちがいいんだよ。カリカリされる方が好きか? それともこうやってグリグリ押されて捏ねくり回されたい?」
「ァア゙……っ!?」
 腰を動かしたまま耳元で囁いてやれば、銃兎はビクンッと背中をしならせて悶えた。
「んあぁっ、そんなのッ、おれ、わかんねぇ……!」
「分かんねぇことねぇだろウサちゃん。どっちが好きか教えてくれよ。……ほら」
「うぁ……あ……あぁ……♡」
 耳に息を吹きかけてやりながら乳首を軽く捻ってやると、銃兎は目をトロンとさせて口を半開きにし、喘ぎ混じりの声を漏らした。言葉を発する余裕すらなくなっているらしい。
「わかんねぇの? 答えられねぇなら、ずっとこのままだけどいいのか?」
「やぁ……イキたいぃ……」
「だったらちゃんと答えろ。俺様の言うことが聞けるだろ」
「うん……聞く……きくからぁ……」
「いい子だな」頭をぽんぽんと叩いてやれば、嬉しそうに微笑む。【左馬刻】という存在に媚びるような表情。
「……あのな、……」
「おう」
「……軽く引っ張って、つまんでるのを……クリクリしたあとに、爪でひっかくのとか……好き」
 恥ずかしそうに視線を逸らす。
「ちゃんと言えて偉いな」
 俺は銃兎の髪をくしゃりと掻き混ぜてやった。それから、再び胸へと手を伸ばす。乳輪をなぞるように指先を動かすと、それだけで気持ち良いのか、うっとりとした顔をして身体を捩らせた。そのままそっと先端に触れると、きゅっと軽く引っ張るようにつまんでは離す。何度も繰り返せばそれだけで快楽を感じているらしく、切なげな吐息を洩らしながら悩まし気に眉根を寄せた。焦れったくなったのか、自ら押し付けてくるようになった頃には、すっかり顔も蕩けきっていた。普段の澄ました面からは想像もつかないような雌の顔だ。
「ぁ……♡ はぁ、左馬刻、焦らさないでくれ……」
「しょうがねぇな」
「ひんっ♡ ……ぁ、んん、もっと強くクリクリして、左馬刻…っ」
【乳首じんじんするの……♡ 】
【おっぱいもっといじってほしい♡♡ いっぱいかわいがってほしい……♡♡♡】
 いつの間にこんな淫乱に育っちまったんだろう。俺のせいだな、責任とってやらねぇと。茱萸みたいに赤く色づく乳首を指で挟んで転がしたり、爪で痛くならないように加減しながら何度もカリカリしてやる。じんじんするところ、治してやらねぇといけねぇもんな。でも俺のちんぽに擦り付けるみたいに腰が揺れてることにも実は気づいてる。
「ウサちゃん、お尻のナカ我慢できねぇの?」
「ぁ……だってぇ……♡」
【おっぱいだけじゃ足りねぇもん……さっき沢山パンパンされたから、すぐほしくなっちゃ、】
「あぅっ……!」
 無意識のうちに銃兎が腰を引いた瞬間を見計らって、一気に奥まで突いてやった。パンパンしてほしくて仕方がないらしい銃兎にご希望通り思い切り打ちつけてやれば、一際大きな声が上がった。どうせ誰も来ないんだし、休みだし、何度絶頂しようが構わないだろう。ベッドなんかとっくに銃兎の精液と雌イキでぐしょ濡れになってるし。理性などとうに消し飛んでしまった銃兎が、甘ったるい悲鳴を上げた。
「〜〜っひぅぅ♡ っんあぁぁ♡ あっあっ、しゅごいっ、んぁっ! それ、きもちいとこばっか当たっちゃう……! はぁ、んんっ、ぁはっ♡♡」
「はは、気持ち良さそうだな。じゅーとのアナルも、ちんぽも、どろっどろになってんぞ」
「んん、さまときのちんちんしゅき……♡ もっと奥までっ、突いてぇ♡♡♡」
「ほんとエロいな。ほら、望み通り突きまくってやるよ!」
「ひあぁっ!♡きたぁ♡♡♡おくしゅき、しゅき♡♡♡ あ、あ! あっ、そこトントンしたらダメぇっ!! イッひゃう! いく、イクぅ……!」
 腰を打ち付ける度、ジュプッ!ジュブッ!と卑猥な音が響く。パンッ!パンッ!と肌が激しくぶつかり合う音も重なり、聴覚からも犯されているような気分になる。
「イけよ! ケツマンコにちんぽ突っ込まれてメスみたいにヨガり狂いながらイケ!!」
「あ”っ、ああぁっ! イグっイグっ! ぁあぁっ、あっ、あっ、ひぃ♡♡ んあァああぁっ……!!」
 絶頂を迎え、弓なりに背を反らす。ビクビクと身体が痙攣する。それでもまだ止まらない。欲望のままにピストンを繰り返す。
「あっ、ああぁっ! 待って! いまイッてるっ! んあぁっ! だめぇえぇぇぇっ!!!」
「何回でも好きなだけイカせてやるよ! オラァ!」
「いやぁっ、またくるっ♡ なんかくりゅっ、さまぁ、あ、あ、あ……!」
 ぷしゃあぁぁっ、と透明な液体が勢いよく飛び散った。精液とは違うサラリとした体液。潮吹きだ。銃兎はすっかりとろけて、余韻に震えている。
「なあ、じゅーと、俺のこと好きか……?」
【さまときの、こと……? そんなの、】
「すき、すき♡ さまときっ………」
────かかった。
 ついに銃兎の本音を表に引っ張り出すことに成功した。嬉しくて、隠しきれない笑いが漏れる。
「……銃兎、俺のこと好きなのか」
「!」
「ん? 今なんつったよ……」
「…!? ッあ、ぁ、……いや、すまねぇ、間違えた……今の、笑った顔もいじわるで好き、左馬刻……っ、!? いやだ、なんだこれ、聞かないで……!」
 銃兎は顔を覆ったまま耳まで真っ赤になっていた。
【聞かれた。聞かれた。聞かれた】
【左馬刻にバレた】
【恥ずかしくて死ぬ】
【忘れろって言わねぇと】
「ちがうんだっ、俺の口が、バカになっちまってて……好きだ、違う、この好きってのは違うんだ、俺がお前のこと、全部、大好きって意味、……も、もう嫌だっ、最悪……!」
「分かったから泣くな。……沢山言ってるうちに溢れちまっただけだろ。大丈夫だ」
 理性が弛んだせいで違法マイクの効果が表に出てきたんだろう、きっと。そうとも知らず、銃兎の目からポロポロ涙が落ちてくるのを舌先で掬ってやる。塩辛いが、どこか甘い味がする。銃兎は俺のことが好き。ずっと隠してたつもりだろうけど、とっくにバレてるからな。銃兎は一人で溜め込んで誰にも言わない。好きって想われることは嬉しいが、俺にはそれが耐えられなかった。俺だってこんなにも銃兎が好きなのに、どうして伝わらないのか不思議なくらいだった。
「さま……引いて、ねぇのか?」
「俺様が引いてるように見えんのか? ついでにまだ萎えてもねぇだろ」
 中に挿れたまま抱き起こして対面座位になる。下から突き上げてやれば声にならない悲鳴を上げて俺にしがみついた。
【奥まで届く】
【苦しいけど嬉しい】
【頭クラクラしてきた】
【気持ちいい、けど、愛されてるみてぇで、切なくなる】
 顔を上げさせると瞳が揺れていた。何か言いたそうにしている銃兎は、おずおずと俺の背に腕を回す。
「左馬刻様……好きです」
「!」
「だから今日は……もう許してくれ」
【一度だけでも良いから】
「また溜まったら付き合ってやるよ」
【俺のこと、好きだから抱いてるって言ってくれよ────好きって言って、左馬刻】
 声の顛末は、銃兎の本音に上書きされた。コイツは本当に、なんなんだよ。バカか。俺に好きって言ってほしいだと?
 誰がここまできてウサちゃん要らねぇやって捨てて、手放そうなんて思うんだよ。銃兎を俺のものにしたいと強く思った。銃兎への想いが強まって、伝える決意に変わった。きっかけなんてそれだけのことだった。
「俺もテメェが好きだぜ、銃兎。好きじゃなきゃ男に手ぇ出したりしねぇよ」
「へ……っ!?」
 キスで舌を絡めると応えてくれるのは、好きって告白する前も、した後も変わらない。一生懸命吸い付いてくる姿が健気で愛しい。唇を離すと、蕩けた表情をして、浅く呼吸を繰り返す。
「左馬刻……おまえ、好きって……」
銃兎の声が甘く掠れる。
「ン、そう言ってんだろ」
潤んだ目元にちゅっちゅと何度も啄むようなキスを落とす。
【くすぐってぇ】
【キスされると幸せすぎて溶けそうになる】
【さまとき、好き】
【もうダメかもしれねぇ……これ以上されたらおかしくなる】
【どうしよう、おれ、おかしい】
【すきすぎてこわい】
【さまとき、さまとき、さまとき】
可愛いすぎるだろ。なんだ、好きすぎてこわいって。
「……なあ、銃兎、俺はテメェが好きだぜ。分かってくれねぇの? じゅーとが好き。好きだから引いてなんかねぇよ」
「わ、分かったからっ……おまえ、好きって言いすぎ……ん?」
「なんだよ」
「……わかったぞ。もしかして、これは」
「だからなんだよ!」
「あの三下共に食らったマイクの効果じゃないのか」
「は……?」
「……好きな相手に、無理矢理にでも好きって言ってもらえる違法マイク………とか」
「あのなァ、ンなことあるわけねぇだろ! どこまで鈍感ウサギなんだよ! 本人に精神干渉するなら分かるけどな、なんで俺様の心までコントロールできるんだ!」
「だ、だって! そうじゃなきゃ、お前が俺に…好きとか……」
 銃兎は俺の首筋に顔を埋めたまま喋っていた。少しくすぐったい。俺は銃兎のことが好きで、銃兎も俺のことが好き。ゆっくりと顔を上げた銃兎は目を潤ませて真っ赤になっていて、俺に抱かれながらしがみついてる最中も泣いてたのかと気づく。その瞬間、胸が締め付けられたように苦しくなった。同時に心の底から込み上げてくる感情があった。
「……銃兎ぉ。お前、俺のこと好き好きって言いまくってたんだぜ。気づいてねぇかもしれねぇけどよ、お前はずーっと心ン中で、左馬刻が好き好き好きって……幸せすぎて溶けちまうって、とろとろの可愛い声で言ってたんだわ」
「!! は、待て……、なっ、え?」
「なんでバレてんの、って……ふはは、だから聞こえてンだわ。それ全部……だからこれは、俺様に無理やり好きって言わせるマイクじゃねぇよ。ウサちゃんが好きな相手に、好きがダダ漏れになっちまう……そうだな、好きバレするマイクロフォンってとこじゃねぇか?」
「……っ、ッ、ッ、〜〜っ!」
【なんだと】【マジで言ってんのか!?】【聞かれてた!】【よりによって左馬刻に……!!】【恥ずかしくて死ねる!】【セックスしてる時も? うわ、うわ……ダメだ…クソ、……うわ、考えたくねぇ……!!】声にはなっていない。だが銃兎の弱りきった、そのくせいつもよく通る声が、俺のすぐ近くで喧しくなる。
「ンなに騒ぐなよ。ほら、こうやって俺様の好きもバレちまったことだし腹括れや」
「………くそ。違う。左馬刻なんか、全然好きじゃねぇ」
「へぇ?」
「我儘で、俺様で、情に厚くて、料理の腕と顔が良くて、それから……爛れた恋愛経験しかなさそうで、ドSでオラついたセックスするくせに、根っこのとこは案外純粋で……意外と可愛いところもあって……甘えてきたり、俺に優しくするところも」
「ほんとは大好き、だろ」
「! 勝手に聴くんじゃねぇよっ……それ反則だろ」
「はははっ、……銃兎よぉ、残念ながらもう聴こえねぇんだわ。マイクの効果切れちまったみてぇ。……だからお前の声で聞かせてくれよ。俺様はウサちゃんが好きだってちゃんと言っただろ」
 俺がずっと聴きたかった言葉を、銃兎の声で。堪らなく愛しさが溢れて銃兎をぎゅっと抱きしめる。困ったように眉を下げた銃兎が【仕方ねぇな、コイツは】と言うみたいに笑った。俺の唇に、指先で触れる。
「……左馬刻になら何されたっていい。本当は今言ったところ全部、だいすきだよ。……聴こえなくても分かるんじゃねぇの?」
 耳元で囁かれた言葉は、今日聞いた中でとびきりの熱を帯びていた。