ハッピーエンドを前提に

「ホテルに入ってから出るまでの間だけ、恋人同士でいてくれよ」
 持ちかけられのは、そんな決めごとだった。ホテルに入ってから、出るまでの間だけ。ホテル出たらこれまで通りの仲間に戻りましょうってか。銃兎はそれでいいのかよと聞こうとしたのを遮るようにして、俺の手を引いてエレベーターに乗り込む。やることは積極的なくせに赤い革手袋の指先が震えてることに気付いたが、あえて見なかったフリをした。ルームキーを翳してドアを開ける。部屋の中に入ると、俺と銃兎は無言のまま服を脱いだ。下着姿になってベッドの上に座ると、銃兎の方から俺を押し倒してくる。俺は抵抗しなかった。ただ静かに、これから起こることを待っていた。
 銃兎はゆっくりと唇を重ねてきた。その感触を味わいながら、銃兎の首の後ろに手を回す。舌先で歯列をなぞられると、背筋がぞくりとした。息苦しくなったところで唇が離れる。唾液で濡れた唇から漏れた吐息は熱くて、小さな動作一つが色っぽいと感じてしまう。銃兎はそのまま俺の首元へと顔を近づけていった。何の断りもなく首筋を強く吸われる。ぴりっとした痛みを感じた。これはきっとキスマークだ。ワンナイのくせにこんなもん付けてくるなんざ悪い男だな。そう思うが、銃兎にされると嫌な気持ちにはなれなかった。むしろ嬉しいと思う俺がいる。銃兎がもう一度口づけてくるから、今度は俺もやりたいようにしてやろうと決めた。ない胸を揉んでやる。胸筋の手応えはあるものの厚みはない、つーか薄い。そもそも銃兎は痩せてるからもう少し肉つけたって良いだろうに。銃兎は顔を顰めてむずがった。
「……う、それ嫌だ、左馬刻……っ」
「なんでだよ、今は恋人なんだろ。好きにさせろや」
 銃兎の乳首を爪の先で軽く掻いてやる。ひっ、と女みたいな声を上げた。それが面白くて何度も繰り返す。だんだん固くなってきた。乳輪の周りをくるりと撫ぜてから、中心に向かって押しつぶすように刺激する。時折強くつまむと、面白いくらい身体が跳ね上がる。
 銃兎って結構感じやすいんだな。まさか俺の知らねェうちに他の男に仕込まれたんじゃねぇだろうなと少し心配になる。手を伸ばして銃兎のを触ってみると、そこは既にしっかりと勃ち上がっていた。先走りが滲んでいる。下着越しに、勃起したウサちゃんの先っぽに触れるか触れないかの加減で人差し指をくしゅ、くしゅと擦り付けてやると、もどかしそうな表情を浮かべた。
「ぁぁっ……ま、待ってくれ……さまとき…」
 いつもは気丈なのに、弱々しい声で訴えられる。ウサちゃんにお願いされるとやっぱり可愛いもんだから、仕方なくいじめるのを止めてやった。
「ん? どうしてほしいんだよ」
「……直接、触ってほしい」
 消え入りそうな声で呟かれた言葉を聞いて、心臓が大きく脈打った。
「どこを?」
 意地の悪い質問だと思った。銃兎は恥ずかしそうに目を伏せながら「ここ……」と言って自分の性器に触れる。完全に勃起していて、布地を押し上げている場所を。
「んだよ、もうパンパンじゃねえか。いつからこうなってたんだよ」
 今気づいたみたいに言ってやると、銃兎は眉をキュッと寄せた。そそられる顔しやがって堪ンねぇ。
「左馬刻とキスして……乳首、弄られて……そしたら、すぐ勃っちまった……だからっ、早くッ……」
 恥ずかしいのか顔を真っ赤にして「触ってください……」なんて言われて我慢できるはずがなかった。パンツを脱がせてやって、露わになったペニスを握る。
「ぁあ……っ」
 上下にしごいてやるたびに腰が揺れていた。亀頭を親指でぐりぐりと押して責める。
「あぁッ! ん、ふぅ……ひっ」
 喘ぎ声を抑えることもなく、銃兎は与えられる快楽を受け入れているようだった。鈴口からどんどん透明な液体が流れ出てくる。それを潤滑油として、さらに激しく扱き上げる。裏筋を重点的に責め立ててやれば、
「あっ、そ、こぉ! さま、イイッ!」
と大きな声を出して悦んでいた。尿道口を塞ぐようにして指を当ててやると、ぬりゅぬりゅと滑らせた。
「ぁぁ、ヒッ、ひンッ……くぅ」
「さっきまで処女みてぇな態度取ってたくせに、急に淫乱になりやがって。イキたい時はちゃんと言えよ」
「ふ、あぁ……わかって、る……」
 強く目を閉じて必死に耐えていた。そんな銃兎を見ると嗜虐心が湧いて、イかせたくなる。
「おい、目開けろ。誰に弄られてんのか見てろよ」
言われた通りに銃兎が見つめてくる。瞳が潤んで、頬も紅潮していた。半開きになっている唇からは唾液が垂れていて、普段の清廉潔白な姿とはかけ離れた、えろくてかわいい銃兎。
「お前、そんなヤラシイ面できるんだなァ……かわいいウサちゃんもっと見せろよ」
「う、うう……嫌だ、見ないでくれ……」
銃兎が顔を逸らす。その拍子に眼鏡が少しずれるから、俺はそれを直してやった。
「ほら、続きすっからしっかり見とけよ」
「ん、んふ、う……ぁ、ああッ!!」
 再び手を動かすと、銃兎はびくんと身体を震わせた。限界が近いらしい。
「は、ぁ、さま、さまときぃ……俺、も、だめ……出る、出ち、まう……!」
「早くね? おら、腰逃してんじゃねぇよ。もう少し頑張れや」
 チンコを扱くスピードを上げる。カウパー液のおかげで滑りが良くなったそこは、擦られるたびにくちゅくちゅ音を立てていた。銃兎は耐えきれないといった様子で、両手でシーツを強く握りしめている。身体を反らせて、何度も息を吸って吐いて、俺に言われた通り頑張って快感を逃そうとしていた。
「ウサちゃん良い子だなァ……えろい汁ぐちゃぐちゃ出てるぜ」
「言う、なっ……はぁ、んんッ」
「沢山可愛がってやれるな」
 耳元で囁くと、銃兎の表情が変わった。何かを堪えるような苦しげなものから、期待に満ちたものへと。
「あぁっ…さまときっ、」
 切羽詰まったような、でもどこか嬉しそうな声で名前を呼ばれる。俺に可愛がってほしいって全身で訴えられている気がした。涙の膜で潤んだウサちゃんの目は、ピンク色が溶けてて綺麗だ。敏感な先っぽをくりくり掻いて刺激してやると、
「あ、アッ、アア〜〜っ!!」
 ビクビク震えながら甘ったるい声で啼いた。タマがきゅんきゅんしちまってるんだろう。ガチガチに勃ってる銃兎のチンコを扱きながら先っぽくりくりしてやる。
「あぁっ、ああっ!! あ、あぁぁ……!」
 同時にされるのが堪らないのか銃兎の腹筋に力が入って、身も世もない声が上がる。亀頭全体を掌で包むように握って撫で擦ってやると、ひんひん啜り泣くような声を漏らして呆気なく果ててしまった。
「あーあ、イっちまってんのかよ銃兎ぉ。ちゃんと言えって言っただろうが」
「ぅ……ぅう、ごめ、なさい……」
 柔っこくなった竿に白濁液をくちゃくちゃ塗りこめながら叱ると、銃兎は泣き出しそうに顔を歪めた。その表情を見て、俺は下半身が熱くなるのを感じていた。
「まあウサちゃんは俺様の恋人だからなぁ? 俺様の言うこと聞けなくても、特別に許してやるよ」
 『恋人』という言葉を強調すれば、銃兎の顔がじわじわと赤く染まる。こんなことする俺だって大概だが、かわいい反応を見せてくれる銃兎も悪いよな。ベッドサイドに置いてあったボトルを手に取った。
「左馬刻、」
「するに決まってんだろ……ほら、今度はウサちゃんが寝っ転がる番だ」
「本当に良い、のか……俺だぞ」
「ここまで来て何言ってやがんだテメェは」
 冷たくないように、ローションを右手にかけて温める。その間ずっと、銃兎は俺のことを見ていた。期待するような目だ。それに応えるように、俺は銃兎の後ろへ指を差し入れた。
 ナカを傷つけないように慎重に解していく。快い場所を探ることも忘れない。男同士ですんのは初めてだけど、銃兎を好きになってから俺様なりに勉強だってしたんだ。こんな形で叶うとは思ってなかったけどよ。最初は異物感しか感じなかったのか苦しげだった声が、少しずつ甘ったるくなってきた。
「あッ! ふ、ンゥ……」
「ウサちゃんのお尻、柔らかくなってきたぜ。痛くねぇよな?」
「や、だめぇ……うう…」
「グズんなって……ほら、もう二本入ってンぞ」
 二本目を入れてバラバラに動かす。銃兎の様子を見ながら、一番感じるポイントを探ってやる。
「アッ!? ぁあ、そこぉ……」
 ある一点を掠めると明らかに声色が変わった。その場所を重点的に責め立てる。
「左馬刻っ、そこばっか、やだァ……!」
 泣き混じりの声が聞こえてきた。それでも止めることはない。指を三本まで増やしたところで、銃兎のナカがヒクヒク痙攣するようになった。
「じゅーと」
「ぁ、さまときっ…!」
 銃兎が俺の手で気持ち良くなってる。俺だけを見てる。それが何より嬉しかった。もっと、って強請られるままに快いところを指の腹で押してやる。銃兎は上擦って吐息が混じる声を漏らしながら、何度も腰を震わせた。
「ぁ、ぁああ……ッ!」
「じゅーと、ここ押すと白いの出てきちまう?」
「ひ、っ!? ぃっ、ァア゙〜〜……っ」
 ねっとり指を這わせて入り口から気持ちイイところまで何度も往復させると、ピン勃ちのチンコの先から精液がとろとろとろとろ垂れ落ちてくる。さっきイったのが出し残ってたのか新しく出てきたのか銃兎にもよく分かってないみたいで「わかんね、ぇ……しらない、こんなの……」と言うと恥ずかしそうに目を伏せて小さく首を振った。可愛い仕草に煽られて、俺も限界だ。
「……わりぃ。我慢できねぇ」
 下着を脱ぐと、腹につくほど張り出したそこが痛いくらいだった。ゴムの封を切って手早く装着する。銃兎の両膝の裏に手を当てて、思いっきり広げた。
「ん、さまとき、……〜〜っ、ぅ、あ゙ぁ…!」
 ヒクついている後孔に切先を押し当てる。一気に突き刺したせいで、圧迫される質量に上手く息ができないようだ。俺がやっといてアレだが指の比じゃねぇよな。力を抜くために開かれた口から空気だけが漏れている。
「じゅーと、大丈夫か?」
「は、ッ……は、くるし……さまときぃ……」
 やめて、とは言わずに俺の首の後ろに腕を回してぎゅっと抱きついてくるから、顔中にキスをしてやった。苦しいよな。ごめんな。でも全部欲しいんだよ。
 ゆっくり時間をかけて全部収めてから、腰を動かし始める。浅いところを突いたり、深いところを突いてみたり。慣れるまで待つつもりだったが、銃兎の中が絡みついてきて、あったかくて、気持ちよくて、我慢できなくなる。段々とストロークを大きくしていき、最終的にはパンパン音が立つほど強く腰を打ち付けた。その度に銃兎からは悲鳴にも似た喘ぎ声が上がる。それがまた可愛くて仕方ない。少しずつ慣れてきて締め付けも緩くなってきた。
「あっ、あぁ、さまときぃ……や、んあぁん……!」
 銃兎の身体は快感を拾い始めてるみたいで、奥を突くたびに背中に爪を立てられる。勿体ないから銃兎には内緒にして、キスマークと一緒に明日まで持って帰ろう。
「はぁ……銃兎、じゅーと、可愛いな……」
「ア……あ、あ……さまとき、すき……好きィ……ああぁッ!!」
「……くッ…………ハハッ……俺も好きだぜ」
「ぁっ、ぁあん……うれし……あぁぁ……!」
 今だけは恋人同士でいてほしい。銃兎が願ったのはそれだけだ。銃兎が俺の首の後ろに腕を回して、甘えるようにキスをしてくる。俺は応えるように唇を重ねた。舌を絡めて吸い上げると、気持ち良さそうに身体を震わせていた。
「あぁ……イっちゃう……さま、イくぅ……!」
 今度は健気に報告してくれた。イく、イく、と上擦った声で何度も訴える。銃兎は男にしては細い腰を浮かせながらビクビクと震えていた。同時に中がきゅっ、きゅっと断続的に締まる。持っていかれそうになるのを何とか堪えた。銃兎がナカだけで達している間も容赦なく揺さぶり続ける。
「あっ! ぁあ、いっ、イってる! イってるからぁ……!」
 銃兎が泣きながら首を振る。
「もう少しだけ付き合えや」
 俺は再び動き出した。柔らかくなったナカは嫌がるどころか悦んでいるが、
「だめ、ぇっ、やめ、おかしくなっちま、うぅ……!」
 銃兎は俺の背中を引っ掻いた。ピリリとした痛みが走る。でも今はそんなことどうだって良かった。
「おかしくなっちまえよ」
 ラストスパートをかけた。銃兎の最奥を目指して穿つ。その度に上がる甲高い声に煽られ、どんどん熱が高まっていく。銃兎の先端を掌でぐしゅぐしゅ刺激すれば、一際大きな声を上げて身をよじろうとしたから逃さないように押さえこんだ。
「ひ……!? ぁあっ、ちんこ触っ、やだ! やだ……!」
「大丈夫だからそのままイけ、……イこうな、じゅーと」
「いやだ、出ちゃうっ! やべぇから、漏れる……ぅ、さま、とき、漏らす、もらしちゃう……!」
「出していいぜ」
「やだっ、ぁあ、離せ、おい左馬刻っ……!!! ぁぁあ、〜〜ぅっ、ぅア……!」
 銃兎のストップを無視して、掌で亀頭を撫で回す。先端の穴がくぱくぱと開閉するのが見えた。
「さまとき、だめだ、ほ、ほんとに出るからっ! このままじゃ、ほんとに……もれちまう……!」
 銃兎の目尻には涙が溜まり、つぅっと頬を伝い落ちる。嫌がるのも無理はない。射精すると潮吹きやすくなるとは言うものの、今まで一度も経験したことがなかったし、羞恥心と恐怖が入り交じっているのだろう。だが、ここで止めてやるわけがない。銃兎の恋人なんだろ俺は。だったら銃兎の全部を見たい。容赦なく尿道口を刺激しながら、前立腺を突き上げた。
そして、耳元に口を寄せる。
────出せよ。
 銃兎が喉の奥で小さく悲鳴を上げる。ぷしゅ、と勢いよく液体が漏れ出して、生ぬるく掌を濡らすのが分かった。ついに我慢できなくなったんだ。
「ぁ、ぁ、……ぁ、……っ」
「ほら銃兎、全部出しちまえや」
 先端を擦って促してやる。一度溢れ出たものは止まらなかった。透明で温かいモノが俺の掌から指先を伝い落ちて、ベッドのシーツに大きな染みを作った。
 銃兎は気まずいのか恥ずかしそうに顔を覆って、嗚咽のような声を漏らしている。すべての放出が終わると、俺は手を止めた。肩で息をしている銃兎が落ち着くまで待ってから「銃兎」と声をかける。まあ俺がやったんだが。銃兎は返事の代わりに首を横に振った。
顔を隠す腕を取り払えば、すっかり蕩けた表情をしていた。目元は赤く染まり、口の端からは唾液が垂れている。
「おーい生きてっか?」
ぺちぺち頬を叩けば「ん……」と小さな声が返ってきた。
「ちゃんと見ろ。お前が誰に抱かれてるか」
 焦点の合わない目を覗き込んで、言い聞かせるように囁く。
「ぁ……ぁ、さまとき……」
 銃兎はぼんやりとした様子でこちらを見上げてきた。とろりと溶けた瞳の中に俺の姿が映り込む。銃兎が俺だけを見てる。それはとても気分が良かった。この瞬間だけは間違いなく俺だけのものだ。
優越感に浸っていると銃兎がふにゃりと笑った。銃兎は俺の顔が好きなのを、実は知っている。セックスの最中だから特に分かりやすいのかもしれない。普段の銃兎は眉間にシワを寄せていることの方が多いが、今は気持ちよくなってそれどころじゃないんだろう。が、惚けていたのはちょっとの間だけ。すぐに不満げな表情になった。
「……てめぇ、クソバカやろう。チンコ触るなって言っただろ……」
「あん? よく言うぜ、潮吹いて気持ちよくなってたくせによォ」
 俺は一度引き抜いて、銃兎の隣に寝転んだ。余韻に浸っているのか、銃兎はまだ本調子じゃないらしい。呼吸に合わせて上下する腹にそっと手を這わせた。薄い腹だけど、しっかり筋肉がついてることも分かる。撫でられるだけでも感じるみてぇで、ぴくんと反応した。
「……ん、まだするだろ……?」
「当然だろーが。かわいい恋人のウサちゃん休ませてやってんだよ」
「………あんまり言うなよソレ。かわいいって」
「気に入らねぇのか?」
「そんなの、無理に言わなくていいって……んん、ッあ」
「じゅーと」
 悲しいことばっか言いやがってよ、聞きたくねぇわそんなん。銃兎の名前だけ呼んで、あやすみたいにキスをした。少し休ませてやってからもう一度、かわいいウサちゃんのナカに挿れた。硬くなってるのをあったかいところに沈めて、今度はゆっくり奥まで挿れてから、じっと動かずにいる。すると銃兎が焦れたように、もぞもぞと乗っかってきて自分で腰を動かし始めた。
「おい、勝手に動くんじゃねぇ」
「んあ……? あ、ごめんなさ……」
 銃兎は謝りながらも腰の動きを止めようとしない。無意識なのか、それともわざとか。気持ちよくてトロトロになっちまってるのかもしれねぇ。なんにしても、俺にとっては都合が良いことだった。
「悪い子だなぁ、じゅーとは。そんなに掻き回されてぇなら俺様が動いてやる、よッ!!」
銃兎の腰を掴んで固定してから、一気に突き上げた。
「あああぁぁッ、〜〜ッ!!」
 突然の刺激に耐えられなかったのか、銃兎が背中をしならせる。自分で動くのとは比べものにならないだろう。そのまま抽送を繰り返し、銃兎の身体を揺さぶれば、セックスしてる音がよく聞こえた。銃兎は俺にされるがままだった。上に乗ってたのにふにゃふにゃになって倒れてくるから、目の前にある乳首を口に含んで、舌先で撫でてから吸う。俺のを包んでいる肉襞がひくついた。
「ぅ、あァっ……さまときっ、さまときぃっ」
「は……なん、だよっ」
「ちんぽ、すごっ、きもちいっ」
「へえ、そうかよっ」
「さまときのちんぽ、いいっ……ちんぽすき、もっと♡」
「……チッ!」
 バカみたいに煽ってきやがって。苛立ちを覚えつつも興奮してしまう俺がいた。銃兎の性器は萎えるどころか再び勃起し始めている。淫乱ウサギの尻を持ち上げ、激しくピストン運動を繰り返す。
「あ、あ、あ、だめっ、おくぅ♡ あたってぅ、あ、ああッ」
「当ててる、んだろが! オラ逃げてんじゃねぇぞ、腰落とせっ」
「!? ひぃっ……♡ ごぇ、なさ♡ 言うこと、きくからぁ♡ ぁ゙ぁ♡ んぐ、好き、ぃ、そこ、あ、イク、イっひゃ、〜〜っ、あ あ あ あ あぁぁ……!」
「……っく」
 ナカで達したのか、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる。搾り取るような動きに逆らわず、薄い膜越しに吐き出した。どくどくと全身が脈打っているのを感じる。

「はぁ……あぁ……♡ さま、きもちよかった……?」
「……おう」
 銃兎の蕩けた顔にキスを落とす。銃兎は嬉しそうに応えてくれた。ちゅっ、ちゅっと可愛らしい音を立てながら口づけを繰り返す。唇を啄むようにして味わえば、もっとという風に口を開けてきた。誘われるがままに舌を差し入れると、待っていたとばかりに絡め取られる。お互いの唾液を交換するかのように深くキスをした。ようやく唇を離すと、名残惜しげに繋がった糸が切れる。
 ナカに挿入ってたモノを引き抜き、ゴムを取って適当にゴミ箱へ放る。銃兎の方を見遣れば、くたりとうつ伏せになっていた。後孔はすっかり柔らかく解れていた。俺がチンコを挿れて突きまくったウサちゃんの入り口は溢れたローションでぬらぬら光って濡れてて、呼吸するみてェにひくひく蠢いてて、スゲェやらしい。ついさっきまでの銃兎を思い出して思わずごくりと唾を飲み込んだ。

「……なぁ、銃兎」
 もう一回。ゴム付けずにしてぇ。
 回りくどいのは抜きでストレートに言うと、銃兎はすっかり快楽に従順になった身体で応えてくれた。自分で四つん這いのワンコみたいな体勢をしてみせるくらいだ。腰を上げこちらに向かって突き出す姿は、まるで獣の交尾めいていた。
「ん、ほら♡ さまとき……こいよ♡」
「じゅーと……」
「いいよ、早く……♡」
 銃兎が俺を振り返る。潤んだ瞳の奥に、ハートマークが見える気がした。ゆっくりと、入り口に先端を押し込む。柔らかいピンク色の内壁がきゅうっと絡みついてくる感覚に思わず眉が寄った。くそ、なんだこれ。ヨすぎるだろ。銃兎の様子を窺うと、苦しそうな様子はない。むしろ気持ち良さそうだ。そのまま一気に貫いた。銃兎の内腿が痙攣する。
「あ、あぁ……!」
「っ、お前ンなか、あちぃ……」
「ふぁ……あぁん……さま、の、おっきい…!」
「くそっ! 煽ってんじゃねぇよ!」
「ひっ、んぅ、ああぁっ!」
 銃兎の細い腰を掴み、後ろから激しく突く。銃兎からは悲鳴じみた声が上がった。だがその表情は苦痛ではなく快感に染まっている。銃兎が感じている証拠に、銃兎のものは萎えるどころか硬度を増していた。先端からぽたぽたと粘液が垂れている。俺はそれを掬って乳首に塗りつけてやった。びくんっと銃兎の背中が跳ねる。乳首を弄られるのが好きなことは知っている。ピンと指で転がしてやると、銃兎の口から甘い吐息が漏れ出た。腰を打ち付けるたびにパチュ、パチュンと肌同士がぶつかる音が響く。顔が見たくなって、バックから表に返す。銃兎の脚を持ち上げて肩に乗せた。ぐいっと体重をかけて奥へと侵入する。銃兎がシーツを強く握り締めて身悶えた。前立腺を擦り上げるようにして奥まで犯した。何度も抽挿を繰り返す。
「ああぁっ、だめぇっ! そこぉっ、そんな、ああぁん……あぁっ、ん、ぁぁっ!」
「ここ好きだろ、ほらっ」
「ああぁぁっ!! ああぁっ、すき、いいっ、きもちぃ……っ!!」
 素直な銃兎の言葉に愛おしさが募る。こんなに乱れてる姿を見られるのは俺だけだ。誰にも見せたくない。気持ちいって全身で伝えてくる。すげぇエロい。銃兎が好きだ。こんなお前、俺様だけが知ってれば良い。
「どこが一番イイんだ? ……言ってみろよ」
「おくっ、いちばんっ、おくぅっ!!」
「じゃあ奥いっぱい突いてやるよっ」
「あぁぁっ! あぁっ、あぁっ、あぁぁっ!!」
「ウサちゃんの彼氏様のちんぽ気持ちいいなァ?」
「かっこいぃっ、あぁっ! すごいっ、いい……っ! さま、ぁ♡ すきっ、だいしゅき……!」
「かわいいこと言ってくれンじゃねぇか……なぁもっと欲しいか?」
「欲しいっ♡ さまときっ、さまとき……♡」
「いいぜ、…っ、たくさんくれてやんよ」
 銃兎の中に埋め込んだものをギリギリまで引き抜く。そして一気に最奥目掛けて突き入れた。
「~〜~〜〜〜ッ!!!!」
 銃兎は声にならない叫びを上げて達した。同時に中が激しく収縮する。持っていかれそうになるのをなんとか堪えた。銃兎のものを見ると射精はしていなかった。ドライでイッたようだ。焦点の合わない蕩けた瞳で、はくはくと口を開け閉めしている。
 絶頂の余韻から抜け出せない様子の銃兎を気遣う余裕もなく、俺は無我夢中で腰を動かしていた。肉同士のぶつかり合う音と、グチャッグヂュッという卑猥に潰れた水音が部屋に響く。そろそろ限界だった。
「じゅーと……はぁ、っ、出すぞ……!」
「あ……んぁ……だして……だしていいよ左馬刻♡ おれのなか、いっぱいほしい……♡」
「くっ……!」
ドクッドクッと大量の精液を注ぎ込む。銃兎の中が搾り取るようにきゅうきゅうとうねった。
「ひっ、あぁぁ……ふ、さまとき……♡」
 ずるりと萎えたものを引き抜いた。銃兎の後孔から白濁が溢れ出る。それを見てまた熱がぶり返しそうになったが、これ以上ヤると本気で怒られそうなので我慢する。代わりに汗ばむ銃兎の首筋に舌を這わせた。しょっぱい。銃兎が小さく喘いだ。そのまま耳元に口を寄せて囁いた。
────銃兎、好きだ。お前だけを愛してる。
 銃兎が振り返る、翠玉の色彩が、恋したように柔らかく溶ける。ゆっくりと唇を重ねる。柔らかくて熱い。何度も啄んで、食んで、舐めて、吸って、キスを繰り返した。やがて銃兎がクスリと笑った。
────俺もだよ。
銃兎が俺の頭を引き寄せ、再び唇が重なる。本当の恋人同士のように深く、甘く、口付けを交わした。
 
 
▷▷▷▷
 
 
 あらかじめ決められていた通り、幸せな時間に終わりがやってくる。これでチェックアウトだ。帰り際の銃兎が泣きそうに切ない顔をしてるから、思わず手を引いて抱きしめていた。
「銃兎」
「離せ、左馬刻」
「良いだろ」
 もう一度だけ、感触を確かめるように唇を重ねた。銃兎も抵抗しなかったから、柔らかい唇を食むようにしてキスする。
 なぁ銃兎、これが最後のキスになっちまうのか。俺は恋人同士のフリなんて、やっぱりできねぇよ。お前は違うのか?
 俺たちは本当に、ただの仲間なのか?
 この部屋を出たら元の関係に戻るなんて、そんなの俺は無理だ。
 言葉を尽くす代わりに、ぎゅっと抱きしめる腕の力を強めた。銃兎の指先が背中に触れる。応えてくれるみたいにアロハシャツを、きゅっと握られた。仕草一つがたまらなく愛おしかった。こんな風に思えるのは銃兎だからだ。俺の特別なウサちゃんだけ。
「……ホテル出てからも俺と恋人同士でいろよ」
 言った。ついに言えた。銃兎の手に力が入ったのが分かる。お前のこと離したくねぇんだよ分かれよ。少しの沈黙の後、小さく笑う気配がした。ああ、それだけで分かっちまう。いつものことだ。俺と銃兎はツーカーの仲で、何も言わなくたって伝わる。
「嘘でも嬉しいもんだな。それ、次にホテル来た時も言ってくれません?」
 ……伝わってないことが伝わったって、歯痒さが増すだけだ。俺は本気で言ってるんだぞ。それなのにこのウサギは冗談にして誤魔化すつもりか。
「逃げてんじゃねぇよ」
 強く抱きしめているせいでくぐもった俺の声は、懇願するような響きになっていた。
「何言ってんだ、ここにいるだろ。逃げてなんか、」
「俺のこと好きなんだろうが!」
 銃兎の肩がビクリと大きく跳ねる。
 ────ほらな。やっぱり図星じゃねぇか。
なあ銃兎、お前を困らせたいわけじゃねぇよ。傷つけようとしてるわけでもない。ただお前に知ってほしいだけだ。俺は本気だってことを。だからお願いだ。勝手に諦めないでくれよ。耳元に口を寄せる。
「俺もテメェが好きだ。何度も言わせんなよ」
「………!」
 今度はちゃんと届いてくれたらしい。銃兎が俺を見上げた。透明なレンズの奥でエメラルドみたいな緑色が揺れている。涙の膜に覆われた瞳が光を反射して潤んで、俺だけを見ている。やがて震える声で小さく「左馬刻」と名前を呼ばれた。躊躇いの先にあるだろう言葉を聞き逃さないように耳を澄ませる。
「……すげぇ嬉しいよ、俺」
 嬉しいだと?
 なんだよそれ。んなもんこっちのセリフだし俺様はお前とホテル来る前からずっと嬉しかったんだぞナメんな。