「なあ」って短く、しかし真剣な顔して呼びかけてきた左馬刻の性器が硬くなってることに気づいてしまった。
────待ってくれ。今そんな状況だったか?
これは、流石にマズいだろう。どう考えても宅飲みしてただけなのに、急に左馬刻のアレが臨戦体勢。つまりその気になっている。この場にそぐわない誤作動だろうが。左馬刻が俺相手にチンコ反応するとかそんなわけないもんな。でも流石に気まずい。どうすればいいんだこれ。
左馬刻は美味いコーヒーも淹れてくれるし、ご飯もツマミも作ってくれるし、店やお互いのマンションで一緒に酒も飲む。誕生日だって祝う。……だからって、ちゃんと分かっていますよ。私が左馬刻にとって取るに足らない男だってことくらい。ラップスキルも悔しいけれど『彼』の方が上なのは分かっているんですから────もしこの場にいるのが俺ではなく『彼』だったら、と頭に過ぎる。しかしそんなのは絵空事にすぎない。左馬刻にとってはその方が良かったけど、残念ながら現状はそうじゃないんだ。仲間として俺がせめてものフォローをするべきか。大体、広い家なのに左馬刻が距離ゼロで隣に座ってるのが元凶だと思う。タワマンなんだから広いリビングの空間を活かしてくれ。
「左馬刻、あんまりくっつくな」
「外でベタベタされんの嫌なんだろ。ここなら誰もいねーしいいだろうが」
「俺だぞ? よく見ろ」
「……はぁ、銃兎だろ。たまんね」
「……おい、左馬刻。トイレに行くかシャワー浴びてこい。話なら明日また聞いてやるから……な?」
生地の厚いヴィンテージ物のジーンズは左馬刻がどこのメーカーで製造された、時代がナントカって蘊蓄を話してくれたお気に入りのやつだ。
目の詰まった堅い生地をグイッ!と元気に押し上げて逞しく成長したソレが、ぴったりくっつく太腿からすぐ分かるほどに膨れ上がっている。
思わず視線が吸い寄せられそうになるけれど、サツの俺が左馬刻の股間なんか見てセクハラもいいところだ。じろじろ見るなんてダメだ、関係ないところを見なければと彷徨わせた視線が、余裕のない瞳とかち合ってしまった。男の色気ってやつ、俺に発揮してどうするんだ。しかし腹立つほど顔がいい男だよなぁ……上向きに伸びた長い睫毛と、スッと通った鼻筋に鋭い赤い瞳。端正な顔立ちは遠くからでも人目を惹き付けてしまう華やかさがあるのに、こんな近くで見たら効果絶大だ。勝手に顔が火照る。
「チッ……」
鋭い舌打ちと共に、バサっと思い切りのいい音。着ていたシャツを脱ぎ捨ててしまっている左馬刻の姿があった。
「は……!? え!? 左馬刻、シャワーは向こうだろ!? 風邪ひくぞっ」
「……熱ちィんだよ」
チラリと視線を落とすとベルトまで抜き去ろうとしている。抜かれた。ジーンズのファスナーに指がかかったところでハッとした。
「左馬刻っ、えっと、ここで脱いだらダメだ……!」
「なんでだよ」
「だって、そんな……とにかくダメだろ!」
「……そんなにイヤかよ」
「……酔ってるんだよお前。熱いなら、シャワー浴びるか水飲んで、もう寝た方がいい」
俺はただ、これ以上はいけないと思って止めてるんだ。大事な左馬刻を望まない黒歴史、及び性交渉から守ってやらないと。俺相手にするなんか孕まないというメリットはあるけど、俺より良い選択肢が左馬刻には他に山程ある。
だが俺の言葉が耳に入っているのかいないのか、俺の主張を理解しているのかも不明のまま上裸の左馬刻が近寄ってくる。じっと見てくる赤い瞳から逃げるように顔を逸らすけれど、その隙を待っていたかのようにするりと手が伸びてきた。男らしく節立った指先が顎にかかって、
「ん、んぅッ」
柔らかい感触が唇に押し付けられた。
「銃兎」
「さまとき……っ、冗談にしても、こんな」
「イヤなら突き飛ばせや」
間近にある顔は切なげで、それでも焦れてギラギラした瞳には欲情の色を漂わせているから、本当にまずい。流されてしまいそうになるから良くない。こんな目で俺なんかを見ているってこいつは知らないんだ。無自覚はタチが悪い。その心を知りたいと思うことも烏滸がましくて胸がギュッと痛くなる。
「左馬刻、一郎くんを」
「やめろよソレ。聞きたくねぇ……アイツに連絡なんか取らせねぇぞ」
顎を先程より強く掴まれ、それ以上の言葉が紡げなくなった。切なげだったはずの真紅の瞳が今は怒りに燃えている。激しく燃える感情をぶつけてくるみたいに唇が重なった。引っ込みがつかなくなって勢いで舌を挿し入れてきた割に、左馬刻は俺の気持ちのいいところを探るみたいに、ゆっくり擦る。上口蓋のざらりとした部分に柔らかい舌が這わされてなぞられると、ぞくぞくする気持ちよさに気が遠くなりかけた。
深くなる口付けに合わせて身体が密着する。すっかり熱く滾っている股間同士が擦れ合った。そうだ、俺だって好きな相手に腰抱かれてキスなんかされたら勃っちまうに決まってる。
「んぁ……う」
「銃兎、我慢できねぇ」
「……ダメだろ……」
「俺様が欲しくねぇのかよ」
欲しいに決まってんだろクソボケ。好きな相手とシたくないわけねぇだろ!
ああでも、ここで欲望に流されるわけにはいかない。今ここで、俺とヤるわけにはいかないのだ。俺は目をキツく瞑る。お預けをくらって昂ぶった身体を放置されるのはどんなに辛く切ないことか容易に想像ができるけど、俺だって我慢してるんだからワガママを言うのはやめてくれ。
「……銃兎が一郎の野郎と連絡取り合ってんのスゲェ嫌だったんだぜ俺。二人で話してんのも嫌だった」
「……それは、ごめんな」
「許さねぇ。銃兎が俺しか見れねぇようにしたい」
今日ウチ泊まれよ。明るい蛍光灯の下で煌めくルビーの瞳はギラギラと雄々しく、それでいて色っぽい表情をしていてドキリとする。見惚れた一瞬を突いて舌がさらに深く挿し入れられ、口内を蹂躙された。ぴちゃぴちゃと水音が恥ずかしいほど響いているけれど、口付けを解くことができなかった。
「ん、んぅっ」
散々貪った唇をゆっくり離したかと思うと、首筋に顔をうずめた。熱い息が肌にかかり、舌先で薄い皮膚を舐められると背筋が甘く痺れる。
「さまとき……っ、そんな」
ぢゅっ、と音を立てて痛いほど強く吸い付かれた。鬱血痕をつけられ、嬉しさに胸が熱くなるけれど喜んでる場合じゃない。
「ばかっ、本命への練習ならもっと優しくしないと……痛いって言われるぞ」
「……練習…?」
「ん……左馬刻の好きな子に付けるんだよ、ホントは」
俺とじゃ左馬刻は幸せにならない。だけど、男同士だからって一郎くんへの気持ちを諦めてほしくなかった。俺の身体で練習して、気持ちを伝えて、両想いになってくれたら左馬刻は幸せになれるだろう。左馬刻が幸せならそれで良いと思っていると強く抱き締められる。
背中に回された手は縋り付くようで、首筋に顔をうずめたまま動かなくなった。熱い息が濡れた皮膚にかかって、柔く吸いつかれる。擽ったい。
「銃兎の言ってる意味が分かんねぇ。俺様は本気だ……あの野郎だけじゃなくて誰にも渡さねぇ。なぁ、やっぱりベッド行きてぇ……いいって言えよ」
「だめだ、……するのは、さすがに」
「……でもよ、……コレ収まんねぇんだよ。キスしたら余計に勃っちまって、硬くて痛てぇ……セックスじゃなくてヌくだけならいいだろ?」
耳元で熱っぽく囁かれた声にぶわっと顔中が熱くなった。ヌくだけ。左馬刻が辛いなら、なんとかしてやりたい。それくらいなら良いかもしれないと判断力が麻痺してくる。ちょっと困った顔してくるのやめろよ。年下の可愛げを発揮してくるな。ワガママに弱いのは相手が左馬刻だからだ。可愛いなって思っちまうだろこんなの。
胸がドキドキするし身体が甘く疼いて辛いけれど、それを誤魔化すみたいに「仕方ねぇなぁ……」とわざと渋い声を出して立ち上がっていた。
「じゅーとッ……じゅうと、っはぁ」
「ふ、…んん、ッ、…はぁ、さま……っ、ンぅ」
寝室に入ると待ちかねたみたいに熱い舌を差し込んできた。舌先同士を擦り合わせてきたり、歯列をなぞったり上顎を擽ってきたりするキスにうっとりとしているうちに、 あっという間にベッドの上。のしかかるように押し倒された。服を脱ぐ時間も惜しいというように身体を探られて息が上がる。唇が耳から首筋へと伝い降りてきて、薄い皮膚の部分をキツく吸われると甘い痛みが走った。思わず大きく身体を震わせると、気を良くしたのか同じ場所に何度も吸い付かれる。また俺で練習しやがって、バカ。
刺激は下肢にまで及び、躊躇うことなくボクサーパンツの中に手が入ってきたかと思うと直接俺のペニスを掴んだ。なんでだ、左馬刻のをヌいてあげるんじゃなかったのか。なんで左馬刻が俺のパンツの中なんて。
「ひっ!? ぅぁ、んんっ……さまとき、俺のはいい……触んな、手ぇ洗ってきて」
「じゅーとの触りたかった」
なんでそんなこと言うんだろう。これも練習なんだろうか。同性同士だからどこが弱いかは知られてしまっていて、気持ちいいと感じる所を的確に刺激されてすぐガチガチに勃ってしまった。自分の腹にカウパーが滴り落ちるのを感じるし、喘ぎ声も止められない。左馬刻にダメって言わないといけないのに、こんなに気持ち良くなってしまってる……興奮と羞恥心で頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。こんなことしたら、左馬刻に俺のチンコが勃ってすごく濡れてることも俺の変な声も覚えられてしまう。
「すげぇヌルヌル。もうパンパンじゃねぇか……出してぇか?」
「んぅ、ぅ゙ぁ、あ……!」
根元をきゅうっと押さえつけられて目の前がチカチカする。イキたいのに出せない苦しさで悶える。
「銃兎のパンツびしょびしょで触りにくいんだよ。脱がしていいよな?」
「で、でも、見えるから……」
「もうハミチンしてんだろ。銃兎がチンチン勃たせるから先っぽ見えてんぞ、ピンクのウサちゃん」
揶揄うみたいな声色で言われる。下着をグイッと引っ張ってきた。ほとんど脱がされているようなものだったから抵抗などできるわけもなく、ぴょこんと顔を出すペニス。ぷるんっと勢いよく飛び出したのが感覚で分かった。恥ずかしくて泣きそうになるけれど、それ以上左馬刻が揶揄ってくることはなくて代わりに熱いため息が聞こえた。
「銃兎、銃兎……」
首筋や鎖骨に吸いつかれながら着ていた服を剥かれていく。左馬刻に貸してもらったシャツとスウェットがくしゃくしゃになってベッドの下に落とされる。脱ぐの下着だけじゃなかったっけ、どうして左馬刻じゃなくて俺が裸にされるんだろうと思うものの、理由も状況もよく分からなくなってきた。余裕のない低い声で名前を呼ばれると切なくなってくるし、身体が火照る。左馬刻にキスされると気持ちよくて脳みそが溶けそうだ。
「さまとき、……ぁ、おれ、服が」
「銃兎の身体すげぇ綺麗。全部脱げて偉いなァ、ウサちゃん……俺だけにしろよ」
「へ……? んっ、ぁぁっ、」
「さまときだけ、って言え」
「ぁ、さまときだけ……? …ぅんん、ッ…ぁん、ぁ、ぁっ…」
ちゅこちゅこと甘やかすみたいに上下に扱かれた。刺激されるほど我慢汁が溢れて左馬刻の手がどんどん粘ついた音を立てる。裏筋の辺りを指の腹で圧迫するように擦られると、簡単に追い詰められてしまう。左馬刻にされてるんだと思うと自分でするよりずっと弱い。
「ひ、ぁ゙あぁっ、んぅ……っふ……」
唇を噛み締めても腰を揺らしてしまうし、いくら我慢しようとしても限界はすぐそこだった。亀頭部分を指の輪っかで小刻みに擦られ始めるともう耐えられない。強い刺激に頭の中が白くなる。
「うぅ……! さ、さまときぃ……」
「ん……悪ィ、強かったか? 優しくしてやっから」
未開封のローションを垂らされる。それがなくても濡らしただけで滑りは充分だし、傷つくことはない。それでも大切に扱おうとしてくれているのが分かるから嬉しくて堪らないし、求められていると思うだけでペニスが切なくなった。ローションを俺のペニスに塗してヌルヌルの手で擦りあげてくる。気持ちいいところに上手く当たるから、意味のある言葉なんて一つも言えなくなってただ喘ぐしかできない。
「ひっ、ぅゔッ、んぁ~……っ!」
「気持ちぃなぁ」
「ァアっ、ぁっ、あっ!」
シーツの上で腰を捩ってしまう俺の身体を抑えるように体重をかけてきて、ほとんど身動きができない。ローションまみれの手でヌルついた竿を扱かれて、カリ首の段差や裏側を擦られて、気持ちよすぎる。熱くて苦しくて気持ちよくてどうにかなりそうだった。左馬刻にされるのって、こんなにすごいんだ。恥ずかしく勃ちあがった性器の先からはトロトロと先走りが溢れ出している。亀頭に指の腹をグリっと押し当てて刺激されるとシーツをぎゅっと握りしめてしまった。腰から下を侵す快楽の波に溺れそうだ。
「……銃兎」
熱っぽく、低く掠れた声が名前を呼ぶとドキドキするし頭が真っ白になるくらい気持ちいい。口からもはしたない声が上がり続けてしまうから唇を嚙み締めたけれど、すぐに気付かれて唇に指が触れる。声抑えたらダメって言われてるのが分かってしまう。けど、これ以上したらもっとダメになりそうなんだ。腰が勝手に浮いてもっともっとしてって押し付けているみたいだ。
「かわいいな、じゅーと」
「あっ! あぁん……あッ、ぁんっ♡」
手の動きに合わせて俺の声も弾んでしまう。されるがままに喘いでいると不意に動きが止まった。絶頂の一歩手前というところで止められてもどかしさから腰が浮く。恨めしげな目で見つめるけれど興奮しきったような表情とかち合ってしまって、視線を逸らせなくなってしまう。欲情した男の顔なんか見ても萎えるはずなのに。
「銃兎も俺の触れよ」
「ん……」
握らされた太さは俺のより全然太い。俺のより熱いんじゃないか。血管が膨れて張り詰めている。これが左馬刻のなんだと思うとドキドキするし、俺が触るたびにドクンドクンと脈打つ感覚も手のひらに伝わってくるから嬉しくてたまらない。俺が触っても萎えないみたいだ、よかった。先走りの汁は白く濁っていて、指や手を動かすたびにトロトロと零れ落ちていく。それがすごく卑猥に見えて思わず生唾を飲み込んだ。
「さまとき……」
「おー。もっと強く握ってもいいぜ」
言われるがままに扱くと、俺の手に感じ入ってくれているのか熱い息が零れて色っぽい。また視線が合ったと思ったらそのまま顔が近づいてきて唇を奪われた。左馬刻に乗っかられる。今日何度目だろうキスも、触れ合わせるだけの優しいものから舌が絡み合う激しいものまで全部気持ちよくて蕩けそうになる。変だな、ベッドでチンチン擦り合いするなんて。あんなに恥ずかしかったのに、今はもうキスと手コキだけでぐずぐずに溶けてしまいそうだ。
グチュ、くちゅん、クチュッ……卑猥に響く水音が脳内を痺れさせる。腰が勝手に揺れてしまうから恥ずかしいけれど止まらない。チンコが溶けそうなほど熱くて熱くて堪らないのだ。腰を揺らすたびに俺の勃ってるところが左馬刻の硬い腹に当たる。はしたないって思っているはずなのに腰を動かしてしまう自分がいる。唇を離しても舌だけを合わせたまま絡ませ合うのはやめられなくて、余計に卑猥だった。
「ぁ、さまときの……硬くなって、汁が……」
「気に入ったか?」
「……ぅん」
恥ずかしくて消え入りそうな声で肯定した。自分のを一人で弄るマスターベーションよりも左馬刻のペニスに触れる方が興奮するのは、きっとお前が好きだからなんだろうな。
ぺったりとくっついた肌も汗ばんでいて気持ちいいし、胸の奥がきゅうっと切なくなるような優しいキスをされる度に、思考がふわふわしてくる。唇の感触や口の中を荒らされて唾液を交換し合うのが好きだなんて初めて知った。左馬刻の熱いところは血管が浮いててバキバキに硬いし、扱くたびに大きさを増すペニスを見ていると身体の中がジンジンしてきて堪らない。俺のも気持ち良くしてもらっているからちゃんとお返ししないと。
「じゅーと、」
「ひっ、ぁあ……ッ、!?」
名前を吹き込まれるのと一緒に耳朶を甘噛みされたかと思うと、舌を捻じ込まれてしまう。尖らせた舌が形をなぞるように動く度に頭の中まで犯されているかのようだ。耳ダメって言わないと。そう思うのに、喉から出る声は嫌がっているようには思えないし唾液が溢れるのも止められない。耳の穴まで舐められるとすぐ頭が痺れてしまう。
────気持ちいい。
もうそれしか考えられなくなってきた。自分で触ってる時よりもずっと気持ち良くて。身体はずっと、左馬刻に触れられる度にビクビクしてしまっているし、ペニスからダラダラ汁を溢すばかりだ。
「気持ちイイよなぁ」
「ん、きもち……」
気持ち良すぎて頭がぼうっとする。耳元からクチュクチュと濡れた音がダイレクトに響いているのもやばいし、息と共に吐き出される低音が響くのがすごくゾクゾクした。
「んっ……ふ、んぅうっ」
「エッロい顔……」
手の動きが早まる。頭がふわふわしてきて気持ち良いことしか考えられないし、酸欠になりそうなほどキスもやめられない。エッチな顔なんて言わないでくれ。どんなに情けない顔をしてるか自分でもなんとなく分かるから見られたくないのに、強く舌を絡められると顎が上がって下品にも舌を突き出してしまうし、与えられる快楽から逃げることもできなくて喘ぐことしか出来ないのだ。
痛いくらい張り詰めたチンコを扱かれるとあっという間に限界を迎えてしまう。見なくてもパンパンに膨れているのが分かるほど熱を持っているソコは先走りで滑って、気持ちよくて腰が止まらない。
「さまとき、の、しごけない」
「ウサちゃんシコられてチンコぐちゅぐちゅになっちまってるもんなァ」
「あ゙ぁッ! ……ぅ、んぅっ、ぁぁ……はぁ、ッ」
ペニスを握られたまま先端を指でグリグリと弄られて背中が仰け反った。それを繰り返されるとゾクゾクして止まらなくなってしまう。頭が真っ白になって来て視界がチカチカする。堪えているものが溢れる感覚に身体が震える。全身に力を入れても抑えきれないほど強い快感に呑まれて、見なくてもパンパンに膨れているのが分かるほど熱を持っているソコは先走りで滑る。
「おら銃兎ォ、イって白いの出せ」
「ぁ……ん、いくっ!イっちゃ……♡~~~~~ッ♡♡!」
我慢なんて出来るはずもなく思いっきり射精してしまった。熱い液体を手のひらで受け止めていたらしく、白く粘ついたそれをにちゃりと指先で弄んでいる。でもそんなことするなって注意する余裕もなく、身体はイったばかりの余韻に浸って、甘く弛緩していた。その間に尻に指が伸びてきて、ひくん、と反射的にそこが締まった。
「ちょ、まて……」
「なんで?」
きょとん、としている顔があまりにも純粋でドキドキした。左馬刻にこんなとこ触らせたくないのに、ぬるぬるの精液がそこにまぶされて、さらに滑りを良くするように指が行き来する。ぬめりを纏った指で縁を撫でられ、ゆるゆる浅く抽挿されると、そこの柔らかさを確かめられている感じがしてひどく恥ずかしい。
あのヤクザの若頭が、左馬刻が跪いて俺の尻を弄ってるなんて、考えられない。おかしくなりそうだった。いつのまにか指も尻たぶを開くようにして固定してるし、きっと見られてる。この体勢も俺の顔も、情けないところを左馬刻に全部見られてしまっているのがたまらなく恥ずかしかった。
「やだ……っそこはやだ、さまとき………っ!」
「嫌じゃねぇだろ……? ちょっと触るだけだ、こわくねーよ」
「うぅ……っ、」
俺が止めても、やめてくれない。というか全然聞こえてないみたいにまた指がそこに触れるからついシーツを握りしめてしまう。左馬刻の硬いチンポはバキバキのまま、俺だけとろとろにされてしまいそうだ。塗りつけられた精液でアナルの縁を撫でられるうちに、ヒクンと収縮するようになってしまう。
「銃兎のここ、もっと可愛がってやりてぇけどザーメンだけじゃ足りねーから……」
「んぁっ」
トロトロ零されたのは、さっきも使われていたローションだ。冷たいのは一瞬で、左馬刻の掌に馴染まされてすぐに分からなくなる。
「銃兎、いい子だから力抜け。足開いてくれねーと」
「やっ……、はずかしい、から……!」
くち、とアナルの縁を広げられながら言われる。足を開くなんてできやしない。左馬刻のヌくだけって言ったのに。左馬刻のチンポは勃ったままだ。
「……優しくする。ウサちゃんのここ、俺が大事にひらいて、傷つけねーようにしてやるから」
耳をはむ、と甘く噛まれる。そんなことされたら抵抗する力が抜ける。自分でもひくりとそこが動くのが分かったし、奥がムズムズしてしまうような快感が走った気がした。今まで知らなかった感覚が怖いのに、左馬刻にされて嫌なことなんて何ひとつなかった。
「んっ……左馬刻……」
「ああ」
とろっ、とまたローションが足される。ぬるぬるして温かい。そこをいじられる感覚は慣れない。ローションを纏った指が、くちゅんと浅い部分を擦り上げている。こんな、窄まってる狭いところ、誰にも触らせたことないけど、左馬刻になら。
足裏に触れるシーツの感触が鮮明に感じるのは、緊張してるからだろう。左馬刻に向かって脚を開いて、愛してほしいところを晒すのは、たまらないことだ。顔も熱い。自分でも、見たことなんかないところ、一番好きで、信頼してる左馬刻に見せてるんだ。
「左馬刻、ッ……」
「銃兎、かわいい。ちゃんとできて偉いな」
「んっ……」
アナルの縁をローションでぬるつく指でぬるぬる擦られると、その先を期待してそこが勝手にひくついてしまう。チュプッと音を立てて指先が少しだけ入ってくるのが堪らなくて尻にギュッと力が籠る。強く目を閉じると「痛ぇか?」なんて心配そうに問いかけてくるから、違う、と首を振った。痛くなんかないけれど恥ずかしくて死んでしまいそうなだけだ。足を開いたまま必死に息を吐いたり吸ったりして受け入れようとしてるのが、それを左馬刻に見られているのが、どうしようもなく。
「……イイコ。ありがとな、銃兎」
「さま、とき……」
「ちゃんと息して、力抜いてよーな」
ぐちゅんッ♡と濡れた音を立てて無遠慮に指を挿し入れてきた。やっぱり男同士のセックスの練習をしたいらしい。しかもかなり手慣れている気がする。今も挿入の違和感なんて少しもなく、骨張った長い指をぐっぽりと奥まで咥え込んでいた。指の腹で内側の襞を撫でられたり押されたりする度に腰から甘い快感が押し寄せて溶けそうになり圧迫感も違和感も凄いけれど痛みは全く感じない。ローションと先走りで濡れたチンコの裏筋や亀頭の弱い所を擦られながら抜き挿しされると恥ずかしいほどあんあん喘いでしまう。気持ちよさが脳天まで突き抜けていくし腰が浮くような心地だ。自分の身体じゃないような、酩酊感がある。
「はぁ、あ゛ッ♡ あぅ……ン」
「声すげぇエロい。可愛いな、じゅーと……」
息を吹きかけるように囁かれて身体が震える。俺の声、変だ。発情しているみたいな声が出ているのが恥ずかしいのに止められない。イったばかりなのにまたすぐ出そうだし、そこを探られると開きっぱなしの口から涎が零れていくのが分かったけれどもう拭う気力もなかった。気持ち良くて腰をくねらせてしまう。頭も身体もどろどろに溶けてしまいそうだし、指を突っ込まれただけでこんなになるなんて、こんなの俺じゃないみたいなのに……でも身体の疼きは止まらなくて声が抑えられない。いつの間にか啜り泣くように喘いでしまっていた俺はプライドとか全部ぶっ飛んでいて、媚びるように甘い声を上げるしかできなくなっていた。
前を擦られたり弄られたりするとナカがきゅっと締まるし、精液まみれの亀頭を手のひらで撫で回されてまた軽くイッてしまう。
「もう出ねぇよ……っ♡ 変になるぅ、イけねぇよぉ……」
「このナカな、気持ち良くなれるトコあんだよ」
腹の裏側辺りを執拗に擦られて苦しいくらいの圧迫感があるのに腰は揺れるし気持ちいいしで何も考えられない。そこは入っちゃダメなのに。もうぐちゃぐちゃなのにさらに気持ちよくされたら頭バカになっちまう……!
必死の訴えも無視されてグチュグチュいやらしい音が立つ。粘っこくてぬるぬる湿ったところを、左馬刻の右手で好きにされる。
「ぁあぁ゙ッ……? だめ、だめだ、……ソコおかしくなるから、怖い……」
「ここ前立腺な。こわくねぇから、力抜いてろ」
「んんぅ……ひっ、あっ!」
「ここ。撫でてやっから」
「ひ、ゔぅ……やめ、だめぇ、さまときィ゙ッ……♡ ぁ、ぁ、……」
もうダメだ。頭が真っ白になるしもう何も考えられない。何が何だか分からないまま必死に首を振って身悶えることしかできない。ナカを触られて、指でぐっと押され、て。気持ちいいなんておかしいのになんで?どうして?俺、おかしくなっちゃったのか……?
一郎くんの、ここも、左馬刻がするのかな。だから左馬刻、こんなに詳しいのかもしれない。俺は練習だから。
アナルがうねって指を締めつけてしまうのが恥ずかしい。甘い快感に浸ってしまっているのも、左馬刻の望む理想の恋人の姿じゃないかもしれない。
「あ゙、ッ……♡ ふ、ぅう゛~~~っ♡♡♡」
「じゅーと、上手にイけたな…」
足から力が抜けてピクンピクンと震えるのが恥ずかしい。宥めるようにキスされる度に甘い声を漏らしてしまっていて自分が自分じゃないみたいだ。ずるっと指が抜け出る感覚に身震いしてもっと激しく擦られたくてアナルをきゅうきゅうさせてしまう。ローションまみれの指が会陰に触れて、ちゅるちゅると形をなぞる。初めての感覚だ。でもチンコも尻の中も、ひくひくして、気持ち良くて何も考えられない。
必死で息をしようとするのにナカを弄られると口からは勝手に声が出てしまうし腰がビクビク痙攣してしまうから苦しくて堪らないけれど止められないのだ。俺今どんな顔してるんだろう。きっと情けない面晒してるんだろうな……見ないでくれ……。
「ヒィん、ぅ゙ぁぁ…」
「ここ、垂れたザーメンとカウパー汁の味すんだろうなぁ。銃兎のココ、俺が綺麗にしてやるからな」
「ゃ、やだ…っ、」
「ふやけてとろとろになっちまってる」
「ぃッ……!?♡ ばか!舐めんな、あぅ……」
抵抗しようにも力の抜けた身体では足を動かすことすらできなかった。爪を短く切った指先で穴の縁を撫でられたかと思うといつの間にか舌まで挿れられていて熱い粘膜に包まれたそこがずくずくと疼く。尻を揉まれてぢゅっと音を立てて吸われるとどうにかなりそうだった。やだ、左馬刻そんなところ味見しないで。まずいしきたない、はずかしい。
「んぁっ、っ……やめ、さまとき…!」
「ここ柔らかくしてやらねーと。聞こえるか?俺の舌とお前の、ちゅっちゅしてる」
「ん、あぅ……♡ だめだ、やだっ、こんな……」
赤い舌でソコを舐められると嫌でも意識してしまうし俺は男なのにアナル舐められてメスみたいになってるなんて有り得ないのに興奮した。そこを濡らしているのが自分の先走りなのか唾液なのかそれともローションかも分からないくらい頭の中はどろどろで何も考えられなくて、ただ甘ったるい声が出てしまう。抵抗なんか出来る訳ないんだから諦めて快感に溺れるしかないんだろう。
「あ~……ひ、ン……♡」
入り口を愛撫されながら根元から先っぽに向かってちゅっちゅと左馬刻の口でしゃぶられるとまたじんわりとした快感が広がってきた。竿にたっぷり付いた白濁も丹念に舐め取られる。
なんでこんなに丁寧に愛撫なんかするだろう。優しいんだな。これは練習だ。左馬刻は、たとえ練習でも不慣れな俺に気を遣ってくれてるのか。
「あっ、あ、ぁあ……」
先っぽの凹みをチロチロくすぐられながら指で解されると腰が引けそうになるけれど必死で耐えた。左馬刻にこうやって優しくしてもらえるのも、これが最後かもしれない。だって俺は練習なんだから。左馬刻も、本命を想像しながら抱いているのかもしれねぇ────やっぱり、山田一郎には優しくするだけじゃなくて、甘えたりわがまま言ったりするのかな、なんて考えてしまって胸が苦しくなる。俺は手間ばっかりかけて、緊張しちまって、こんなの左馬刻の練習相手としても相応しくないだろう。
「はぁ……、ン……っ、ぅゔ」
「銃兎……?」
「な、んでもない」
……ちょっと、気持ち良すぎて涙出てきたみたいで。本当になんでもないんだ。
そう言って誤魔化した。ぐずったような鼻声も出ている気がするしこんなみっともねぇ姿見られたくない。
「……悪ぃ。がっつきすぎたな」
左馬刻は騙されてはくれなかった。セックスの最中に泣かれて、萎えるよな。気持ち良くて泣いてるって、勘違いしてもらってた方が都合が良かったのに。
違うんだ。左馬刻は何も悪くない。お前の本命になれないのが、虚しくて泣いてるんだなんて言える訳ねぇし、そんなこと言われたら気持ち悪いだろう。俺は大丈夫なんだと言えたら良かったのに、左馬刻が行為を中断して抱き寄せてくれて、もう何も言えなくなった。
俺がもっと器用だったら良かったのかな。そしたらきっとこんなに苦しくなかったし、上手く割り切れただろう。こんな気持ちにもならなかったかもしれない。
「尻とかチンチン舐められたの、嫌だったンか?」
左馬刻の肩口に顔を埋めたまま、こくりと頷く。
「………きたない、だろ……」
「ちっとも汚くねぇよ。すげぇ綺麗。でも、初めてでこんなことされたらウサちゃんもびっくりするよな……悪かった」
「………」
「なぁ、キスしたら怒る?」
「………バーカ」
顔が近付いてきたと思うと唇に優しく口付けられた。それが嬉しくて自分からもちゅと唇を重ねてしまう。
「……ふ」
下唇を舌で舐められてくすぐったくて声が漏れたのを逃さずに舌を絡め取られる。美味くもない自分の味を啜って、左馬刻の唾液で上書きしてもらう。甘ったるくて濃厚で頭がぼーっとする。
「ふ、ぁ……♡」
熱くて柔らかくて、ぬるりと舌が擦れるのが気持ち良い。口の中まで敏感になってしまったみたいだ。ずっとこうしてたいくらいだがちゅぽと舌を抜き取られて名残惜しくねだるような声が漏れてしまう。
恥ずかしいから顔を見られたくなかったのに、両手で頰を包み込まれて覗き込まれたらもう顔を隠すことは出来なかった。
「……嫌だった?」
真っ赤な顔でしどろもどろになりながら首を横に振る。全然いやじゃない、嬉しかった。例え本命になれなくても、今だけは俺の恋人なんだと思わせてほしい。それくらい許してくれてもいいだろ。顔が近付いてきてまたキスをされる。耳をすりすりと撫でられながらキスされると頭がぼうっとして気持ち良くて、胸が締め付けられるみたいに苦しいのに嬉しくて訳が分からなくなりそうだった。こんなキスをするのも、身体に触れさせるのもお前だけなんだと言えたらどれだけ良いか。でも俺にはそんな権利、ないよな。唇が離れるからそっと目を開けると、左馬刻の瞳が潤んで、ジャムのように濃い赤が煮詰まっていた。
「……銃兎のこと抱きてぇ」
「……そんなの、俺としたらダメだ。……左馬刻のは抜いてやるから」
元はといえば左馬刻が勃ってて、チンコが張り詰めて痛いって言うから、俺が抜いてやるはずだったんだ。抜くのを提案しても、ベッドに行く前はすんなり頷いてくれたし、セックスしないって言ってた左馬刻が駄々を捏ねるみたいにぎゅっと拘束してくる。
「やだ……抜くだけじゃ足ンねぇ。ここまで許してくれてンだから、期待しちまうの分かるだろ……」
切ないような顔でそう言ってちゅっちゅと俺の首元に唇を押し付けてくる。同じ男として気持ちは分からなくもないが、今この状況に於いては分かりたくない。だって、左馬刻が好きでもない相手と望まない行為をする羽目になるんだ。明日の左馬刻がどれだけショックを受けるか考えてやってほしい。
「でも……」
「じゅーと……」
上目遣いで見つめながらきゅっと手のひらを握られてしまっては巧い拒絶の言葉なんか出てくる訳がない。クソ……こんな顔をされてお願いされたら断れるはずがないんだ。ずるいだろそんなの……。どうやったってお前の希望通りになるしかないじゃねぇか。ずるい。
恥ずかしい筈なのに腰は揺れていて早く早くってねだっているのが分かったがもう自分では止められない。太いものでアナルをぐりぐり押されるとそれだけで穴がひくついてしまうのだから相当だろう。ちゅぷん、くぷん、って焦らすみたいに浅く抜き挿しを繰り返されると、溢れたぶんのローションが滴り落ちてきて内腿を伝う。
俺だって、もう流石に分かる。押し当てられてる左馬刻の張り出した鋒が、入り口に擦り付けられてる。
────左馬刻が俺とセックスしたらダメだろう。だって左馬刻は一郎くんが好きなんだ。
頭では理解している。だけど俺の身体は、左馬刻が好きだ、欲しい、欲しいって求めてしまっている。俺の先端からは糸を引くほど先走りが垂れて、その時を待ち侘びてしまう。左馬刻に慣らされたアナルも、大好きな左馬刻のチンコを押し当てられると、初めてなのに飲み込もうとでもしているのかちゅっ、ちゅぷっと吸い付いてしまう。全てを晒す体勢は、もう左馬刻に俺の全部を捧げているも同然だ。でも本当に良いんだろうか。左馬刻は、俺とこんな風になって後悔しないのか?
「さま、やっぱりだめ……いちろ、くんが」
「嫌だ。やめねぇ。銃兎は誰にも渡さねぇからな」
酔った勢いでモノにしちまうとか最低だな、でも我慢できねぇ、銃兎が取られちまったらって思うと。左馬刻が言うことは、もうよくわからなかった。だってそんなの、俺のこと欲しいみたいじゃねぇかよ。バカ。両方とも欲しいのかな。いかにも左馬刻様らしいけど────勝手なヤツ。ずるい。今だけでも俺だけって言ってほしいんだ。
「さまとき……俺のこと選んでくれたら、……していいよ」
「は……? 何だよソレ?」
「だって寂しいんだ、俺。いち、……違う。山田一郎より、どっかの知らねぇ女より……俺のこと選んでほしい、今だけ」
女より、一郎くんより、俺が良いって言って。今だけ俺を選んでほしい。そう懇願する。左馬刻の一番特別な相手が俺じゃなくても良いから、今だけ一番特別ってことにしてくれ、一郎くんを好きなままでいいから……虫の良すぎる話だとは思うけれど。
左馬刻はしばらく意味が分からねぇとでも言うような顔をしていたが、やがて優しい手付きで手を握られて胸がきゅっとなる。何か言おうとする前に身体を持ち上げられ、足を肩まで抱えられたかと思うと、お腹の底までズンって衝撃がして思わず濁った声が出てしまった。
「ぁ゙……っ」
「なんか、……やっと分かったわ。銃兎お前、バカだろ」
「は、ぇ……?♡ あッ!♡」
激しく腰を打ち付けられてうまく息ができない。声が出ない代わりに情けない喘ぎ声ばかりが口から零れ落ちていくし、後ろから抱きしめられて身体が密着しているから前立腺をゴリゴリ刺激されると気持ちよくて。
「マジでバカだわ、はぁ、今はもう説明してる余裕ねぇし……クソ、なんでこんな気持ちぃんだよウサちゃんのナカ……」
「ひっ、ぅぅ…やぁ、さまとき…っ」
上から覆い被さるようにして腰を打たれて、頭の中までぐちゃぐちゃになる。耳の裏に舌を這わされてぞわりとする。気持ち良い、脳みそがバカになってそれしか考えられなくなるくらい気持ち良い。
「じゅーとぉ……ハハッ、すげぇ締まるな」
「んっ♡んぁッ♡」
ゆさゆさと揺さぶられながら勃起したところを撫でられるとナカがキュンキュン締まって仕方ない。気持ち良くてとろけきった顔で喘ぐ自分の声を聴くのも嫌で一生懸命口を押さえていたのだけれどそれも無駄だった。
「銃兎しか好きじゃねーよ、俺様は。他の女もいらねーし、あのクソダボのことなんざ思い出させんな、こんな時に」
「んっ、んぅ、うぅ……ッ」
「だから、今は俺にだけ集中しろ。俺の名前だけ呼んでりゃいい」
耳をかぷかぷと甘噛みされると堪らなくて腹ん中がきゅんとする。言われた通り、左馬刻の熱っぽい視線と合わせて、さまとき、と呼ぶとニヤリと笑われた。
「はあっ……あー……お前、可愛すぎんだろ」
「ひぁ、ア゙ッ、そこぉ♡」
パンパンと音を立てながら何度も何度も気持ち良いところを狙って突かれて、その度にバカみたいに喘ぐしか出来ない。左馬刻とするセックスすごい。腹の中がきゅんきゅんする。もうイきそう。ずっと気持ち良いの続いてる気がする。
気持ちいい、頭が真っ白になる。全身が熱くて気が変になりそうだ。腰を引いて逃げようとすればぐりぐりと良いところを擦られて敵わない。きゅうっとナカを締め付けてしまって、それがまた気持ちよくなってしまうのだ。
もうダメだ……さっきから何度も甘イキしてる……♡こんなのおかしくなる♡ 思わず怖くなって手を伸ばしたらすぐに応えてくれた左馬刻に、ぎゅっと指を絡めてもらえた。はぁ、俺今手ぇ繋いでセックスしてるんだ。恋人繋ぎってやつ、左馬刻とできるなんて、幸せだな……♡
「はっ……じゅーと! じゅーと、好きだ……!」
快楽の渦に飲み込まれて何も考えられなくなってしまう。本気にしたらダメなのに、左馬刻のことが好きで、どうにでも望むまま堕とされてしまう。我が物顔でズプズプとナカの粘膜を暴いては前立腺を押し潰し、逃げようとする身体を押さえつけられて、容赦なくピストンされる。もう無理って意味を込めていやいやと首を振れば、獰猛な獣のような目で射抜かれてしまうのだ。
「はぁッ……じゅーと……銃兎も好きだよな……?」
答えなんて分かってるはずなのに聞いてくるのが可愛くてたまらない。俺のことこんなにしておいて今更何だよとかそんな文句よりも口から溢れ出たのは。
「……すきっ、だいすき、さまとき……♡」
どろどろに溶け切ったみっともない声だった。好き、大好き、何度も何度もそう告げるとぎゅうっと抱きしめられて必死に腰を揺すられる。
「じゅーと、っふ……俺様も、すっげぇ好き……」
「あっ!あっ……♡そんな、奥までしないで……! 今だけ、なのに」
さまときのかたちに、ひろがっちゃう。
切実に訴える俺の声を聞いてグルグル獣みたいに低く唸った左馬刻はまた奥へとぐりぐり押し付けてきて、ナカを押し広げられている感覚を鮮明に感じる。お腹の上を撫でて、微笑った。左馬刻のが、俺のナカ、ここまで挿入ってきてる。
「クソッ、テメェ銃兎ォ! 明日の朝、絶対ぇ覚えとけよ……!」
明日の朝、か。明日の朝には醒めている夢だ。
失うのが辛いだろうけど、俺はもうそれでもいいと思って、頷いていた。ごちゅんっと奥を穿たれた瞬間、ナカに熱いものを感じて気持ちいいのが一気に弾ける。視界が一瞬、真っ白にハレーションする。もう何も考えられない。俺は何も出さずに達していて、ぎゅうぎゅう締め付ける度に何度も腹の中に吐き出されるのは、左馬刻の溜まってたもの。俺に出しても孕むことはないけど、汗だくの左馬刻が満足そうな顔で「これで俺のモンだなぁ」と言ってくれたから、無駄撃ちじゃなかったに違いない。